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公爵家の長男坊は皆から愛されている。  作者: 雪将
公爵家の最初の子供  前編
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36② 閑話 お迎え騎士達と宮廷魔導士長  c


 外套を被りオルタイシ領に着いた我々の先ずやるべき事は宿を探すことだった。

 安すぎて情報が洩れる店は駄目だし(金詰まれて喋る主人は信用出来ない)、高すぎの宿屋も駄目である(色んな奴が見張っていたり、余所から来た金持ちの情報は騎士や悪党に洩れ易い)。

 であるなら、捜すのは通常より僅かだけ高い目の付けられにくい店である。

 我々は物見遊山できたわけではないゆえ、最もこの国で古いと言われる古風な風情のあるこの都市を鑑賞する事無く、事前に調査した宿に向けて歩き出したのだった。

「エルハルム公爵家の騎士達が何故こんな所にいるんだ?」

 いや、あれか・・・・ようやくゴニョゴニョと言葉を濁す国家最強の魔導士、宮廷魔導士長ことガリアン・ド・ゴラル・メイズム侯爵家のものである。

 特段いえることといえば、ライド様と従兄弟関係に当るが昔から仲が宜しくない。しかも最近ではよくわからない宗教に嵌まり、鞭を祀っているという話を聞く。

 そのガリアン殿が目の前に何故か入て、買い物袋を持っている。

 我々がそれをジッと見つめると彼は視線に気が着いたのか、買い物袋に視線を落として、

「ああ、コレか。リリアス様に頼まれてな。ここまで頑張って・・・・ううん。いや、当たり前のように買い物をして帰ろうと思っているところだ・・・・。

 して、貴公らは一体ここで何をしているんだ?」

 我らは・・・と、言葉を発しつつ仲間達に視線を向けるが、僅かに首を振り合い目でやり過ごそうという合図を送りあう。が、ガリアン殿は、何も聞かずに頷き。

「もし、暇なら手伝ってくれ、貴族街にいるライド(・・・)殿()の家に行く故、コレでは足らんのだ!」

「「「「!!!!!」」」」

「貴様らもアヤツの家の者だというなら、主君のために働くが良い。

 と言う事でリストを渡す。私は此方のリストを当り捜し、物を探すゆえ、貴公らは此方を捜してくれ、あと、物が揃ったら我が使い魔に知らせてくれ。使い魔は今召喚するゆえな。後は頼んだ。」

 一方的だった。一方的にこの宮廷魔導士長は我々に買い物リストを渡し、フクロウの召喚獣を召喚士渡してくるが、何よりも!! 何よりも!!! 聞き捨てならないことをこの男は言った。

 ライド殿と、その後念を押すなら、アヤツの家の者(家臣)なら主君のために働くが良い。と、つまり、我らの探し人はスゲからくして直ぐに見つかる事になると言う事だった。


 そうこうしている宮廷魔導士ことガリアン殿は、「私は此方に行く。そちらは頼んだ」と言い残しあのプライドの高いメイズム侯爵家の次男坊は先ずありえない一般庶民の区画に消えていったのだった。

 我々は互いに見つめあい直ぐに口を開いた。

「やはり、入ましたね(この領内に)」

「拍子抜けするほど早く情報が出てきましたね。正直こんなに早く見つかるとは楽でいいですが、やっぱ気持ち的に・・・・ね・・・・」

「しかし、この買い物リスト、よくもあのガリアン殿自ら捜していますね。しかも、貴族外ならまだしも一般外をですよ。一体全体何が在ったのやら。

 それともライド様とそこまで仲良くなられたのか? あの二人が・・・・・・」

買い物リストを見ながらぼやきつつ、昔のライドとガリアンの犬猿ぷりを思い4人は首を振る。

しかし、このリスト無理矢理ではあるが渡され見つめる事に、そのうち1人が口を開く。

「しかし、コレ(リスト)如何しますか?」

この問いは買い集めますか? である。

無言に成る騎士。

こんな事をしているなら、ライドを捜しに行くべきだが、居ると言う事は知ったが居る場所はわからない。早急に彼を見つけるなら、接触を図るならで考えればコレを買い集める方がいい気がする。

もしも、集めず頼むと言う事だけすればガリアン殿の性格上、我らに溜息を吐き、お願いしても聞いてくれなさそうである。

しかも、「人に願うだけ願って、此方の願いを聞かぬ奴等の言葉を聞かなくば成らん理由はなんだ?」とも言われそうだ。

我らは容易く想像し、誰からとも無く頷きそれぞれ無言でリストを見つめ私はコレを、では私はこっちをと言い動き出した。



 時刻は朝中日(あさなか日=8~10時ちょっとの時間)、我々は言われたもの買い集めフクロウに向って話しかけるとフクロウの口から言葉が返ってきた。

『東クロス通りのワッフル屋でワッフルを20買いその場で待って居れ』

 我々はその言われた場所に行き、言われたものを待つ事10分ほど雑多の向こうからガリアン殿がフラフラと歩き現れたのだった。

「ご苦労。では参ろうか!」

 そういって我らの用意したリストのものを見て、頷き歩き出して行ってしまうのだった。

 だが、我らは頼まなくても連れて行ってもらえそうな雰囲気を出すガリアン殿に何も言わず便乗して事を成そうと直ぐに思い歩きだすのだった。


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 宮廷魔導士長ことガリアンは騎士達にリストを渡した後不適に笑っていた。

 公爵家の長男坊事ライドが家出している事は高位貴族(上級伯爵以上で5親等までの親戚)達の中では結構有名な話である。

 我が侯爵家にもライドが来ていないかという情報は、奴が家出してから半年くらいで着たくらいだから知っていた。

 一応親戚。親戚の恥は血筋の恥ゆえ口外はしていないが、5年の歳月もあれば家出をしている事くらいは8割の貴族が知っていてもおかしくない。

 が、結構前からオルタイシ領にいるのではという憶測も流れてはいた。

 というのも、ライドと次期国王のファリアス王太子殿下は義兄弟の契りを交わすほど仲がいい。

 であるなら、ここに入る可能性が高い。と成る。

 しかし、王太子領にも捜索願は出ていた筈だが、王太子殿下は来てはいないと答えていたらしい。

 やはり友を守ったのだろう。か、何かしら裏で取引があったのか。ここについては憶測になるから控えるとしよう。

 とはいえ私も数年前から敬愛する師匠(女神)とライドがここで暮らしているのは知っていた。

 最初の頃は時折、二人きりで師匠に挨拶できればよかったが1年ほど前からその欲求が強くなっている気がする。

 しかも、リカルド君を息子にリリアス様を妻にと想像すると頬が緩み微笑が止まらん。現にリカルド君のことを考えるなら、騎士の身分に落ちたライドなんかより、宮廷魔導士長の我が息子として学ばせる環境を作った方が彼のためにもなるとも思うように成った。

 そして、ついぞ三ヶ月前ふと思い出した。ライドは家出中で実家から捜索願が出されている事と、公爵家当主が病に伏せ、分家共がきな臭い動きをしている事に。

 だから、私はここにライドが入るという情報を流せばいいんだ。という結論に行きつき、幾つかの情報を草に放ち次期を待つ事にした。

 まあ、方法は面倒だが、戦いとは焦っては成らない。力押しはもっと駄目だとお師匠様が昔教えてくれた。

 で、あれば私はゆっくりと罠を張る事にしたのだった。

 最低はライドとお師匠さまの破局。最高は・・・・ふふふふふ。未来が楽しみである。

草=情報屋・隠密部隊を指す。


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