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4話 復学

 家の外で人目があることなんて気にしない母さんの説教を小一時間程受け、場所を移し家の中で自分の遺影のある仏壇前で長ったらしく嫌味を言われ続けること三十分、やっと雫、もとい救世主は現れた。

 

「あら、雫ちゃんいらっしゃい」

「……おじゃまします」


 やっときたか雫。よし、これでこの苦痛から解放されるはず!

 母さんは怒りに満ちた表情から想像もできない優しい声で雫を招き入れた。


 雫は俺の横に座ると遺影に手を合わせて目を閉じる。

 おいおい、俺ここにいるぜ雫……。


 一年間いなかった俺は学校は休学扱いになっていて法的な手続きはなにもしなかったらしい。

 雫が俺が消えた直後絶対戻ってくると母さんに掛け合ってくれたからだという。

 

 ちなみに仏壇の遺影はさっき妹たちがシャレで置いたものだ。なんと悪質なイタズラ……。それも数年前の旅行で撮った両手でピースしてる写真を。


「おじゃましました」

「またいらっしゃい」

「え、雫ちょっとま――」

「黙りなさいこの親不孝もんが! 雫ちゃんクッキーあるけど持ってかない?」

 

 母さん、声がまるで別人だよ……声優目指せるよ……。


「……おかまいなく」

「じゃあ俺がもら――」

「いります。全部ください」

「うん、待っててね。すぐ持ってくるから」

「…………」

 

 雫はクッキーを貰うと本当に帰ってしまった。薄情な奴め。

 途端、母さんの顔に貼り付いていた笑顔の仮面は剥がれる。


「で、ほんとに今まで何してたの?」


 今日でもう十回はしたであろう質問を再びするが俺の答えは変わらない。


「異世界に、召喚されてて……」


 だって、ほんとうなんだもん! うそじゃないやい!


「……はあ、わかったわ。また話したくなったら聞くわ。とりあえず無事でよかった」

 

 呆れ顔の母の心は折れ、ひとまずは危機を逃れることが出来た。


「母さん……ありがとう」

「全く、父さんに似たのね」

「かもな……」


 父さんは今海外出張で単身赴任中だ。今、と言ってもかれこれ十年くらいになるのか。家族サービスの欠片もしてない父さんに今だけは敬意を表するぜ。


「あ、母さんもう許したのそいつ!」

「お兄ちゃん全然反省してないよ!」


 怒声が収まったのを見計らってか二階からドタドタと音を立て、二人は俺と母さんのいるリビングにやってきた。

 一年経って今年の春から中学三年生になる双子の妹の顔はほんとに見分けがつかないほど似ている。

 双子の姉である(たま)は頭も良く、運動もできるが口が悪い。

 双子の妹の(たえ)は頭が悪く運動音痴だがとても愛嬌がある。しかもだ、胸がすごく大きい。

 

 いや、違うんです裁判長。妹をそういう目で見ているわけではないんです。

 ただ、いつも二つ結びの妙が髪を下ろしている今、見た目で見分けを付けるとしたらそこしかないんです……。


「おい、今私に対して失礼なこと考えてたろ」

「い、いいえ?」


 ああ、そうだった。環は胸のことになると心が読めるという能力を持っているのだ、たぶん。

 男の俺と大差ないその胸まわりはさぞコンプレックスだろう。

 一年経って変化なし、もうあきらめろ環……。


「いや、私はまだ諦めない! 諦めないぞお兄ちゃん!」


 せいぜい頑張ってくれ……。


 そのあと、元の日常へ軌道修正するべく学校への復学の要請をした。

 元から割と成績は良かったので、四月までの学力次第では出席日数関係なくそのまま進級させてくれるという。ありがたい話だ。

 

 あっちの世界でも文字や文化の勉強をしたのが懐かしい。教え方が下手なセインに代わってエマが教えてくれたときはすごくセインが拗ねて大変だった。

 

 ……いけないいけない。あっちの世界のことは極力思い出してはダメだ。


 鮮明に思い出される異世界での記憶を拭い去ろうと俺はかぶりを振り、早速机に向かい復学に向けて勉強に取り掛かった。


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