表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
58/240

57話 説明

「あれだけ言ったのに、全く……」

「し、仕方ないだろう。いくら念を押されても、私のセイン様に対する思いは抑えることが出来なかったのだ」

「またそうやって言い訳するー。今度はみんなの前で手紙読むよ?」

「え、いやあのそれだけは……」

「あーもう、そのへんにしとけエマ。アリアも、素直に謝れば済む話じゃねえか」


 予想通り、休み時間に入って早々、アリアはエマに呼び出されお叱りを受けていた。

 当初の予定としては、お互い最近転校してきたという親近感から打ち解けて、仲良くなるというものだったらしい。

 ただでさえセインとエマは目を惹くので、これ以上目立ってしまうのは避けたいという考えでの作戦だったが、アリアの聞き耳の持たなさはどうやら計算外だったようだ。

 

 ちなみに今は、エマの時間停止魔法を使っている為、魔力を保有しているエマ、アリア、セイン、俺の四人で周りの目を気にせず会話することができている。


「ほう、たまにはいいことを言うじゃないかタ、タクミ」


 アリアは腕を組み、照れ臭そうにそう言った。そういやアリアから名前で呼ばれるのって新鮮だな。


「わかったよもう。じゃあそろそろセインに説明しないとねーってセイン聞いてる? おーい」


 呆れた顔を浮かべながらも、エマは怒りを鎮め本題に入ろうとする。


 本題というのは、アルガルドへ帰り処刑された筈のアリアが何故こうしてここにいるのか、というのをセインに説明するというものだ。

 だが、当の本人はアリアとのファーストコンタクトからずっと上の空でいる。

 エマが顔の前で手を振っても全然気付かないでいる。まあ、無理もないことかもしれないが。


「ちょっと、セイン? 今日のお昼ご飯抜きにするよー?」

「えっそれはダメ! ってあれ? まだ一時間目も始まってない……」


 いや、それでいけんのかよ……。


「嘘だよ嘘♪ 今からする私の話、聞いといてね。実はアリアはあの後――」






「ってなわけで、今ここにいるんだよ。なんとなくわかった?」


 エマは一通り話し終え、セインに質問を投げかける。

 

 アリアがアルガルドへの転移を失敗したことも、セインにすぐには会わせず、立ち直り学校へ来るまでの間俺の家に居候していたことも、セインにすぐにアリアのことを伝えるべきだと修がエマに抗議したことも――エマはまるまる丁寧にセインに説明した。


 正直俺も修の意見に賛成だったが、エマは「国の掟を破ってこの世界にやってきたセインの覚悟の度合いを確かめたい」と言い、今回の作戦を実行した。

 

 その中で、セインは期待通り自力で立ち直り、なんとか学校へ登校することまでこぎつけた。

 俺なんか妹の助けがなければ今も自分の部屋に閉じこもっていただろう。本当にすごいやつだよ。


「うん、何となくわかった。ありがとうエマ」

「どういたしましてー。ほら、拭きなよ」

「え?」


 ハンカチを差し出すエマに、セインは困惑している様子だ。


「仕方ないなあー。ほら、かわいい顔が台無しだよー」


 未だに状況が理解できていないセインの目元に、アリアはハンカチをあてがった。

 水色のハンカチはみるみるうちに色が濃くなっていく。


「あれ、私もしかして泣いてる、の?」

「変な質問だねー。そうだよー、鏡で見てみなよー」

「あ、ほんとだ」


 教室の窓で自分の顔を確認して、セインはやっと泣いていることに自覚した。


「その、ごめんアリア。私また約束――泣かないって約束、破っちゃったね」

「いえ、お気になさらないでくださいセイン様。私との約束を覚えてくださっていただけでも光栄です」

「何澄ましてるの。アリアも泣いてるくせにー」

「いや、これは違う! 汗だ汗!」

「はいはい、わかったわかった」

「貴様! クソッ覚えておけいつか、いつか必ず貴様を――」


 エマの目がかなりうるんでいるのは――言わない方がいいか。


 俺は久しぶりに見た三人の嬉しそうな表情をしばらく眺め続けた。

 


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