表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
19/367

19 優しい存在 又は カールド・ドバル・スクア

c


 そこまで言われて、カールドは自身でさえ気がついていなかったのか音を立てて空気を吸い驚いた表情を見せる。

 そして、俺の言ったことを噛み締めるようにゆっくりとうな垂れ、それでもと小さく言葉を吐き出した。

「それでも僕は・・・・」

「彼女を見受ける金が無い。」

 ビクリと首と頭部が反応する。

「彼女を釣り合う容姿じゃない。」

 顔がこちらを向いた。

「彼女を幸せに暮らせるだけの仕事には就いていない」

 俺と視線が合った。

「子供の頃から運動もからきし、得意な事も何も無い。いい所なんて何も無い」

 その目に涙ではないが潤みを蓄え始める。また、歯を食いしばる。

 ああ、無性に悔しいんだろうね。わかるよ。でもね・・・・、

「だから、自分に自信が持てない。だから、好きな子を幸せにする自信が無いから、その子を好きになっては、なら・・・・」

「そんな事はありません!! そんな事は絶対、ありません!!!」

 くぅぅぅと辛そうに泣きそうになろうとしそうな所、周囲にアリスの声が響いた。

 アリスは俺の前に立ちはだかり俺と対峙した。

「ふん。情けないな」

 俺は子孫に向けて呟いた。が、そんな事と色々隠し考えていると傑女が口を開いた。

「彼は情けなくないわ! あなたが彼の何をわかっているというの!?」

 いい加減蚊帳の外であったが好きな人が苛められるのにいらだったのかアリス嬢は手を拡げカールドを庇うように立ち俺と相対する。

 だけど俺は言わねばならぬことがあるからいうのだ。

「カールド。戦場で女は戦わない。女を連れて戦に出る事はない。

 何故か知っているか? 

 戦に負け、捕らえられた女は敵の捕虜と成り慰み者にされる。惚れてもいない男のな!

これは戦に負けても同様のことになる。

故に自らの妻・娘・親族・友(女)がそのような目に合わない為に男が戦に出るのだ。

 そして必ず勝つんだ。勝たねばならんのだ。彼女らを守るのが俺ら(男達)の役目なんだがな」

「あ、あなた! 私を無視するつもり!!」

「カールド後、2つだけ言う。それでわからないならお前はその程度だ。全て諦めろ。」

 弱虫が! はつけない。どうも、俺が何かいいたい事があるということがわかったみたいだから、それが行動に現れている。

 カールドはゆっくり顔を上げ、体制を立て直し、ゆっくりと顔を上げたときと同様にゆっくりと幽鬼のように立ち上がったのだ。

 でも、それに気がつかないアリス嬢は激オコプンプン丸してる。

「なっ! 男の癖に女と向き合うのが怖いの!! それとも女だからって馬鹿にしてるの!!」

 うん。この傑女・・・いや、女傑か。女傑だわ、マジスゲー、この勝ち気感レインの子孫だけあるわ~。

 だって、俺が無視していると喋りながら俺に迫力ある一歩を見せてきてくれる。

 でも、その一歩もそこまでなんだよ。アリス嬢。ほら、今日の主役が来たよ。

 薄っすらと笑っていると思われる俺の顔に苛立ちを覚えるのかアリス嬢は口を開こうとした。開こうとして腕を引く存在に気がついた。

 それなりに強く引いたのか勢いに引かれカールドの胸の中にアリスがすっぽりと納まった。

 カールドは彼女を抱きしめ彼女の耳元で何かを喋る。

 それを見ていたアリス父は声を上げて怒ろうとするが俺の殺気込み(邪魔すんな!)の睨みで黙らせておく。

 黙らせている間に複雑そうな瞳を俺に向けてお互いに黙って向き合った。

 回りには不倶戴天の敵のような雰囲気をかもし出しているが、事実は俺の無詠唱魔法が彼の耳にある言葉を届けている。

『遅いわ、ドあほう! 口を開くなよ。何かしてるってばれるからな』

 さてと、

「カールド。男だったら男らしくお前の勇気を見せてみろ!! 先ほど言ったろ、稀に貴族がオモシロ半分で騎士に取り上げると。

 お前の告白をたまたま通った貴族が見てくれるかもしれない。まぁ、お前見たいなのは騎士は無理だけど。(いや、マジで。手駒が一応欲しかったから頑張ったら上げ様と思ったのにこいつテンでヘタレな上に頭良くないみたいで困ったよ)」

 カールドはコクリと頷く。

 どーも、俺がどうにかをしてくれると言う事だけは理解したみたいだ。

「もう一つ。

覚えておけ。幸運の女神様っているのは必死にあがき、もがいた者の前にしか現れない。

 それは時の運も関係するが、何より諦めないものの前に現れるものだ」

 わかったな! と目で教え込む。どちらかというと女神は俺なんだけどね、それわかってんのかね?

