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公爵家の長男坊は皆から愛されている。  作者: 雪将
第四章     後編
352/367

239 リ・オルタイシ   躾 2

ふっ、ストックもうない・・・ 頑張るが期待しないでくれ

(23.2.28)


「シルコ、気が付くのが遅すぎる。森の中で野生を失うと死ぬぞ」

 スッと躾、感覚で気を飛ばす。

 きゃんきゃんと吠えていたシルコはビクッ! 吠えている声を押さえブルブルと震える。

「リック、リーシャちゃん。元気なのは良いけど、誰か騎士の護衛を連れて行くべきだった。森の中は何だかんだで危険が一杯だからな」

 悠長に俺は話しながら爪で地面を引っかきながら突進をしてくる奴がいるが、俺はその間もお喋りをしながら牙を掴み、足には魔力で作った足場で地面と俺を固定し、吹き飛ばされないようにしながら、余った手でボアの頭蓋骨の粉砕をする。

 頭蓋が割れる音とともに全身が感電したかのように震えて動かなくなるボアから視線を外し、妹を確り抱いているリックに、

「立てるか?」

「………あ、ああ」

「すぐ帰るか? それとも、ビビッてちびらせたそれどうにかしてからにするか?」

 腰が抜けているのか生返事なリックと涙袋に一杯の涙を溜めて震えているリーシャに近づき、膝をつく。

「リーシャ姫……リーシャ姫………」

 数度優しい声で彼女に呼びかける。

 兄の胸の中にいる小さな姫君はポロリと涙を流しながら、こちらを向いて、「ひめぇ」と自分に言われた言葉に少しだけ、興味が引けたらしく顔と少しだけ身体をこちらに向けた。

「ええ、リーシャ姫、もう大丈夫ですよ。ですが、お転婆は程ほどに願いますね」

 そっと手を取りやさしく手の甲に口付けし、瞳を見ながら笑顔でお願いをした。

 ボンッ! と何処からか音がした気がして、周囲を目の前の子供に気付かれないように調べるが異常が無い。

 異常は無いが、アドソンが来る。

「若、お二人は御無事ですか?」

 ガサリと音を立てて、スマートで冷静に、それでいて俺の無事は聞かないのは正しい。

「ああ、騎士リックは名誉の負傷をしたのとボアの改めのため、ここに残るから先に姫君をお連れしてくれ」

 立ち上がりながら事務的な指示をアドソンにすると騎士の礼を取り、頭を下げるのだった。

「よろしければ、お手を」

 似非スマイルで小さなレディーに手を差し出す。

 まだ怖いのかそーっと手を伸ばして俺の手を掴む、掴まれた手に満面な笑顔を向けると目がキラキラとしている。

 俺として思うことがあるのはただ一つ、子供の体温高けーー、熱あるくらいたけーなぁ。




(カールドたち)

「「「…………………」」」

 無言の視線が俺を捕らえている。

「「「…………………」」」

 ただひたすら、女ッ垂らしを見る視線でこちらを見てくる。

「いや、異議有り!」

「誰も何も言ってねーよっ」カールド

「いや、俺だってわかってるよ。当時は半信半疑だったが今ならわかるよ、俺が非常に悪い男であることくらい」

「(いや、今もだろ、それ)」

 視線と心の声でカールドは俺とのコミニケーションの取り方を心得ている。

 だから俺は、彼の手をそっと取り、口元へ持って行き、ペロリ。

「……………ぎゃぁぁぁぁぁっぁっぁぁぁぁ、汚ねぇぇぇぇぇぇ」

 騒いでいるカールドを余所に、過去のプレイボーイ兼女垂らしのその後を書き始めることにしたのだった。




 よろけながら、俺の胸に飛び込んでくる姫君をやさしく受け止め、言葉を投げる。

「姫君、我らはまだここに残りなさなければならない事があります故、私の剣で一番の騎士に御身の護衛につけます。

 今は、この騎士に身を預けてはいただけませんか?」

 終始笑顔の俺に顔を真っ赤にして小さくコクリと頷いている。

 俺はアドソンを見ると、なぜかアドソンが感極まった顔で涙袋に涙を溜めているのが見える。

 俺は、お前の泣く要素何処にあったっけ? と思いつつも目だけで任せるぞ。と見つめると、胸に手を当てて紳士に頭を下げ、小さなレディーに向き直り、こちらも「小さなレディ、お手を拝借してもよろしいですか」とナイスミドルである。

