250 リ・オルタイシ 五日目~七日目 ⑤リード子爵家からの旅立ち
騎士(公爵家・子爵家)とリックの訓練を見届け朝食を食べて2時間ほどした頃には我々は馬車の出発の際一言二言言葉を交わした。
その際の騎士たちの顔は申し訳なさそうな公爵家騎士と落ち込んでいる子爵家騎士がせいぞろった。
まぁ、あんだけぼろ負けして、大人気なく勝ったらそうなるわ。
やらせたの俺だけど、そんなこんなでギラスとも大人(貴族的な)の挨拶を終わらせて馬車は出発した。
リックたちはギラス家が見えなくなるまで手を振っていた。
向こうの家の人のキミンとかいった女の子も手を振っていた。
貴族の子女としてそれは駄目なんだが年齢も年齢だからしょうがない所はあるのだろう。
俺も、「キキリー嬢、またねーーーー!! ギラス子爵も、また、剣を交えよーーーう!」笑顔で手を振った。
ギラスとキキリーは引きつった笑みで小さく手を振っていた。手が、早く行って欲しいとキキリーは手振りでにじみ出ていた(笑)。
そして、残りの工程距離(オルタイシの都市まで)5日前の頃まで何も無く道中は進んだ頃の昼に伯父上がちょっと申し訳なさそうに俺に話しかけてきた。
「リカルド君、ちょっといいかい?」
「なんでしょう?」
俺は俺として、頭の中では『愛の告白かもしれない』とか想像しながらも真面目に受け答える。
「ちょっと、このままオルタイシに行く予定だとは思うのだけど、少しだけ道を外れて欲しいとお願いしたら出来るかい?」
「ということは、何か理由があって何処かに寄りたいみたいなことですか?」
「流石にふざけていないと話が早いね」
なんて一緒にいる時間が長くなった分仲良くなった俺たちは結構軽口を叩かれるようになる。まぁ、怒る理由は俺には無いから良いけど。
ただ、やはり話を聞かない事にはアドソンたちを説得する事は出来ないのでまず話を聞く。
「一応、余裕のある工程ですので別にいいのですが、何処によりたいかだけ教えてくれますか?」
に、リッド伯父上の答えは、
「古都オルタイシ領の領地内に私とリリアスの父母、リッドやリカルド君にとっての祖父母がいるところがあるんだ。そこに寄りたいんだがかまわないかな?」
祖父母と聞いて俺はふと思った。
いるんだ、祖父母。では無く、そういえば祖父母のことを考えていなかった血縁感の事ではリックからかう事に全力をふっていて、母の母を想像していなかった。
そういえば、見たことが無かった。少なくとも一緒に住んでいないのは知ってる。田舎にいるのかな? とか、思ったけど母の昔話の記憶はパン屋の娘でという話であれば故郷はハルムのパン屋になるから一緒に住んでいるのが妥当と判断できるけど、今は居ない。
ならばどこ? に、なるが、伯父上は俺が黙っている事にもう少し情報をくれた。
「私の父母もとい一番下の妹、リリアスにとっても妹の嫁入り先に分け合って同居をしているんだよ」
ほん。と頷く。ちょっとオカンの家族間の事に新鮮にして聞いている俺に伯父上は俺を見て思った疑問をぶつけてきた。
「リカルド君はリーアに私たちのことはあまり聞いた事が無いのかい?」
「いや、ありますがそこまで気にした事が無かったので深堀はしていませんでした。その内俺が大きくなったら(旅をする体力がついたら)、合わせてくれようとはしていたんじゃないかとは考えていたのであまり聞いた事もなかったです」
従兄妹があんなに可愛い男の子だったなんて、チラッとリックにばれないようにリックを見ると伯父上が「ほんと、ほどほどにしてあげてね。出来れば距離感が今のままがいいかな」というので善処します。と述べておくだけにした。
この世界の祖父母って言ったら普通に回りを見る限り若い人が多いから、死ぬまでに大分年月有りそうだったし、本当に死にそうならオカンが死神を追い払いに行くだろうから全く考えていなかった。現に死に掛けた人を目の前で何人も蘇生を見てきたから、この世界ではオカンの右に出る治療師は居ない者とみていたのもあった。
まぁ、不慮の事故の即死でなければ、病気の類はまず治す。家のオカンは、という事も軽めに縮めて伝えると伯父上は「確かに」と頷いた。
さて、俺としては別に問題がないので了承する。
ぶっちゃけて祖父母にも会ってみたいのが人情。
なので、アドソンを探そうと顔を向けると、目の前にアドソンがいた。度アップではない。が、俺から4歩離れたところにいたアドソンが何かを言う前に頭を下げる。
「委細承知しました」
ん、これは、と、伯父上を見ると安堵していた。その上で、
「すまないね。アドソン様にお伺いしたらリカルド君に伺えとおっしゃられたのでね」
現状既に根回し済みだったということで、頷いて、伯父上にご飯後に地図を開いて今後の行く方向、目的地の場所を示してもらった。
行く場所は古都オルタイシから距離にして2日の距離で道すがらちょっと寄り道しても3時間くらいで済む距離で名前がラデス村というらしい。
かなり近いとことに祖父母と伯母がいた事に俺は驚いた。
驚いて、流石にこっちは来ない。
街道が安全な所は基本俺と俺のオルタイシの仲間たちは来ない。スリルを求めて山賊を狩に行ったり強い魔物や美味い魔物は森の奥にいるので逆方向にか他国方面に走ることが基本だった。
この距離なら、俺や母さんなら3~4時間で走って来れる。ちけぇな。
そんなことを考えながら道中は進んでいくのだった。
そして、あいつは現れた。
伯父リッドと伯母ナーシャに高熱を出させた大元のあいつが・・・だ。
4〜5月まで、また、さらば




