20 黄色い大きな鳥
剣を受け取るカールドを未来の明るい若者に笑顔を向けている俺が居た。
干渉に浸るのは本の数秒でいい。
勢いで告白させたなら、このビックウェーブが平波に戻る前にやらねばならないことを済ませる。
「ところで、我が従士カールド」
「! あっ、は、はい!」
「今後結婚を前提に付き合っている恋人は居るのか?」
その言葉に、アリスは勿論、周りとカールドが、一瞬「はっ?」と成るがカールドだけは直ぐに意識を回帰する。
他のものたちは、あんた何言ってんの? あんたが告白させてたじゃん。である。
「けっ! 結婚の予定があります!!」
「そうか、成らば、婚約祝いと結婚祝いをやる。」
大公を名乗ったリカルドの頭部横辺りから空間を切り裂くようにして三つの袋が出て、空中に浮かんでいる。
その浮かんだ袋はゆっくりとカールドの胸元の前まで行き止まる。
「金貨300枚だ。今は、旧金貨というべきかな? どのような事であれ、我が家臣の不名誉は我の不名誉だ。
妻を娶るなら相手の家族に恥じない式にせよ。」
副音声で『解かるな』と含ませて、今日はいい気分になっている。
だって、周囲のオモシロ顔を見れたんだもん。
金貨300枚という言葉に慄いている。
現世界年収が大体、金貨30~36枚である。
しかも、旧金貨は現金貨との金の含有量が3倍差ある。しかもそこに歴史的価値が加われば少なくとも一枚最低でも15倍はする。
だから、旧金貨300枚と聞き、カールドは固まった。
彼は歴史学者だ。今自分が何を持っているのかちゃんと理解しているのだ。
ゆえに大金を今まで持ったことが無かったせいで動かなくなってしまった。
僅かだが小刻みに震えている。
「ねっ、ねぇ・・・か、カールド。大丈夫?」
カールド未来嫁アリスが突然硬直したカールドに話しかけていた。
その言葉のカールドの反応は、「ふぇっ! フェェェェェ!!!!」で、そのまま腰を抜かして地面に座り込んだ。ふぇって、お前はどっかのゲームの黄色いでかい鳥かよ。
これを見たアリスは驚き、直ぐに俺を睨んできたから、何かを言われる前に答えてやる。
「カールドに渡した支度金は1000年前に当たり前に使っていた金貨で、1枚が現金貨に換算すると3倍の値が付き、歴史的価値が加わると15倍に跳ね上がる金貨だ」
「・・・・っ」
「「「「・・・・っ」」」」
アリスと息を飲む周囲。
つまり、大金だと言う事が解かった。
「さて、カールド」
呼ぶ。
この後も色々しなければならない。
呆けながらも顔だけこちらに向けているカールドに声を掛ける。
「これから、大公の城に行く。
お前も着いて来い」
俺は街の中央に聳え立つ城を見ながら、空間に手を突っ込みある道具を探している。
その道具を掴み、カールドに放り投げた。
おっとっはっ! という様に必死でそれを取るカールドを見、
「それはアイテムバックの簡易版だ。使い方は、腕時計つってもわからんよな。まあ腕にこう巻いて魔力を流す。
すると、つけている者にしか解からないけどその空間に入れたい道具に入れ、もしくは、入れるイメージをすると入り、
逆に出したい時は外に出ろもしくは出るというイメージを持つと出し入れが出来る魔道具だ。」
近寄り、腕時計の構造をしているそれをどうやってつけるのか伝授し、戸惑っている所に手を差し伸べ、使い方を教えてやった。その間も「ほら呆けてねーで、出し入れして、確かめろ。今日中に現大公んとこ行って、その後大棚つぶしに行くんだから」カールドをせかして、現実回帰を促してやった。
「そいつの入る量はそこのパン屋(アリスの家)のお客を接客するスペースの4分の一程度(像が乗って平気といわれる物置より少し大きいくらい)だから、上手く使えよ」