 まっあぁ、告白相手も女神っちゃー女神ではあろうよ、カールドにとっては。まっ様子見しようか皆でね。そっ、回りの野次馬と一緒にね。

 奴は、先程よりも複雑そうな視線で俺を見て、俺にだけわかるように頷いて見せた。

『カールド、お前は自身に自信がない事は知っている。それはガキの頃からの劣等感なんだろうけどな。俺はここ数日お前を見ていたよ。

 それでわかったことも有る。お前はとても我慢(根気)強い子だ。そして、物事に物怖じしない芯の強さも持っている。

 彼女から魔力を貰う際に記憶読み取った中でのお前は5歳児のアリスを背に守りながら狂犬に武器を持って立ち向かっている姿や他の男達と違い動植物に優しい一面とか色々見れるぞ。

 さて、そんな彼女にお前はどうするんだ! 俺がいいたい事わかるよなっ。ここまでお膳立てしてヘタるなら、もう知らないんだからね!』

 一応ダメ押しで耳元に囁きを入れて、ニヤリと笑って見てやると奴は嬉しそうな恥ずかしそうな顔をすぐさま両手で覆い身震いしていて気持ちが悪かった。ほんとこの子孫気持ちワル。

 それでもカールドは、手を覆いながらもその場で「良し」と覚悟を決めたのか声を出した。

 カールドの様子に怪訝そうに見て、俺を睨んでいたアリス嬢は突然振り返ったリカルドに驚いているみたいだ。

 彼女からしたら、いつもの気さくで優しいカールドではなく、益荒男な表情と気迫をしたカールドだったからだろう。これ、鼻荒くしていたら、若干変態臭くなるよねーとか思いながらその光景を想像。吹き出しうになりました!

「アリス聞いて欲しいことがある!!!」

 高らかにこの当り一帯に響く声ついでに反響も少ししている。

 その声にアリスはドキッと身体と心を弾ませている。のが、俺には逐一わかる。ドキドキワクワク。ラブ米万歳!(コメはワザとだよ~)

「俺は君の事が好きだーーーー!!!! 愛している!!!! 今更だが、俺のお嫁さんに成ってください!!!!!!!」

「っ・・・・・・ホント・・・・今さらだよ~~~~・・・・・・・・」

 ゆっくりとカールドの言葉が浸透し、ゆっくりと手を口に持って行き、瞳を涙で潤ませて嬉の感情と感動を見せている。

 ついでに俺はこの場に現在するために回りから僅かに魔力を勝手に頂いている。

 ホクホク。

 目の鑑賞にもホクホク。

 若い幼馴染の二人が感動の再開のように抱き合っているではありませんか! 回りからもまばらに拍手が聞こえてくる。しかし、その拍手の音は少しずつ回りが理解すると同時に大きくなっていくのだった。


 が、そんなときだった。

「そ、そんな事許されるわけ無いだろ!!」

 とある方向から聞こえてくる。

 オトンや。アリスのオトンやった。

 


 感動さることながら怒れる親父がただ1人。

 はいっ! アリスのオトンです。大切な事ではないけれどもう一度言いましょう。俺の傍系子孫、アリスのオトンや。名前とかは別にいいよな・・・・。

 今回は、アリスのオトンが激オコプンプン丸化している。

 それに対して、気分を害した貴族のように、俺はおっさん(傍系子孫)に一睨みかましておく。

 おっさんは本の一瞬怯むが、先ほどとは違い勢いが違うのか、喚き散らしながら俺に近づいてくる。

「うぐっ・・・・っ、ふ、ふざけるな! 貴様、こっちが黙っていれば、そいつ(カールド)をそそのかすような事を言って、我が家を破産させるつもりか! 娘の結婚はこの話より前に決っていたし、何より・・・・・・・」

 始終喚くかと思いきや終わりの方は、勢いを落として顔を背けるが、俺の顔から30cmのところでその行動はしないで欲しい。正直可愛くない。

「金のことだろうけど、最後まで見てろ。後、娘はカールドにやれ、お前が嫁がせようとしている大店おおだな、犯罪ごとしているから、見つかり次第一家郎党死罪になるぞ。娘を無駄殺しさせたくはないだろ」

