36⑥ お迎え騎士と赤髪の女 c
我らは出てきた女に警戒しつつもガリアン殿を嗾けた事に非難を浴びせた。
いらっとしたような女は言い返そうと口を開いたがそれ以上に何故か怒っているガリアン殿が口を開き女は何だかイラつきがましたように思える。
無言で持っていた鞭をガリアン殿に遠慮なく振るう。
「っん・・・・・・・・・!!!!」
と、唐突の出来事に我らはドン引きに、ガリアン殿の恍惚とした表情に、なんか引いた。見ては行けないものを見た気がした。
ガリアン殿はそのまま地面に倒れこみ、動かなくなった。
そこにいつの間にか先ほどの少年が女の後に居て見てしまった。
その少年はとても汚らしいものを見るような目でガリアン殿を見ていた。なんだか、肯定された気がした。
その間も女は叫ぶ。
「貴方達! 誰がガリアンを差し向けたって!? 私はこの弟子に行けなんて一度も命じていないわ! 騎士のくせに言いがかりはよして頂戴!!」
毅然として鞭を地面のぶつける姿は妖艶さと嗜虐に満ちた笑みに僅かに我らはうずいた(息を呑んだ)のは言うまでも無い。
それを見届け、女は叫んだ。
自身の心内を!
それに我らは、我らの主人に対してその見解に声を出すが、僅かに自身の中のうずきに恥を見いだしくぐもった声しか出せなかった。
ふと、気が着く。
我らの体が回復している事に。
誰がそんな事を!? 私が連れてきた騎士たちの1人は僅かだが回復魔法を使えるがこんな強力なものではない。
魔力の元を辿るとそこにはあの女が居た。
「お、女! どういうつもりだ!」
「我らに回復魔法を掛けて取り繕うと言う事か!?」
その言葉に女は堂々と言った。
「どっちが強いか知らしめるには、お互い対等でなくちゃいけないじゃない! 怪我してて手加減したんだ何て言われたら私の名折れじゃない!!」
女の発言に我らは絶句した。絶句し、こんな女に舐められているのか! と、また、怒りが髣髴してきた所怒声がした。
しかも、今度はただの怒声ではない。
殺気よりも強くそれを浴びるだけで時として自ら命を止めてしまうといわれる最上級の魔法の一種魔波動である。
その根源はあの女からだ。
今ここで、我らは何を敵に回しているのか本気で考え出した。
全身から脂汗を吹き出しながら初陣より恐怖を感じる命の危機が差し迫っている事が解かる。
自身のガクガク震える足に気付き、呼吸は深いものに換わっていた。
ふと、ひょんなことから一瞬で魔波動が消えたのが解かったが同時に我々は崩れ落ちた。
息をゼーハーゼーハーと横からも自分からも聞こえ、少し余裕が出来た時改めて女を見るとそこには白い女性のこぶし大の何かが顔面にめり込んだのだった




