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47話 手紙

「ありがと、タクミ。恥ずかしかったけどすごく……楽しかった! 重くなかった? 」

「ゼェゼェ……ああ、大丈夫。よゆーもよゆーよ」


 一人帰ったアリアを見送り、俺は本当にセインをお姫様抱っこのまま学校まで送り届けた。

しんどくなかったかって? 明日筋肉痛確定だというコメントだけ残しておいてやろう、後は聞かないでくれ。




「あ、聖ちゃん! みんな心配してたんだよ! 」

「よかった無事で! もしかして拓実君が? 」

「すごい拓実君! 女たらしのゴミクズ野郎だと思ってたのに」

「ごめん、みんな心配かけて……」


 教室へ入ると授業そっちのけで女子たちはセイン元へ駆け寄った。俺の評価も上がってくれたようでなによりだ。

 

「こら、お前ら授業中だぞ。辰巳、よくやった。とりあえず二人共職員室行くからついてこい」


 世界史の木村先生は騒ぐ女子たちを軽く注意して見せると授業を自習に切り替え、俺たちを職員室へと先導する。

 

 先生の後ろに付け、俺は廊下から教室を一望した。

 みんな嬉しそうに手を振ったり拍手したりで俺たちが帰ってきたのを喜んでくれている。

 雫も修も安心したような笑みを浮かべ、雄牙なんか目に涙を浮かべている。

 俺もセインもクラスに来て日は浅いというのに、なんていい奴らなんだとクラスメイトの温かさを実感してしまう。


 だが、ただ一人、何とも言えない表情を浮かべる生徒が存在した。

 教室後方の席――机のシミを眺めているのか、俯いてこちらに全く目線が合わないその生徒の名は榎並恵真。


「辰巳、どうした? 早くいくぞ」

「ああ、すいません」


 結局エマと一回も目が合わぬまま、俺は職員室へと足を向けたのだった。





「おい、エマ。浮かない顔だぞどうした。わかった! お前俺が置いていったからすねてんだろ。でもあんときはお前が質問攻めにあってたから仕方なく一人で行ったんだよ」


 職員室での尋問をなんとかさばききった俺たちはやっと解放され、今は昼休み残り十分前の屋上だ。

 このまま早退してもよかったらしいが、特に問題もなさそうだから大丈夫だと伝え、こうして通常通りの学校生活へと戻ったのだ。


「タクミ……セインはどこに? 」

「ああ、なんかお腹減ったからって売店いったぞ。つってもこの時間じゃろくなの残ってねーだろーけどな」

「そうか、じゃあ丁度いいや。これ」

「ん? なんだそれ」


 エマが制服のポケットから取り出したのは手紙だった。


「も、もしかして俺へのラブレターか? いやー参っちゃうなー」

「……読んでみて」


 ったく、ノリ悪いなエマ。もしかしてあれか、女の子の日か。


 そんな思いを巡らせた自分を殺したくなるような感情が俺の頭を駆け巡ったのはそれから数分と掛からなかった。

 



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