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群青の軌跡  作者: 花 影
第4章 夫婦の物語
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おまけ ウォルフの日記

昨日の予告通り、ウォルフの日記更新です。

夏至を5日後に控えた日、身に覚えのない罪で突然捕縛された。陸路でシュタールに着くまでの間、罪人同様の扱いを受けて辛かった。



翌日、シュタールに着いた。捕縛命令は商人達から話を聞いたイグナーツ卿の独断だったと分かり、ようやく自分の話を聞いてもらえることになった。それでも罪人扱いは変わらず、牢で夜を明かした。

1人でいると思考が悪い方へばかり向いてしまう。このまま無実が証明されなかったらどうしよう。もうカミラやカミルとも会えないのだろうか?



翌朝、話を聞いてもらえ、何とか牢からは出ることは出来たが、完全に疑惑は晴れなかった。鉄格子は無いが、窓もない狭い監視付きの部屋に押し込められる。

午後になってシュテファン卿が面会に来てくれた。町の人達からことづかった励ましの言葉に涙が出そうになった。



翌日も狭い部屋に押し込められたまま放置された。何もすることが無いのが一番の苦痛だ。

留守の間にこんなことになってしまって、ルーク卿には本当に申し訳ない。

夜になってまたシュテファン卿が来てくれた。忙しいのに申し訳なくて、謝る事しかできなかった。



翌日、突然狭い部屋から解放された。シュテファン卿が掛け合って下さったらしく、当面はアヒム殿の親戚の家にお世話になる事になった。迎えに来て下さったラファエルさんは、一見優しそうだけれど、どこか凄みを感じさせる人だった。少し話をしていて分かった。一番敵に回してはいけない人だ。例えて言うならビレア家の家令サイラス殿か。ともかく、味方で良かった。

シュタールの中心部から少し離れた住宅街にあるお宅でお世話になる事になった。奥方のパウリーネさんも歓迎して下さり、この日は久しぶりにゆっくり眠れた気がする。



夏至当日。外ではお祭りが開かれているのか、賑やかな音楽が聞こえてくる。

ラファエル夫妻に息抜きを勧められたけど、外に出る気分にもなれなかった。

だけど、その日の夕刻、嬉しい事が起きた。

「やっとウォルフに会えた」

ああ、カミラが来てくれた。

最初は会いたい気持ちが幻を見せているのではないかと疑ったほどだ。

でも、目の前に彼女がいる。

ああ、カミラが来てくれた。



カミラとの話が尽きず、気が付いたら夜が明けていた。

彼女が来てくれたのも、シュテファン卿のおかげらしい。彼には本当に感謝しかない。

少しだけ仮眠して、午後はラファエルさん夫妻の勧めに従って近所を散歩した。

彼女がいるだけで何でこんなに世の中は明るく見えるのだろう?

彼女がいるだけでどうして不安がなくなってしまうのだろう?

自分にとって大母様と同様に彼女は尊い存在だ。



散歩に出られるとはいっても家の中に居るだけでは退屈だろうと、ラファエルさんはご自身の蔵書を好きに読んで構わないと言って下さった。お言葉に甘えて目を通していると、時間を忘れる。

カミラはパウリーネ夫人と一緒に料理を作ったりしている。時にはお菓子も焼いてくれて、時間を忘れて読みふける自分をお茶に誘ってくれる。こんな時だが、幸せな気分になる。



何も進展がなく、ちょっと落ち込んでいると、カミラが楽しい事を考えようと提案してくれた。自由になったら何がしたいか、2人で出し合うことになった。

自分はカミルに会いたいと言った。カミラも同じだった。早くまた3人で暮らしたいという結論になった。



今日は散歩の折にパウリーネ夫人にお使いを頼まれた。いつもと違う場所を散策するのも楽しい。いや、カミラと一緒だからか。

この日、思いついたのはカミルにおもちゃを買う事。カミラは2人でご馳走を食べたいと言った。シュタールにいる間に実現できるといいな。

今日は雨。散策に出られない分、暇を持て余したので2人でやりたいことをずっと言い合っていた。

ルーク卿のお土産話を聞きたいと自分が言うと、カミラはいつか礎の里まで行ってみたいと言い出した。

それならカミルも連れて行きたいと言うと、大陸中を見せたいねと彼女は笑った。

何だかお腹が空いて来たので、踊る牡鹿亭のミートパイが食べたいと言うと、彼女も同意してくれた。あれは、確かに美味い。

カミラが似たようなものなら作れると言ったので、明日は晴れたらその材料を買いに行こうと話をした。



今日は午前中に散策に出て、ミートパイの材料を買いに行った。夕飯に間に合う様、カミラはパウリーネさんと一緒に作り始めた。手伝いを申し出たが、不器用な自分には出来ることは無かった。ラファエルさんが持ち出したゲーム盤で真剣勝負をした。……完敗だった。

夕食に出されたミートパイは絶品だった。確かに踊る牡鹿亭の味とは少し違ったが、カミラが作ってくれたのだから美味しいに決まっている。

ラファエルさんも喜んでくれて、いつか踊る牡鹿亭のも食べてみたいと言って下さった。全てが終わったらご夫妻をご招待しようと、カミラと話し合った。



明日も晴れそうだ。

明日の散策は少し足を延ばしてみようと思う。きっと、新しい発見があるかもしれない。



以下余白





これで4章終了です。

この展開についてはご批判も多々あると思いますが、作者としても色々悩んで出した結果だとご理解ください。


次回から「5章 家族の物語」

ルーク視点で話を進めていく予定です。

最後までお付き合い頂けたら幸いです。

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