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公爵家の長男坊は皆から愛されている。  作者: 雪将
第四章     後編
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233 リ、オルタイシ  魔麻と鎧


 部屋には母はいなかった。

 父と隣の部屋にいるようだったのでありがたかった。

 家の小精霊曰く、「男の人が抱えて連れて行ったよ」とのこと。

 つまり、ちょっと待っててと言った父が痺れを切らし、運んだのだろう。

 どうでもいいや。

 俺がいない間に俺の部屋になった部屋の中で精密知覚をして運び込まれている箱の中身を把握して、俺の武具がある箱を探し出す。

 それを引き寄せて、中身を引き出す。

 カミセ村の鎧の一部同じ装備である。脱ぐべき服を脱ぎ、着るべきものを着る。

 魔麻のズボンと長袖を着、ミスリルと魔砂鉄を織り交ぜた胴鎧と下位竜の鱗で作った肩当・手甲・はい盾・脛当てに魔砂鉄とワイバーンの魔石と鱗の粉末を混ぜて作った西洋風だけどフルフェイスでない小角付き兜を見つける。

 綻びは無い。鬼面は魔鉄である分錆びもなし。全体は黒いが、魔力を通すと黒・黄緑・赤に変化するし一部を変えることも出来る優れもの、夜に解けるのはとても便利である。

 手甲を腕に当てるだけで手甲の留め金が勝手に俺の腕に装着される。また、ちょっと別機能もある。

 他も同様である。

 動きが制限されないように勝手に調整をしてくれる。魔力を這わすと鎧の下にしているシュルっと魔麻で作られた衣服が連結し首まで覆う。魔麻の衣服は鉄と同列の高度を持ち衝撃吸収の付与もしている。

 我は便利に作ったものだ。と自画自賛しておこう。

 鋼魔剣と小魔剣を腰に装着させて、一若武者が誕生する。

 戦だーーーーーーーー!!! と、俺の頭の中でほら貝が鳴り響き妄想に掛けて現実に戻る。

 さて、脱ぐか脱がぬか、いやらしく。あはーん。

 馬鹿なことをいつものように考えてから、俺はこのままで行く事にした。

 特殊な鎧ため、音の反響は非常に低い。

 光加減で白にも黒にも赤いも見える蒼白の鎧。

 正直、俺、格好いい!

 窓をガチャリと開け、テラスに出る。テラスから見えるのはラフィンとその一派が眼下を通る。

 俺は視線を上げて、魔力で人が集まっている所を探しつつ、もう一つの事をする。

 眼下から「「「うぎゃぁぁぁぁぁぁ!!!!」」」と数人の悲鳴が聞こえる。

 きっと股間を抑えて尻を突き上げている頃だと理解したが興味が無いので俺は跳躍を鋭く身体を見えないようにして集合場所に向かった。


 公城の門の前に立つと複数人の騎士が殺気だち、ところどころ擦り傷がある7名とシレッと立っている、家の暗部4名に見た事が無い騎士が11名がそこにいた。

 居る人間はアドソン、シグナル、リクス、ルオル、ガウス、アーデル、ロイ。

 ちなみに暗部は、ロミオ、ヒアキ、ミミポ、スキットがいる。

 ロミオは他の従者達と調整をしている最中二人の人物がロミオを凝視している。

 二つ名が禿殺しのミミポはロミオの残った髪の毛を毟るような動作で頭を凝視し、部下になる時にひと悶着あったスキットはロミオの尻を凝視している。

 ロミオにいたっては殺気を感じるのかスキットたちのほうを見るが彼らは、話し合って作業工程を確認する動作をしてロミオの視線を回避していた。

 首をかしげ指示を出しているロミオに二人はそれぞれ視姦し、毛を毟る仕草でニギニギしている。

 すると、ロミオは指示を出す振りして、棒手裏剣の一種 千本を二本嫌な視線の方位投げた。

 二人は半コンマ遅れつつも対処して抗議の声を上げようとするが、

「やかましい!! 俺の尻と頭見てんじゃえーよ、仕事しろボケ共、リカルド様がお目見えだぞ!!」

 俺の存在を気が付いていたロミオは視線でなく気配で俺の存在を誘導すると二人はそそくさと本当の仕事を再開し始めた。

 あの毛狩りとホモ相変わらずか暇さえあればロミオを見るとか暇なのだろうか?

