第一話 父の教え
紀伊国・九度山
「源次郎。近こう寄れ。」
「父上。」
「儂はもう長くは続かん。」
「父上、そう弱気になられますな。」
「源次郎、必ず家康は豊臣を滅ぼしにかかる。儂の命が後十年あれば、家康の首を取り、再び豊臣の威光を取り戻すことができるが、それも夢のまた夢。」
「某が必ず家康の首を取って見せまする!」
「お主は儂によく似て頭が切れる。しかしまだ若い。」
「そうでござるが…」
「お主の策はまだ浅い。儂がお主に策を授ける。」
「承知致しました。」
「まず、大坂城に敵を引き付けてはならぬ。」
「何故でございますか?大坂城は亡き太閤殿下が築かれた名城。そう簡単に落ちるとは…」
「その油断が、命取りになる。家康と戦になる時、恐らく大坂に残っている豊臣家臣は僅かじゃ。実権を握るのは淀になるであろう。」
「淀が豊臣滅亡の原因になり得ると?」
「十分あり得る。お主が秀頼様や他の牢人衆の信任を得るようになれば、なるべく早い段階で淀を消せ。」
「淀殿を亡き者にするのでござるか!?」
「考えてもみよ。もしあの女の一存で和睦が決まり、お主ら牢人衆の知らぬ条件での和睦になれば、その後お主らは打つ手がなくなるも同然。」
「確かにそうでございますが、淀は秀頼様の生母。秀頼様がお許しになられないのでは?」
「それは心配するな。必ず淀は排除できる。」
信繁は心配そうに頷いた。
「ではどうすれば奴らに勝つことが出来ると思う?」
「何でございますか?」
「それはな、畿内を席巻し、徳川と一世一代の勝負に持ち込むのじゃ。」
「父上、お言葉ですが、いくら豊臣家とはいえ、今や天下を支配している徳川相手にそのようなことができるのでしょうか。」
「もちろん、タダでとは言わない。」




