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公爵家の長男坊は皆から愛されている。  作者: 雪将
公爵家の最初の子供  前編
29/367

29  ただのリカルド  c (ライシュ警備隊長と宮廷魔道士)

c


 公爵家には当主であるライド・ホン・ガリアス・エルハルム公爵を筆頭に妻が三人、子供が11人存在する。

 だが、この中で特筆される子供がいる。

 その子共の名はリカルド・シン・ドバル・エルハルム。初代大公にして生家である全ての人々に愛された存在として有名を馳せている存在だったが、その公爵歴の記載は彼が7歳以降のときにから突然公爵歴に登場し、大公歴には成人し大公位を貰ったころから始まる話だったのだ。

故にそれまでの幼少期なにをしていたのかが、わからない人物として有名な人である。



 御歳、俺はそろそろ5歳になる頃合だった。

 父は恐らくいいとこでの貴族だとは思っていたし、母は何か変わった人だと俺は思っていたがあんま気にして生きてはいなかった。

 俺の日課はこの長閑な街なみを見ながら走り、空高く飛び、屋根伝いを走り、窓に佇むご年配や通りに居る知り合い(友達)の母や父、家族に挨拶しながら今日も町の治安維持に奔走していた。

 ついでに、どうやって屋根伝いを走っていたのかというと魔法で身体強化したり、魔法の浮遊を使ったりと、そんな感じである。

 俺はそんな事をしながら、街で一番高いところに作られた王太子領城の塀の上に到着した。

「ライシュ警備隊長――ぉ! おはよーございまーーす!!」と塀の上から西門の警備隊長に挨拶をするのだ。

「おお!! おはよーー!! 今日も頼むなーーー!!!」

 こんな事を言われるのも俺が1年前から始めた朝の街の見回りから始まった。

 最初の頃はここに来て棟からの見下ろしを行なおうとしたら、『小僧!! 此処を何処だと思っている!! オルタイシ(王太子)領の城の上だぞ!! ふざけた事をするな!!!』と、よく怒鳴られ起こられたものだ。はっはっは。

 でも、ある時、父と義伯父(王太子)に俺のやっている日課がばれた。

 子煩悩の親父は滅茶苦茶心配し、母は笑い放っておけと、義伯父に関しても母同様に笑い、町を守ってくれるなら許可を下ろしてくれた。

 その後はすぐさま警備隊長のところまで命令が行くが最初の頃はライシュ警備隊長に嫌われると言うか嫌悪はされていた。

 どうやら、自身の職務が貶されているような気がしていたらしいが、ある時を境にそれは無くなった。

 俺が人攫いを叩きのめし、ついでに壊滅にまで追い込んだことがある。

 壊滅の際のことである。ライシュ警備隊長の目に入れても痛くないと豪語する姪っ子さんがこの人攫いどもに捕まっていたのだ。たまたま俺がそれを助けた事もあり、俺に対する考えも軟化したありふれた話だったのだが、そこから俺とライシュ隊長は幾度か話し合い、最近では昼飯を奢り奢られる関係にもなっているのだ。

