69話 食卓
「いやーレトルトのカレーはおいしいね妙」
「そうだね環。やみつきになるね」
「あんたたち、反省しなさいよ」
「「ごめんなさい……」」
上の空で食事を口に運ぶ二人に、母さんの不機嫌そうな声がぴしゃりと放たれた。
いつも賑やかな我が家の食卓だが、今日はどんよりとした空気が流れている。
あの後、ゲームを早々にやめ、妹たちは母さんの夕食の手伝いをすると言い、台所へ向かった。
その間に俺は、二階の自室へと向かい、帰ってきてからそのままだった制服を着替え、荷物を置いて少しくつろいでから再びリビングへと足を運んだ。
リビングを見ると、三人は既に台所からリビングにある食卓へと移動しており、黙々と夕食であるカレーを口に運んでいた。
しかし、あまりにもできるのが早すぎると思い、母さんに事情を聞くと、環が調味料の分量を間違えるわ、妙がレンジで加熱しすぎるわで買ってきた食材がパーになり、急遽レトルトのカレーに変更したと伝えられたわけだ。
二人はそれをバツが悪そうな顔で聞いており、見てるこっちもなんだか悲しい気持ちになってしまう。
妹たちは普段から母さんの料理は手伝っているし、大したミスもほとんどしない。しかし、ゲームのキャラクターの件でかなり動揺していたのだろう。
まあ、ケガしなかっただけよかったよ。
「そ、そんなことより母さん! そろそろ父さんから荷物届く時期じゃない?」
「ん? ああそうだったそうだった。昨日届いたわよ」
どんよりとした空気を変えるため、俺はおおげさに明るく母さんにそう問いかけた。
「ええ!? なにが届いたの?」
「バカだなあ、妙。チョコレートに決まってるじゃん」
「そうよ環。あんたがこの前無断で食べたチョコレートが届いたわ」
「…………」
ものすごく嫌味ったらしい母さんの言葉に、環は再び黙り込んでしまう。
ついでに妙も、あの時環に言われたことを思い出したのか、悲しげな顔を浮かべる。
はあ、場を明るくしようとしたつもりが、逆に更に盛り下がってしまった。
第一父さんが送ってくるものなんてチョコレートだけに決まってるし、それ以上話の掘り返しようもない発言だったと頭の中で少し反省していると、母さんから思いもよらぬ言葉が飛び出した。
「ああ、そういえば手紙も一緒に送られてきてたわね」
「手紙? 父さんが?」
「こんなこと初めてよ。まだ中身見てないけど――今から見てみる?」
「見る見る!」
「見たい見たい!」
「じゃあ寝室から持ってくるからちょっと待っててね」
母さんはそう言うと席を立ち、二階にある寝室へと向かった。
なんとか、いつもの食卓の雰囲気らしくなってきた。
「その、お前らそんなにやらかしたのか?」
「私は分量間違えただけ。妙が悪い」
「ええ! 私一回だけだよ! 環なんて三回もおんなじミスしてたもん!」
母さんがいなくなると二人は自分のせいじゃないと俺に強く訴えかけてきた。
その醜い争いは母さんが戻ってくるまで続いた。