 俺は淡々と知っている事を吐き出す俺に、アリス父は、ゆっくり顔を上げて、何処から仕入れたかはわからない情報に、疑問と疑いの篭った声を漏らし見てくる。

「・・・・えっ・・・・?」

 アリス父はこんな感じで、俺を見てきたが、アリスならびにカールドも、

「・・・・えっ・・・・・本当に?」

「! ・・・・・・・・・・・・・・」

 それぞれに反応する。


 まっ、それはさて置き、カールドだな。

 俺は、ハキハキした声でカールドを呼んだ。

 カールドはビクッと身体を一瞬怖がらせ俺を見た。

 ついでにどうでもいいことだが、カールドガ身体を怖がらせると連鎖反応的にアリスは驚いていた。どうでもいいな。

 俺は仲の良い新婚を見、近づく。

 アリスがカールドを守ろうとするのが凄いと思う。マジ女傑なっ。

 でも、アリスの腕を掴み引き止めるカールドにアリスは一度カールドを見つめ頷いて下がった。

 全く見せ付けてくれるねー、これだから若者には困るよ。なんて、軽口思いながら、カールドに指図する。

「カールド、そこに跪け!」

 カールドは大人しく俺の指示に従う。

 アリスもおっさんも目をまん丸にして見ている。

 回りの野次馬達も、あれだけ殴られたのに殴った奴の言う事を聞くこいつに意味がわからないみたいだ。

 俺は左腕を軽く外に向け開く、音も無く手の中に一振りの剣が現れる。

 周囲はその光景にざわつくが、俺とカールドは一切関知しない。

 儀式のような所作で淡々と物事は進む。俺は左手に出現させた剣をひき抜き、刀身を出す。

 刀身は青く輝き、青く輝く刀剣の意味を回りが理解する。

 魔法剣である。

 魔法剣の存在は今現在、知られているだけで5891であり、時代が進むごとにその数を減らしている古代兵器と言われ、また歴史的文化財としての価値が高い代物である。

 そんなものを如何するのか? それで試し切りの可能性が一番高いが、その素振りがない。

 回りの野次馬たちはその後をどうなるのか、食い入るように視線が注がれる。

 そして、堂々とした男は無言に魔法剣の腹でカールドの左肩を一度、右肩を一度ずつ叩き、剣を鞘にしまう。

 この意味が何を意味するか、すう瞬のときを要する回りのものだが、一切誰も口を開かない。

 目の前の僅かな金髪と大部分の赤髪を生やした若者を期待する瞳で見る。次の言葉を期待して。

 俺は鞘に締まった剣をカールドに差出、言う。

「いい覚悟(勇気=度胸=若さ)だった。チャンスを掴んだ事を褒めてやろう。

 だが! 騎士には叙勲してやれない! とういかしたくないっ!」

 ・・・・・・・・・・・ええっ!! と回りがざわつく。

 カールドも思わずといったように瞳を開き、俺を見てくる。如何するつもりか? 聞いてくる。

「おカールド、自分が騎士の身分背丈にあっていると思うか?」

「・・・・・」

 俺の言葉を苦悶な表情で無言に答えるが、それが正解である。

 ちゃんと自身の身の丈を理解はしている。だからこそ、言葉は紡がれる。

「だから、従士の身分をやる・・・・・・『俺は手駒が欲しいが使えない駒は要らないんだ。言っている意味わかるな? 本気で答えろよ。』・・・。

 お前に取れる道は一つしかないがあえて聞こう。

これから言う事を良く聞き答えよ。

 

 これより三年の歳月を使い、お前に一人前の騎士とする。その中には作法、武技(剣術・馬術・体術など)、法技(魔法・法律)、を叩き込む。

 正直辛いぞ! きついし、俺は鍛える時一切容赦はしない。

 

 もし、お前に騎士として貴族として男として覚悟があるなら  この剣を取れ  」

 カールドは解かっていた。

 自分に明確な後ろ盾がないことに。そのせいで今の仕事をするのに非常に苦労をした。

 カールドは解かっていた。

 自分に人を守れるだけの根本的な力(技)が無い事に。愛するものを守る力(金も権力も知識も武)が無い事を。

 カールドは解かっていた。

 この問いの答え次第で、全てを諦めるか、全てを掴む為に命を掛けれるかを問うものであることに、カールドでもそのぐらいは解からなければならないものであり、自身に直結する、最大の選択で恐らく二度と自身に訪れない幸運である事に、だからこそカールドはその手を前に差し出し、両の手で受け取った。

「命を懸けて!」

 その真摯なまなこを見て、俺は頬を釣り上げ笑って言う。


「この場にいる全ての者を証人とし宣言する。

初代エルハルム大公 リカルド・シン・ドバル・エルハルムの名において、この者カールドを私の直属の家臣で従士とすることを宣言する。

また、カールドに姓を使わす。我が従士であることを証明とする為にドバルをミドルネームとし従士を意味するスクアを姓とする。


カールドよ!  今この時より、【カールド・ドバル・スクア】を名乗れ!!」


「謹んで、拝命(名)致します!」

 俺は剣から手を離し、それを見届けたカールドは腹から声を出し、答えを返した。


来週はありません。次は6月の第二土曜

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