36④ お迎え騎士と赤髪の女の信奉者。c
その女は、赤い艶やかなロングな髪をたなびかせ、家の奥からやって来た。
そして、開口一番にこう言った。
「あら、エルハルム公爵家の騎士がいる。
噂が出回っていたからもっと早く来ると思っていたのに遅かったわね?」
遠まわしに我々に遅かったわね。と言ってきやがった。
それに我々もライド様にガリアン殿がビックリした顔で彼女の見ることになった。
その中でも先ず最初に口を開いたのがガリアン殿だった。
「師匠、それは・・・・どういう・・・いや、知っていた・・の・ですか・?」
「ええ、家に居ても外に居ても、情報は入ってくるわ(弟子たち経由で)。」
驚いている宮廷魔導士長に朗らかに笑っている赤髪の女。
「「「「!!!!」」」」
「ついでに言えば、現エルハルム公爵様がご病気になられて、明日をも知れぬ状態に陥り、それに対して分家たちがよからぬ事を画策していると言う情報も知っているわ(使い魔とか魔法で拾った話etc)」
「「「「!!!!!!」」」」
「でも、それはライドだって知っていたでしょ。(殿下経由で)」
女は真っ直ぐに夫を見つめて、夫婦にだけわかる視線を送っていた。
その視線を受けて、ライドは驚く。
彼女がやはり当人如何しがわかる笑みを浮かべて頷いた。
ライド様は「いや、お前。お前は如何する・・・・」というと、笑顔で頷く。
それを見たライド様は渋面を作り黙ってしまった。
我々は何を言ったか、どういう会話だったかは不明だ。でも、主人を困らせるならばその妻でも許せない。
しかも、この女は側室の身分に落ちればいい者を、ライド様を誑かし、あまつさえこんな所まで来て、公爵家の次期当主に騎士の仕事をさせ、暮らしている始末。
我らはここで口を揃えて女に今まで思っていたことや聞いてきたことを一気に吐き出した。
「女! 貴様いい加減にせよ! 我らのライド様を誑かしたのにも飽き足らず、今も尚困らせるとはどのようなつもりだ!!!」
「そうだ! 貴様が若様を誑かしたせいで、今公爵家が大変な事になっている。それを知りながらも放置していたような言い回し、いい加減にせぬと剣の錆にするぞ!」
我ら二人の言にライド様と女は呆気に取られているような表情を我らに見せるが、それが更に我らの怒りに油を注いだ。
なぜなら、女の顔が我らを馬鹿にしているように見えたが、ライド様の所有物を切るわけにはいかないと考えていると目の前の女はライド様より直ぐに現実に回帰したのか我らに声をかけてきた。
「はぁぁぁ!? 意味わかんないんだけど!! キッッッモ!! 突然頼りも無しで捜す事もしてこなかった貴方達に馬鹿にされる要因が私に無いんだけど! それより、人の家にきて、先ず言う事が罵倒!? 馬鹿なの?
あんた達が私の何を聞いて何を見てきて何をしてきたのかを見ていないあんた達が突然来て、人を侮辱とか公爵家騎士というのは誇りも矜持もない事が今ここにわかったわね!!
主君の顔に泥を塗る前に行動を改めたらめるか! 腹(首)を切って自害したらどうなのぉっ!!!?」
我らの言葉に恐縮し謝罪するかと思いきや女は、堂々と言い返してきた。しかも死ねとも言って来た。
その言動に我ら二人は驚き黙ったしまったが、直ぐに侮辱の発言に血が登り言い返した。
ライド様は現状置いてけぼりになっていたが、それでも言葉を紡がれる。
「貴様っ! 我らをっ・・・なっぁぁぁぁああ!!!」
「うくっ! ぐああああ!!!」
我らは女を罵倒しようとした。
罵倒し、若の目を覚まさせるため斬る覚悟もした。
だが、突如我らの顔面に痛烈な空気を圧縮したような球がぶつかってきた。
いっ! 一体何だと言うのだ! そう思いながらも家の敷地の外へ我らは投げ出されていた。
そして、怒り狂う宮廷魔導士長の怒声が聞こえてきた。
「我が敬愛する魔法の師であるリリアス様に無礼な口を聞くとは、殺すぞ公爵家の犬っころども!!!」




