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92話 お水

 いやあ、めっちゃ面白かったなー。


 エンドロールに入っても没入感はそのままで、ふわふわした感じがする。序盤から怒濤の展開の連続で、終盤まで失速することなく映画は終わりを迎えた。


 ネタバレをくらいたくなかったのであえて前評判はシャットアウトして来てみたものの、予想以上に面白かった。


 早く雫と話したいなー、と残っていたドリンクを飲みながら雫の方を見ると一心不乱にポップコーンを食していた。そうだ、忘れていた。まだポップコーンは残っていたのだ。


 確かに食べていいとは言われたが、ポップコーンを取る際、手が当たったらと思うと気が気でなく、中々手が伸びなかったのだ。あと単純に映画の世界に入りすぎて目に入っていなかったのもある。


 リスみたいに頬袋パンパンにしている雫を見かねてバトンタッチだと言わんばかりに容器を奪取。代わりにドリンクを飲むようジェスチャーで伝える。しかし、首をふるふると振られた。その後、空のドリンクのカップを見せられる。マズい、なんとかしなくては……。


 少し悩んでから、意を決して俺の残りのドリンクを差し出す。雫は受け取ろうかどうか迷っているようで宙に手は浮いたままでいる。時間もないのでドリンクを真ん中に置いて雫の判断に委ねた。

 

 そのまま飲み込めるなら一番いいが、無理ならドリンクで流し込まないと危ない。俺の口のつけた後で嫌だろうがそうもいっていられない状況だ。


 エンドロールの曲はもう二番に差し掛かっており、深刻そうな曲調が今の俺の心情にマッチしていた。もうちまちま食べている暇もない。俺は、容器を傾けて残りのポップコーン達を傾斜を利用して口に誘う、アリ地獄戦法に打って出た。


 直で気管に侵入することでむせてしまうのをなんとか耐え、無事全てのポップコーンを口内に収めることに成功。あとはドリンクで流し込むだけだ。


 真ん中に置いてあったドリンクに手を伸ばす。水分を利用してなんとかエンドロールが終わる前にポップコーンを食べ終わることができた。雫はというと、頬袋は通常時の状態に戻っていた。詰まらせたりしなくてよかったぜ。たぶん飲まずにそのまま食べ切れたんだろう。

 俺は安堵してドリンク最後まで飲み切った。塩っ気いっぱいの口に炭酸が入ってきて、少しだけ味が違う感じがした。


「いやー、面白かったな」


 明かりがついて、一つ伸びをする。雫はなにも言わず、座席を立ち、先に行く人たちに道を譲っていた。人の流れがまばらになり、落ち着いたところで俺たちも空の容器を持って通路に出る。

 

「おい、どうしたよ」

「どうも?」


ショッピングモールへと出て、ゆっくり話せそうなカフェに入る。注文をしてから、対面に座る雫に再び質問する。


「なんだ、つまんなかったのか?」

「ち、違う! おもしろ、かった」

「だよな。じゃあなんだ、没入感が抜けないとかか?」

「それもあるけど、違う。ごめん、なんでもないから」


 あまり執拗に聞くのもよくない。雫がいいと言ってるんだ、この辺でやめておこう。


 なにか嫌がることでもしたのかと頭を悩ませる。まさか、ポップコーンを急いで食べさせたことか……でもそれで怒るような奴じゃない。あ、もしかして最後流し込んで食べたのが行儀悪くて……。というかお金を返さねば。


 考えれば考えるほど心当たりらしきものがポンポン出てくる。なんて不甲斐ない男だ俺は。


 雫は喉が乾いたのか、はじめに持ってきてもらったグラスに注がれたお水を手に取る


「あ、それ俺のだ」

「え」


 一口飲んでいた俺のお水はまだ一口も飲んでいない雫のお水より量が少ない。今、雫が飲もうとしているが間違いなく俺のお水だ。


「自分とこに置いときゃよかったな、すまん」

「いや、わたしこそ」


 今度こそ自分のお水を引き寄せごくごくと飲む雫。なんか、やけに動揺しているように見える。俺もつられて一口飲んでみると、さっきは気づかなかった違和感に気付いた。


 ほのかに口の中でメロンソーダの味がするのだ。これはおかしい。俺が今日映画館で飲んでいたのはコーラ。メロンソーダには炭酸という共通点こそあれど、味は全然別物だ。


 俺は味覚に意識を集中させ、間違いがないか確認する。うん、これは紛れもなくメロンソーダ。そしてメロンソーダを頼んでいたのは俺の目の前にいる雫だ。


「雫、もしかして……」

「違う、気のせい」

「まだなんも言ってねえけど」


 どうやら俺が察したことを察したらしい雫は、それ以上は言わせまいと食い気味に答える。


 いや、でもドリンクの量減ってなかったぽいし……それなのに雫が飲んでたメロンソーダの味がするってのは。うーん、やっぱりそうとしか……。


「お待たせしました。こちら、お先にコーヒーですねー」


 ここで店員さんが登場。手際よく配膳し、頼んだメニューが出揃う。伝票を置いていった店員さんに俺たちは二人して深々と頭を下げ、お礼を言った。あまりの仰々しさに笑顔が若干ひきつっていたが、それでも構わずしばらくは頭を下げ続けた。


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