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File.34 相手の都合

短いのですぐに次話投稿します

 太陽の光が反射する海の上を、黒色のクレイバードが一機超音速で飛行していた。その進行方向にはパシフィックの大西洋第四プラント基地がある。


 パシフィックのレーダー網は既にこの気味の悪い所属不明機を捉えており、「残存するスノースピア隊全機をもって迎撃に当たれ」との指令を発していた。

 しかし基地司令ギルグッド准将が司令室に呼び出したのはただ一人、ヘクター・ブラウン少佐だけである。


「お前はこの事態をどれほど予測していた? アレンを殺したくないというお前の意思を尊重したわけだが、今の状況は話が違う」


 ギルグッドがいらだたし気に机を叩いたのに対し、ヘクターは平然と返す。


「俺にとっても予想外です。いつかは来ると思っていましたがね、まさかここまで早いとは」


 呆れて怒りもうやむやになったギルグッドは椅子に重い体を沈ませた。ヘクターから視線を外し、窓の外をぼんやりと眺めながら話し始める。


「小心者らしく生き延びるために、お前と組んだ結果がこれだ。手っ取り早いのは今すぐお前を拘束、そしてスノースピア隊を使ってアレンを撃破した後、二人まとめて本国に献上することだろう」


「どうぞご自由に。准将にはかなり迷惑をかけましたから」


「だが私にもプライドや責任というものがある。都合良くお前を切り捨てるのは好かん。それに、今のアレンと戦えばスノースピアといえど多大な被害を受けることは免れない。そこでだ、お前に選択肢をやろうと思う」


 ヘクターは意外そうに眉を持ち上げ、ギルグッドに話の続きを促した。


「少佐一人でケリをつけろ。アレンと戦い、破ることができたなら何とかなる。逆にお前が敗北したり逃亡すれば私も終わりだ。どこかに亡命するしかなくなる」


「それは俺に有利な取引ですね。准将にメリットが無い」


「言っただろう? 私だってプライドの一つや二つ持ち合わせている」


「感謝します」


 元より望んでいたことだ。ヘクターはにやりと笑みを浮かべる。懐に忍ばせたコルトポケットを使わずに済んだのもありがたい。


 姿勢を整え敬礼し、部屋を後にした。


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