 手を出してきたら身体をかがめて失礼しますとそのままお姫様抱っこには少し無理があるがそれに近い抱っこをした。

「アドソン、任せるぞ」

「はっ」

 俺の言葉に小さなカブリに、森の外へ歩き出した。

 俺は残ったリックに背を向け、作業をする事にする。

 血抜きは大事であるかにして、

「な、なんか言わないのか」

 数歩足を進めると後背から声が届く。

「怖い目にはあっただろ? それで反省すればいいよ」

 俺は魔法で後ろ足を持ち上げていく。

 体長110cm四足での大きさが70cmの成獣のハイレートボアである。

 人間の子供くらいは平気で食う。なんだったら、大人でも食われる時は食われる。

 首が眼前にむき出しになった所に持っていた剣で一振りし、速やかに首の方向を真逆にする。

 心臓はまだ動いているから首から大量の血が噴出している。

「ただ強いて言うなら、弱い奴は強い奴に殺され喰われるのが運命なら、こいつは俺の腹に収まるのが運命だったのだろうが、もし助けが来なかったら、お前がこいつの晩御飯になっていた事だけは、そして妹まで食い物に捧げそうになった己の見積もりの甘さはしっかり自覚しろよ」

「…………!」

「それに入れ、その後はこっちでやる。」

 目の前の水もといお湯の塊を出してやるが動かない。

 しょうがないのでお湯の固まりにリックを巻き込ませる。

 唐突に襲い掛かるお湯に驚いて、もがいているが「呼吸できるだろ」と声をかけると思ったより冷静なのか喉を押さえながら大人しくなってなされるがままになった。

 お湯から出して、身体に付いた濃い湿気を奪い取る。

 地面に犯された少年というような形容しがたい顔をしていて、もう一匹を見る。

 プルプルと震えている仔狼にふわり浮べて真正面から目を見て俺は殺気なんて要らないけども俺が怒っていることだけは目だけで伝えるとシルコの股間からシャーっとチビリションが垂れ流された。

 シルコはしょぼんと塩らしくなった。

「帰るぞ」

 シルコは脇に抱え、ボアは地面に下ろして足だけ掴んで歩き出す。

 歩き出して、また数歩のところでリックは消え入りそうな声を出す。

「なんで、何でお前はそんなに強いんだ」

「弱いと強い力を持った奴に踏みにじられたくないものを踏みじられることがある。そいつは身体の怪我であれば幸い、命だったり、自分だけが生き残ってしまったり」

 振り返りこちらを見ていた視線とかち合い、シルコを目の前に出す。

「よかったな、お前も妹も無事で」

 暗にリーシャが死ななくてよかったな。お前の身代わりで死ななくて、と伝える。

 こいつはどう返答するのかジッと見つめると、「うう」っと呻くような声を出し始める。

 俺は周囲一キロ圏内を知覚して直近な危険がないかの確認をして家臣たちに声を届ける。

『現在俺は無事、アドソンに詳細は気になるものは聞け、今こちらへ来るな。年若い男が己の無知をしり男泣きしている。』


================

 20分くらい泣き続けたリックに俺はその場に座って素知らぬ顔しながら流(瞑想)をする。

 リックは泣き止むとムクリと立ち上がった。

 目を下に向いているけど意識が本の僅かに拠点は何処なのか探しているみたいだった。

 俺はシルコを抱っこしていたのを小脇に抱えて、豚足の足を持ち歩き出す。

 シルコはション便をチビッてから借りてきた猫のように大人しい。諦めの境地か反省しているのであろう。

 俺はボアの重さをものともせず子供の歩調で歩き進むと僅かながらも道が出来ていく。

 その道をリックは幽鬼のように続いてくる。

 そして、本の小さく呟いていた。

 次第にまた、か細いそそり泣くようなでも泣いている事を悟られないように我慢して地面を目から出る汗と鼻から出る汗で濡らしている。

 俺は心の中で他人事のように『泣け、若人よ…………様々な理不尽がお前の人生を襲うだろう。だがな、それを乗り越えるからこそ人は強くなり、大人というものになるんだ!』と同時に『その理不尽を俺も与えている側であるジレンマは気にしないで』彼にリックに見せられないような仄かな笑みを浮べて拠点に、リックを心配して拠点の前に家の暗部たちと騎士たちが待っている。

 俺は堂々と歩いていく中、リックは安心と悔しさと様々は理不尽を置き去るように走り出した。

 俺はその背を己のペースで歩を進める。

 歩が残り半分の時にはリックはナーシャ伯母上の胸に飛び込んでしくしく泣いていた。

 俺との距離はまだあるがナーシャと目が合うと僅かな会釈をされて、伯父リッドは深々と頭を下げる。

 俺は彼らの目の前5mのところで立ち止まり、ただ一言笑う。

「腹、減ったろ。飯にしよう」


 この後、騎士たちは騎士たち、俺は俺たち(あんぶたち)、リッド一家はリッド一家で食事をするのだった。

 リカルド一家→楽しく(普通に和気藹藹)

 リッド一家 →やさしく(心配と怒りはしたが子供の成長を願う)

 騎士隊   →お通夜(反省会中)


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