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31話 挑発

 アリアが刀を振り上げると、今までピクリとも動かなかったエマは両手を顔の前で軽く開いた。杖を出す様子はない。


 魔法を使用するときは杖を介すのが基本的な形とされている。杖のお陰で魔法の威力や命中力、持続力が向上し術者への負担も少なくなるからだ。


 エマは優秀な魔法使いであるため、ちょっとした魔法であれば杖を使わずとも並みの魔法使い以上の威力を発揮できるが、今回の相手――アリア・エルフォードに杖なしでは荷が重いと俺は思う。


 杖を使うことのデメリットとしては使用した魔法を一旦杖に送り込んでから放たれることだ。

 それにより、杖の無い状態に比べ魔法の射出スピードが個人差はあるが、およそコンマ三秒ほど遅れてしまう。

 もしかしたら威力よりもスピードを重視してエマはあえて杖を使用しないのかも知れない。


 アリアは代々王族に仕えてきたエルフォード家の一人娘。生まれた瞬間から命を落とすその時まで王族に忠誠を使うことを義務付けられている。

 そのエルフォード家最大の特徴といえば代々受け継がれるエルフォード流と呼ばれる剣技である。

 体の動きを利用し、目にも止まらぬ速さで繰り出される攻撃を全て受け切ったやつは少なくとも俺は見たことがない。

 

 エマは魔法を発動する素振りを全く見せぬまま、足を踏ん張り眼前で両手を広げている。

 あれ、エマのこの態勢、もしかして……。


「なるほど、真剣白刃取りというやつか。面白い! できるものならやってみろ!」


 エマの開いた手の間、即ちエマの顔めがけて、アリアは振り上げた刀を体の動きを利用しながら振り下ろした。


 ガキッ! 


「「あ」」


 俺とアリアの間の抜けた声が重なる。

 ここは体育館地下に設けられた用具倉庫。俺がジャンプすれば頭を打つくらいの狭さだ。そんなところで刀なんか振り回そうものなら刃こぼれの二つや三つ容易く起こりうる。

 エマの丁度上にあった図太い鉄骨に刀は思いっきり当たり、アリアは態勢を崩し顔からコンクリに思いっきりダイブした。ああ痛そう……。

 

 「ぐへっ」と声を上げたきりアリアは、コンクリに体を引っ付けたまま動かなくなってしまう。


「アリアならこうなるって信じてたよーあはは」

「…………」


 ヘラヘラしながら足元に転がるアリアをツンツンするエマはご満悦の様子だ。声は届いている筈だが、アリアはなにもいわぬままで顔を上げる気配もない。


 このままだとアリアの面目が立たないので一つだけ言わせてもらうと、アリアがさっき不本意にも切りつけた鉄骨は八割ほど斬撃により傷が付けられていている。

 エマはニコニコしているがもう少しで刀は鉄骨を切りきってエマの元へ届いていただろう。

 本気で攻撃しにいったアリアもアリアだが、エマの半端じゃない度胸に俺は度肝を抜かれずにはいられなかった。


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