78話 順番
「おい、アリアほんとに無理すんなって。今ならまだ降りられるぞ」
「う、うるさい。お、お前は自分の心配でもしておけ」
俺の前に座るアリアは振り向く余裕もないのか、いつもと違う弱々しい口調で答えた。
遂に順番が回ってきて、俺たちはジェットコースターへと乗り込んだ。
折角だから待っていたペアでそのまま乗ろうということで、俺の横にはエマがニヤニヤしながら座っている。こいつに悩み相談とか絶対しないでおこう。
「セインは、こういうの大丈夫なの?」
「うん、たぶん大丈夫! 飛んでる竜の背中に一時間くらいしがみついてたこともあるし!」
「へ、へぇー」
俺の後ろにいる修は聞かなきゃよかったと言いたげな顔で話を切り上げる。その後ろでは熟年カップルがなんともいえない表情で、ニコニコしているセインを見ている。頭のおかしい子だと思われたんだろう。
「それでは出発いたしまーす!」
キャストのお姉さんの声に続いて、俺の視界は徐々に動き始めた。
ガタゴトと頼りない音に不安を感じながらも車両は着々と高さを増していく。
下を見ると園内が一望でき、歩いているたくさんの人が目に映る。
それが米粒ほどに小さくなったところで、さっきまで前方に見えていたレールが確認できなくなった。
そして、真っ逆さまに――重力に逆らうことなく車両は急降下を開始した。
「きゃー!」と絶叫する人や両手を上げている人、乗らないで観ている家族に向けて手を振っている人――同じ乗り物に乗っていても楽しみ方は人それぞれだ。
俺は安全バーを握りしめ、内心ややビビりながらも涼しい顔を貼り付けみんなの様子を観察することにした。
後ろのセインはキャッキャッと楽しそうに隣の修に話しかけ、修はやや青ざめた顔でそれに適当に相槌を打っている。
横のエマはどうってことなさそうな感じで初めてのジェットコースターを堪能している。
前の雄牙は若干薄目になりながら前を見据えて、レールの動きを見て次の車両の動きに気持ちを備えている様子だ。
で、肝心のアリアだが――顔を完全に下に向けて必死に目を瞑っている。
案の定、というかなんというか……やっぱり無理して乗せるべきじゃなかった。
俺はそんなあられもないアリアの姿を見ながら降りた後、ちゃんと謝ろうと決めた。
最初にこんな怖い思いしたらトラウマになってこの後にも影響が出てしまうかもしれない。折角の休みだというのに、本当に申し訳ない。
そう思いを巡らせながら怖がるアリアを見ていると、アリアの手をそっと握る手が横から伸びてきた。




