190話 転戦 4
シグナルが俺にどういう順番で頭目から下っ端が並んで居るのかを教えてもらい俺はそいつらの目の前に無言で立ち、奴らの悪態を付く前にタダ一つのことをしてやった。
何かを言う前にただただ無言で頭目の顎を思いっきり蹴り上げる。
通常ありえないほど首を伸びる。
確実に頚椎が伸び外れていると思われる。
冒険者に商人はもちろんだがこの光景を見ていた盗賊たちは頭きれいにえびぞりで空を舞う頭をただ、黙って無言で見つめている。
とうの頭目の顎は砕かれ、後に居た他の手下達の中に消える最中、巻き込まれた下っ端は悲鳴を上げるがそれ以上の声は無い。
俺は頭目の横に座っている中堅に首を向け、タダひたすらに感情の無い虚空の目を中堅見せ質問をした。
「お前らの根城は何処だ。ん?」
中堅は頭目が飛んでいったほうを見ていたが、俺が話しかけたことでゆっくりとでも絶望的に目を見開き俺を畏怖している。
「もう一度、問う根城があるだろ? 何処だ」
座りながら目線は少し下になるが相手の胸倉掴んで自分のほうに近づけ目の色ギラギラにさせて尋ねる。もちろん、他の下っ端にも聞いてみる。
余ったほうの手で中堅の鳩尾に人がギリギリ見える速度で殴り、
「他の連中でもいいぞ! ただ、言わないと無傷で居られない。無傷でありたいならさっさといったほうがいい。
言うまで甚振る気で居るんだ。どうせ言うならさっさと話せ」
鳩尾を殴られた中堅が呼吸困難になっているところに相手の股間にスマッシュも叩き込んでおく。
「おごぉぉぉぉぉ!!」
容赦なく中堅を殴り飛ばす。
もう一人中を舞い、地面に落ちる。
ビクンビクンと痙攣している中堅を見て回りの騎士以外がドン引きしている。ちなみに騎士たちは無言で整列している、慣れたものだ。
だが、それ以外は子供の膂力が異常なことに引きつっているようだ。
「さて、諸君さっさと話してくれ、暴力ではなく俺の調合した毒薬を飲ますと言う方法もあるんだ。
せっかく君達が話しやすくなるように頭目をあの世に送ってやったんだから、喋ってくれるよね?」
笑顔ニコニコと喋る俺は下っ端の方に歩いていきながら薬ビンからあからさまにヤバイ色して丸薬を取り出して一番近くに居た盗賊の顎を掴みそれを流し込もうとした。
「やっ! やへぇてへーー!! いふ、言うからぁぁぁぁ!!!」
顎を掴まれた下っ端は叫んだ。
だから俺も手を放して、笑顔で「早く話して」と答えると、下っ端は脅えながら話してくれたのだった。
誠心誠意の説得に応じてくれた盗賊に感謝するのだった。
ここよりハルトと逆方向であの門番が居た村からは右方向に離れ事おおよそ8kmのあたりにあるのだという。
しかも留守番の仲間がまだ20名ほど居るのだと言う。
俺は感謝して彼に減刑を求める手紙にしたためる。
元々母宛に言付け(手紙)を頼むつもりであった。内容は盗賊どもをモルモットとして送ることを書くつもりだったが、まぁ、もっと仲間も居るのが分かったから連行する騎士の派遣も書くことになった。
そして、現在俺達はその砦の目の前にいるギリギリ知覚の範囲内にあったから道案内で下っ端盗賊を連れてくると言う作業が無くて助かったし、その砦を俺達はタダ黙ってみている。
中から盗賊たちの絶叫が鳴り止むまでただただ見ているのだった。
盗賊どもをビビらせたあと、俺達は走り出した。
ただ、何も無い野原を駆ける俺達は2~3km走ると森に突入していく。
木々を避けつつ流動的に俺を先頭として走る騎士隊は更に4km走ると木と大岩をくり貫いたそこそこ大きい砦が見えてきたのだった。
俺達はその手前くらいから早足になり、最後は気配を消してゆっくりと徒歩で砦への間合いをつめていく。
その間コソコソと話す。
「あの砦、あいつらが作ったの? それとも何か利用するために爵家が作ったの?」
シグナルを見つつも騎士たちを見てみると、
皆一様に首をフリフリと左右に振って知らない・違うアピールをするが、それにしても大きさがとっ捕まった奴ら含めても3~40人しかいない盗賊が作れる大きさではない。
俺みたいな優秀な魔法使いが居れば違うのだろうが、だ。
まっ、親父か近隣の奴ら(村)に聞けば解るだろう。
そう考えながら現場に到着して2分たった頃に思考が停止したが騎士たちからは、
「リカルド様、どう攻めなさいますか? 正面から行って、壁っ! 上りますか?」
そう、こいつらのおおよそ半分は壁に止まることは出来ないけど、後に落ちることなく登ることだけは出来る。
まぁ、それでもいいんだけどどうせだから悪戯がしたい。なので、
「いや、面白い魔法があるんだが観戦しない?」
ニタリと笑みを浮べて見せると、騎士たちはこの後の悲劇を考えたのか哀れみの視線を砦に向けていた。
そして、俺は合意が得られたと思い魔法を実行する。
彼らの足元に木製や岩(土)の手が生え、それが盗賊の足を掴んだ。
盗賊たちはビクゥ!! としているが、その正体を見定めるために下を向くと、木偶人形のような、気持ち悪い腹話術の人形のような顔と他に手が木製の砦から生え出し今まさに自分を取り押さえようとしているではないかと言うところに出会い悲鳴をそこかしこで上げ始めたのだ。
ついで、このときの騎士たちと俺は魔法で知覚を共有している。が、それも数人だけ、その光景がわかるからこそ、彼らは思う。
『ひでぇ』『こんな捕らわれ方嫌だ』『若君、あくでぇー』
思っていそうな表情をしていたのだった。
中では次から次へ出てくる無うすの手と複数の顔や顔から顔が浮かび上がり声を上げて彼らを地面に引きずり下ろそうとしている。
ちなみにこのときの声は騎士たちに暇だからリクエストを出してアテレコさせ、声を風の魔法で鈍らせて奴ら耳に届く頃には様々な声を音叉となる。
だからこそ、一層砦からの悲鳴は激しくなる。
俺は後ろを向いて騎士たちに言ってやった。
「初めての共犯だね」
ニッコリと笑顔を見せると凄い嫌そうな顔(まだ心がピュア)と無表情で堂々としている(覚悟を決めた奴ら)と分かれていた。
あれから十数分の時をおいて俺達は砦へ堂々と侵入している。
もちろん扉を大きな音鳴らして破壊して入って行ってる。
敵は全て地面と同化している。
口だけが見えるもの目が半分と鼻だけ、口だけが塞がれて顔が地面から生えている者と様々だが全員一律に同じ事と言えば顔以外全部地面に埋まっている。
地面に埋まっている盗賊たちは必死に涙と股間を濡らしてモガモガ言っているが俺はそれを無視して砦の内部に入っていく。
そして、真っ直ぐに砦の牢屋に向かう。
そこに居るのはボロキレを纏った子供とぐったりしている。
子供はやせ細り衰弱し少し怪我をしているようだった。
だから俺は火を幾つか浮かべ彼ら伝える。
「公爵家の騎士だ、助けに来た。家に帰ろう」
鉄の楔を魔法で分裁して俺よりも少なくとも年上(子)たちに伝えつつ、後にいた騎士たちが彼らを抱きかかえるのであった。
しかし、奴隷なのか近くの村の子かはわからんなぁ。まぁ、近場から聞きまわればいいか。




