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56話 衝撃

「ほらね! いたでしょ転校生! さあさあ入って赤羽さん」

「ほんとだ。にしても転校生最近多くない?」

「先生、生徒相手にムキになって大人げない……」

「うわあ、すごくイケメン、って女子の制服着てる?……」


 ほらみたことか、と言わんばかりの表情で先生は転校生を教室へ招き入れる。

 


「赤羽有愛だ。よろしく頼む」


 転校生は簡単に挨拶を済ませ、先生は黒板に「赤羽有愛(♀)」と板書する。

 そう、転校生というのはアリア・エルフォードのことなのだ。


「やべえ、蔑まれたい」

「背も高くてかっこよくて女子って……こんなの反則よ……」

「み、見つけた。私の王子様……」


 そんなアリアに寄せられたクラスメイトの感想は、欲求不満を露呈させるようなものばかりだったが(朝早くで頭が回っていないだけと信じたい)、一人だけ、余りの衝撃に声を出せずにいるものがいた。


「…………ア、アリア?」


 やっと出たその声はひどく掠れていて、突然の出来事にまだ頭が追い付いていないようだ。まあ、そうなってしまうのも無理もないか。


「じゃあ、赤羽さんの席は、って赤羽さん!?」

「セイン様! やっと……やっと会えました」


 先生の声に耳を貸すこともなく、アリアは一目散にセインの元へ駆け寄った。セインはまだ事態を飲み込めていないようで、目を見開いて口をパクパクさせている。


「え、えっと……アリア? アリアなの?」

「はい、セイ……聖様。アリア・エルフォ……アリアです」


 床に片膝を付き、セインの手を取るアリアも興奮気味なようで、エマにさんざん注意されたであろう名前の呼び方を間違えそうになっている。もう最初に大声で「セイン様!」っていっちゃてるから手遅れか。

ていうか知り合いってバレるのもあまりよろしくないのに、そんな主従関係みたいなのみんなに見られて大丈夫なのか? 


「え、あの二人知り合いなの?」

「様って……聖ちゃんってなにもの?」

「やべーこれが百合ってやつか。こんなん前屈みだわ」


 案の定、クラスメイトたちは二人のただならぬ関係に考えを膨らませ始めた。

そのすぐ横にいるエマの表情がかなり引きつっているところをみると、アリアは後で怒られるに違いないが……まあ、こればかりは仕方ないな。


「あの、赤羽さん、だっけ? みんな驚いてるし、とりあえずあそこの空いてる席に座ろっか?」

「……はい、すいません」


 セインの手を握って動こうとしないアリアは、不気味な笑顔のエマにそう言われるとふと我に返り、言われるままに席に着いた。


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