 まぁ、でも一休憩と休み日くらいはこいつらに関わらないでやるのが一番か、俺は視線を奴らから外して気になるもう一組を見て声をかける。

「つーか、お前らなんで擦り傷と砂まみれなんだ?」

 歩み寄り、人の動きを視ながらアドソンたちに話しかけた。

「若! はっ、少々戦っておりました」

 ………? ん? 思わず意味が解らなくて首をかしげる。訓練でもしていたのか、今日旅たつのに? いや俺もするけど、戦闘力が無い人間達の護衛するのに………? マジで思考停止に近い考えが俺に過ぎっている中、アドソンの注釈にルオルが答える。

「リカルド様、砂と傷まみれな方々はリリアス様からリカルド様の付き添いはリカルド様に鍛えられた者6名のみと派閥の者12名といわれてましたのでアドソン団長達は言われた瞬間剣を抜いて、乱戦始めました。」

「何しての?」

「若の騎士で剣は私なので」

 素の感情も呆れも篭った声に堂々と言うアドソン。

 ちょっと気持ち悪かったけど、「う、うん」と頷いて、

「微力ではありますがルド様の背を守るのは私です」

 リクスの発言に『ああ、あの時の言葉を覚えているのか』と少しだけ感動し、他四名が膝をついてリクスの言葉に追従する。

 俺は微笑んで「感謝する」と伝えると、嬉しそうに微笑んだ彼らを見て、BLを思い出す。

 さっきホモのスキットを見たせいだと結論付けて、頭の中のBLをかき消すように空想の手でかき消しておく。

 なぜか寂しそうにこちらを見ているアドソンに気が付いて声をかけておく。

「アドソン、折れるなよ(俺の剣なんだろ)」

 副音声を滲ませ、アドソンを見ると、驚きと嬉しそうな表情を僅かに見せ、

「はっ!」

 勇んだ声を出した。

「ん? あれ、にしては、ワイハンいなくない? 普通に考えたらあいつは強いからここに残っているんで無いの? いや、まぁいて欲しいとかは無いけど、負けたの? 思ったより俺鍛え方まちがったのか?」

 いや、俺の背を守って欲しいではなく戦い勝つなら順当を考えるとあれがいないのは首を傾げているとシグナルが答える。

「ワイハンは危険です。恋人の側に居たい。とのことです。」

 ああと催眠術をかけられたワイハンの記憶を思い出して頷いた。恋は盲目である。元々は母のストーカーみたいな感じだったから気持ちがミッシェルに行けば、残るか。と頷いているとルオルが口を開いた。

「ちなみにルダン団長も危険です。」

「あ、いやルダンは別に同でもいいや。どうせあいつは俺を怖がってるだけだし、怖がらせたつもりもあるから、まぁ、放っておこう。」

 ルオルの情報に俺は同でも良さそうに答えておくと、ルオルは何だかルダンがいると思われる方向の塔を見て困り眉毛の眼差しを送っているのだった。

 まぁ、そうなるな。

「ルオル、追い詰めすぎても壊れるし、心が病むから程ほどでいいんだ。今まではたぶん自分の思い通りに生きてきているようなタイプではないの? じゃぁ、清濁の見切るまで程ほどの刺激を入れて逃げ癖だけをつけないようにすればいいんだよ。」

 塔を見ていたルオルに言葉をかけ、塔を少しだけ見てから俺は門の方、門から先200mほどの所に目を付ける。

 人通りがあり、まだ、見えないが俺の近くはもう感じている。

 皆大好き、リックが家の暗部に守られながら家族と共にこちらに近づいてきている。



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