212 尻を触る
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ウーラン・ド・ストラフに向き直った。
真っ直ぐ目を見て口を開けて、そして、閉じる。
(カールド)
「何がしたいんだ?」
「いや当初、俺はこいつ、ウーランに謝罪をしようとして、やめたんだ」
「どういうこと?」
「前日というか2日前から3日前に彼が俺に剣を捧げた。でも、俺のしたことは知らぬとは言え、こいつは俺が言うよりも民の為に動いていたんだ。
だから、謝ろうとしたんだけど、それを言うのはずるい気がしてやめたんだ。でも、それを理解してウーランは許してくれたよ。」
ウーランは俺を見て首を振る。
それだけで今日来た理由の半分が解消される。
正直ウーランの家に伯父からの話を聞いていなかったら来る気が20%くらいだったが、話を聞いて80%に増えた。
俺はウーランに言葉ではなく騎士の礼をもう一度だけ取り、頭を上げて、リックに声をかる。
家の主(家長はウーランだが、それでも今家に居てささえているのは恐らく父の方)に謝辞を述べる。
「リック、帰るよ。ウナン殿、御丁寧な御挨拶ありがとうございました」
「いえいえ、お二人のお子のリカルド様にお会いできたことは我ら家族に取って光栄のきわみにございました。
お土産もいただいてしまい、申し訳ないほどです」
こちらも家族三人が同時に頭を下げ、その言葉を受け取り俺は帰宅する方向になった。
ストラフ家から出ると見送りに出てきてくれた三人にもう一度。でも頭は下げずに「ありがとう」と述べると、ウナンが頭を下げるので俺たちは岐路へと歩き出した。
ついでに、リックの手を握ろうとしたら、叩かれた。
何で、叩くんだ? と問うと、何で握ろうとして来るんだ? と問われた。
「いや、従兄妹の兄ちゃんに手握って欲しいなぁ、と思って」
嘯いてみると、スゲー嫌そうにしながら、手を差し出してきたので俺はその手を握って笑顔になった。
それを見ていた従兄はマジで嫌そうだった。
伯父さんの家に行く。
その仲でも俺はニコニコ、隣はムスッとしているが唐突というかなんというか、話しかけてきた。
「なぁ」
「ん~?」
「お前の父ちゃんってお貴族様って本当なのか?」
「ん~。そうだけど、何か気にしていたら別に気にしなくて良いよ~」
「………」
「………、ねぇ」
声をかけると視線が向いた。
「行きは嫌がっていたのに何で帰りは手を繋いでくれる気になったの?」
俺の言葉にいまだ嫌そうな目を向けつつも答えてくれる。
「お前、ちょこまかと悪戯してきたけど一番、嫌だったのが俺の尻を触ってくる手つきが一番気持ち悪いから………」
それだったら、手を握ればちょっかいを出されないですむということか、なるほど。
そういえば尻も撫で回していたわ! 昔(前世で)よく仲のいい後輩や同期の尻を撫でていたのを思い出してしまったわ、わっはっはっは(作者の真実です、訴えられなくてよかった。ちなみに相手は男ですが作者はノンケです。嫌がる様が面白くて、はっはっは!)。
「そうか………、だが、今後もやめる気はしない」
目をキラリと輝かせて真面目に答えて従兄を見ると、凄い汚いものを見るような目でおれはリックに見られて、ゾクゾクとなんともいえない気持ちが沸いたが、その瞬間握っている手がブルリと震えて隣を見ると歩きながらキョロキョロしている。
尻か! 尻を誰かに狙われているのか!! 何か、何か危険な何か感じちゃったのか!! でもな、たぶんそれ……俺だわ…犯人………。
(カールド)
「ひでぇ」
「まるでカールド氏の日常のようだ」
「!!!」
アストの言葉にカールドがギョッとする。
「けっけっけっけっけ」俺
「笑ってんじゃねー!! いい加減にしろよ!!」
「ちゃんと訓練はしているか?」
「話、そらすなや!!」
そうこうしていると、伯父のうちに付いたのだった。
外には井戸端会議している伯母がおり、俺は、
「母さん、ただいまーー!!」
リックの手を放し、走り出すが後からリックが、
「お前の母さんじゃないだろ!! 俺とリーシャの母ちゃんだ!!」
まだ、母親からの親離れできていないリックは怒って俺を追いかけてくる。
マジでからかいがいがあって面白いぜ!
(今日の就業が終わり、たまたまアストと二人きりのときに)
「本当に酷いですね。初代様」
「ぐへへ」
「いや、(笑ってないで)いい加減カールド氏に悪戯おやめになられてわ?」
「じゃぁ、アストが肩代わりしてくれる?」
「………やっぱりカールド氏で」
「お前も大概酷い奴だな」
「初代様には負けます」
「口がへらねぇ」
「へっへっへっへっへ」