 だから、今日も俺達は気安い関係でありえるのだった。



 でも、そんな日は直ぐそこまで迫り終わろうとしていた。

 その日も俺は朝の見回りが住み、時刻で言うなら10時頃に家に着くと家の前がモノモノしいあわただしさを演出する騎馬の数がそこにあった。

 騎馬の鞍についている家紋は俺の良く知る家紋、義伯父の家の家紋ではなく今はまだ全く知らない家の家紋だったのだ。

 俺は何事かと思いそっと近寄って行くと、騎馬をか? 家をか? 解からないが見張っていた騎士が俺に命令してきた。

「そこの小僧! 見世物ではないぞ!! 今、此方は取り込み中だ!! 珍しいもの見たさなら余所へ行け!!」

 俺はこの言葉に、「・・・・・」と無言に成ってしまう。それを見た騎士は、俺が怖がってしまったのかと考え言葉を弄してくる。

「少年。今、此処は少しの間、立ち入り禁止だ! 悪いが怖がらず、他の場所で遊びに行きたまえ」

 先ほどの命令口調と異なり、少し棘が抜かれた言葉をかけられたが、俺はその言葉にも反応せず、それ所か言葉を無視して腕組して考えだした。

 いや、別段怖がってなんて無い事は言っておこう。何せ、前世の大人まで育った男として、この世界の現実を知るものとしての納得から来る。

「うん。わかった。しかし、その家には俺もようがある。何せそこは俺の家だから、問答無用に通らせていただく。」

 俺は騎士の言葉を待つ事無く堂々と真正面から家の門に向って歩き出した。

 騎士たちは本の一瞬驚きを見せるがさすが騎士、直ぐに動き出し、家の門が吹き飛んだ。

 騎士たちは巻き添えを組み吹っ飛び、俺は無詠唱で壁の膜を作り一切の傷はない。ついでに言えば、その壁にぶつかる巻き添え騎士は弾かれている。

 しかし、いきなり如何したものかと見ていると一人の男が出てきたのだ。

 その人物を見定めていると見知った顔をした母の第一の崇拝者で父の天敵、宮廷魔導士長が家の敷地から出てきたのだった。しかも、顔が真っ赤で激昂している。

 訳がわからんな。


 (初代大公)

 いや~、今この時はまだ魔力吸収からの記憶徴収なんてしてなかったから全くわからなかったさー。

 しいて言えば、宮廷魔導士長が怒っている理由は母がらみであることくらいはわかったくらいさー。


「我が敬愛する魔法の師であるリリアス様に無礼な口を聞くとは、殺すぞ公爵家の犬っころども!!!」

 


(初代大公)

 マジでそういったんだぜ!



 激昂する宮廷魔導士長が何でここに居るのかはさて置き、公爵家の騎士たちは地面に倒れつつも何とか体勢取る強者二人が剣をひき抜き一触即発な殺気を放ち、戦いの合図を今か今かと待ちわびている雰囲気を出していたのだった。

 その二人の名は、後の公爵家の第四騎士団まである長の名を関する重要人物、シグナル第二騎士団長とアドソン第四騎士団長の二人だったのだ。が、この時はまだシグナルは副団長である。

「・・・っ、きなり・・・・」

「・・・何を・・・する!!」

 二人の騎士は戦場で培ったであろう殺気ある瞳を向ける。

 其処に1人の乱入者が現れた。



(学者達)

「「「いや、あんただろ(初代大公)!!!」」」



 そう、乱入者とは俺のことである。

 俺は、殺気の渦巻く小さな戦場に無遠慮に躍り出る。

 いや本当には踊ってはないからね。

 普通に歩きながら、騎士たちが気が付いていなかったみたいなんだけど俺この騎士団長の二人の間にいただけなんだ。

 それにウチに入りたかったから、帰ろうと思って足を前に出したんだ。

「「!!!」」

 騎士たちは驚いた。

 彼らは今この存在が動くまで其処に人が存在していた事を理解していなかったらしい。

 一瞬の警戒と驚愕したが、直ぐに子供と理解し声を掛けた。

 何故ここに子供が? とは、成っただろうが、今はそれどころではない。に、速射反応で成ったのか、現にこう言って来た。

「! 少年、今ここは危険だ! こちらに来い!! もしくはこの場から逃げろ!!」

 第四期師団長のアドソンが声を上げたが、俺はそれをちらりと見て、目の前の宮廷魔導士長を見る。

 彼も俺を一瞥するが直ぐに騎士達に目を向ける。

 俺はそのまま前に進み、魔導士長の横を通り過ぎ、吹っ飛んだ扉から家に入っていくのだった。

 そして、中からは・・・・・・こんな声が漏れてきた。



「かーさん! ただいまーー!!」真っ先に母を見つけて挨拶する俺


「おかえりー」いつもと変わらないが少し気が立っている母


「一応聞きたいんだけど何があったの!? つーか、父さん顔がとても渋い顔しているよ大丈夫?」

思った事を口にする俺。


「ああ・・・」何か色々複雑そうな父


「てか、外の騎士たちは何? 伯父さんとこの人たちとは家紋が違うよね?」正確性を着く俺。


「・・・・・」まだ渋い顔の父

「あーあれね。あれはお父さんのご実家の騎士たちよ。というか、やっぱり私が出るのが妥当よね!

 ガリアン(宮廷魔導士長=弟子)に庇われていたは、私の名折れよね!」

 戦闘意欲を見せる母に父は渋面をやめて、「ちょっ! おリリアス、何をするつもりっ!」の段階ではもう母は家の扉まで出ていて出て行ってしまった。

 


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