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55話 重視

「あっ、(ひじり)ちゃんおはよう! もう大丈夫なの? 」

「みんな心配してたんだよ。先生にお見舞いにも行っちゃダメって言われて」

「あ、うん……大丈夫だよ。みんなありがとう」


 あれから一週間ばかり経ち、セインはやっと学校に登校してきた。教室に入って早々、みんなに囲まれたくさんの言葉を掛けられている。

表情を見る限り、元気になったとは到底言えそうもないが、この後起こることを考えれば大丈夫だろう。


「あれ、聖ちゃん一人で来たんだね」

「エマはちょっと今取り込み中だ」


 俺の机に寄り掛かりながら修は独り言のように呟いた。

 

修と雫には、今回起きた騒動についてざっくりではあるが、一応説明はした。

 二人共、セインとエマが異世界から来たことを知っているので、かなり突拍子のないこともすんなり信じてくれたので説明するのにそう時間は掛からなかった。


「取り込み中、ね。今更言ってもどうしようもないけど、エマの考えにはやっぱり反対だね」

「まあ、そう言うなよ。エマだって色々考えて決めたことだろ」


 修はみんなに声を掛けられているセインに目を向ける。その顔は未だ晴れずにいた。

 修と雫に説明をしたのは、他にも一つ理由がある。アリアとセインをどう再会させるか考えて欲しい、というものだ。

 

「アリアちゃんを見つけた時点ですぐ会わせるのが筋じゃない? ねえ、雫はどう思う? 」

「……私は、どっちも正しいと思う。たぶん、何を重視するかが違うだけ」


 俺の前の席に座る雫は、読んでいる本に目を落としたまま、振り向きもせず、淡々と答えた。

 修はセインの思いを――エマは掟を破る覚悟をそれぞれ第一に考えて出した結論で、どちらも間違ってはいないはずだ。

 ただ、こうしてセインの浮かない顔を見ていると本当にこれでよかったのかと考えてしまうのが本音だ。


「よし、みんな席に着けー」


 修はまだなにか言いたそうだったが、先生の声を聞くと仕方なく自分の席へと戻っていった。

 ふと教室後方に目を向けると、うなだれるセインの横の席にさっきまで姿の見えなかったエマが既に座っていた。

右手でオッケーサインを作り、顔は満面の笑み――どうやら滞りなく目的が果たせたようだ。


「では、皆さんお待ちかね! 転校生の紹介をしたいと思います!」

「あれ、そんな話してたっけ?」

「デ、デジャヴ?」

「先生、その歳でもうボケたんですか……」

「え、いやいや! 前から言ってたよ!? 」


みんなが驚くのも無理はない。先生はエマの魔法で少し催眠をかけられている。勿論、転校生がくる話なんて全く聞かされていない。


「いや、まあとにかく転校生いるから! もう外で待ってるから! じゃあ入ってどーぞ!」


先生の嘆くような声が教室中に響くと、閉まっていたドアは勢いよく開け放たれた。





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