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94話 変化

「なんか、長かったけどなにお願いしたんだ?」

「言わない」


 お参りを済ませると懐かしい境内をウロウロする。雫はえらいこと長く願っていたのでつい気になってしまったのだ。


「いいだろ、ヒントくらいくれよ」

「……じゃあ拓実はなんて?」

「俺のは言えないな」

「ほら」


 並んで歩きながら笑い合う。おみくじでも引こうかと思ったがスルーし、神社の横に併設している公園へと向かった。今日はそもそもここに来る予定だったのだ。


「うわ、ここも変わってない」


 公園が見えると雫は声を上げる。ここもまた懐かしい場所の一つだ。ここも祭りの時に屋台が並び、花火が見るスポットでもある。


「あそこからの花火がキレイだったの覚えてる」

「そうだっけか?」

「拓実はわたがしに夢中だったから」

「なんで花火見てるやつがそれ知ってんだよ」

「……あっちの方でもさ」

「ん、話逸らした?」

「あっちの方でもさ、」


 あ、言及するなってことだこれは。了解しました。


「打ち上げ花火終わってから、手持ち花火した」

「あー、そうだそうだ。懐かしいな」


 花火が打ち上がるのは短い時間なので、子供達は手持ち花火をするのがなんだか恒例みたいになっていた。


「拓実と修、まだ花火上がってるのにやろうとして怒られたよね」

「嫌なこと思い出させないでくれ。俺はむしろ被害者だ」

「はいはい」


 雫に弁解しつつも温かい目でうんうんと頷くばかりで全く響いていない。俺は、誤解を解くのを諦めた。


「ていうか暑くないか?」

「ううん。大丈夫、ありがとう。拓実は?」

「俺も大丈夫。むしろ涼しいくらいだ」

「それは言い過ぎ、かな」

「そんなことないね。俺は寒がりなんだ」

「ふうん、冬が楽しみだね」

「楽しみにはしないでください」


 そんな会話をしていると、やっと目的地まで辿り着いた。


「うわ、変わってないな」

「……今日何回目」


 雫は言うと思ったと吹き出した。


「二人共言ってたぞ。お互い様だ」


 雫はツボに入ったのか笑ったままでいるのでほっといておくことにした。ほんとは滅多に見られない光景なので見ておきたかったが、そこは我慢しておく。


 公園の遊具や校庭がある方とは反対側には、鳥や鹿など少数ではあるが飼育されている小屋がある。ここも昔よく来ていた思い出の場所だ。


「ほんと、変わってない……あ」

「ほら、言いっこなしな」


 雫がいたずらぽく笑ったのを見届けてから、中でゆったりと動く動物たちを観察する。鹿はヘコヘコとちょっと進んでは突き当たりで方向変換し、またちょっと進んでは壁が現れ止まる、を繰り返している。ほんとは広々とした野原を駆け回りたいのかもしれない。さびしそうにエサ場に戻り、草をムシャムシャと頬張る。


「かわいいやつめ。あれ、メスがいなくないか」

「隠れてるんじゃない? ほら、尻尾だけ」


 見ると、奥の方にある寝床でメスの尻尾がひょこっと出ていた。よかった、いなくなっていたのかと。


「あ、孔雀が。見て」

「うお、威嚇してる」


 隣の鳥の方を見ると、孔雀がバサバサと羽を広げ威嚇していた。いつ見ても自然のものとは思えない美しい羽根の模様に感動してしまう。しばらくすると、羽根は閉じられ澄まし顔で遠くを見ている。


「めちゃキレイな」

「うん、でも閉じちゃった」


 また羽根広げないかなーと二人して熱視線を送っていると仕方ないな、と言わんばかりにバサッと美しい模様をまた披露してくれる。俺たちは「おー」とか言いながらパチパチと拍手を送る。公園で飼われているだけあって、サービス精神が旺盛だ。


 しばらくこの小規模な動物園を楽しんだ。ぐるっと一周して動物の説明の看板を読んだり、動物の名前を片方が当てる遊びをしたりした。途中で定期的にくる飼育員の方が来て、特別に鳥たちにエサやりをさせてもらったりなど、だいぶ満喫させてもらった。


「いや、レインくんより俺のホー助の方がいいけどな」

「私に言われても」

「にしても……鹿にナラはちょっとないぞ」

「だって! 鹿と言えば、奈良じゃん」

「そうだけど」

「だけど?」

「なんでもないです」

「よろしい」


 頬をぷくっと膨らませていた雫だが、俺が折れてやると空気が抜けていき、元に戻った。危ない危ない。


「でもほんとに、変わってない感じ」


 ちっちゃいころ、よく自転車を飛ばして来ていたことを思い出しているんだろう。確かに一目見て変わっている印象はない。だが、全くというわけでもない。


「あれ見てみろよ」

「……どれ?」

「ほら、メスの鹿の。あれあれ」


 俺が指を差したのは子供のシカ。さっきまで寝床から出てこなかったが、お母さんシカが出てきたことで一緒に出てきたのだ。


「あんな小さい子、いなかった、よね?」

「最近生まれたんだろうな」


 流石に生まれたてではないだろうが、かなり小さく見えるので1、2歳といったところか。小ぶりではあるが角が見えるのでたぶんオスだろう。


「名前は……書いてないね」

「だな。あ、あそこに募集中ってあるぞ」


 赤ちゃんの名前募集の張り紙が目に留まり、雫は真剣な表情でいい名前を絞り出す。


「うーん。カゴシマ」

「ふざけるのはいいぞ」

「ちがっ……じゃあ拓実は?」

「バンビ」

「置きにいってる」

「カゴシマよりマシだろ」

「そんなこと、ない」


 二人して見つめ合った後、同じタイミングくらいで目を逸らし、またしばらくして笑い合った。


 ――変わらないな、俺たちも。


 そう言おうと思ったが、やっぱりやめだと口を閉じる。そんなことはない。変化は緩やかなだけでじわじわと、でも確実にこの瞬間も起こっている。俺たちの関係だって。


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