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6話 転校生

 学校へ着いてからも雫と俺は同じ二年一組なので足並みを揃えて教室へ向かう。

 

「おはよう拓実!東雲さんも!」

「拓実、東雲さんおはよー」

「よう拓実、東雲」


 最初は心配していた友達関係だが一年空いた溝は今やすっかり無くなり、みんな昔のように接してくれるようになった。

 

「朝からアツいね、お二人さん」「リア充爆ぜろ」などと冷やかしの言葉も聞こえたりするが、若干照れる俺に対し雫は眉一つ動かさず颯爽と教室へ向かう。


 教室に入るとなにやらいつもより騒がしい。


「おお、拓実聞いたか? 今日転校生が来るんだってよ! しかも女子! しかも二人!」

「ええ、そうなのか。楽しみだなあいてっ」


 雫は俺の足を踏みつけ荒々しく自分の席に腰を落とす。こけそうになったはずみで踏まれたのだろうか。わざとじゃない、よな? 


「よし、みんな席に着けー」


 会話に花を咲かせる間もなく、先生が教室に入ってきたので雫の後ろである自分の席に座る。そしてあらかた先生が話を終えると、


「では、皆さんお待ちかね! 転校生の紹介をしたいと思います! 」


 さっき聞いた話は本当だったのか。それにしてもこんな時期に転校してくるなんて珍しいな。

 

「じゃあ入ってきて二人とも!」


 朝からやけにテンションの高い先生は廊下の外にいるであろう転校生に手招きした。

 

 ガラガラとドアが開く音が聞こえた瞬間頭の中が真っ白になった。


「じゃあ簡単に自己紹介をどうぞ!」

「はい、姫宮 (ひじり)です。前の学校では剣道? をしてました。よろしくお願いします!」

榎並(えなみ) 恵真(えま)です。よろしくね~」


「めっちゃ可愛いじゃん!」、「このクラスでよかった!」、「神様ありがとう……」


 喧騒をなだめようとする先生もお手上げ状態なくらいにクラスは大いに沸いた。

 そんな中、俺は一人状況を整理できずにいた。ありえない、どうなっているんだ……。

 

 榎並恵真――茶色い髪に含みのあるいたずらっ子特有の笑顔に目元のほくろ。

 異世界で冒険を共にしたエマ・クリンベルトの姿に寸分の狂いもない。


 そして姫宮聖―赤みのかかった髪に金色の瞳、無垢な笑顔。

 同じく冒険を共にし、俺に恋心を抱いていた少女――セイン・クナーシャに違いなかった。他人の空似を疑うまでもないレベルだ……。


「ああ、タクミ! 会いたかったよ!」


 まあこっから先は俺の妄想だが、その美少女転校生は空いている席ではなく俺の席に一目散に駆け寄り、目に涙を浮かべながら抱きついてきた。

 俺は周りのギラつく目を全身で受けながら泣きつく彼女の気が収まるまでじっとしているのだった。あくまで妄想なんだけど。


 だが、前の席に座る雫に踏みつけられているこの足の痛みからしてこれは……ああ考えたくもない。

 

 やっと戻ってきた平穏の終わりと慌ただしい生活の始まりを予感させる瞬間だった。


 


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