16 若学者
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彼は幾つも真っ直ぐ伸びる魔法灯の下を道行く人に当らないように帰路に付こうとしている。
その彼は深い溜息を吐く。
とてもとても、疲れていた。
どう疲れているのかというと精神的に直ぐにでも色々と零れ落ちそうになる程、心から疲れる出来事が今さっきあった。
彼は、溜息を吐くといつも帰りによる公都でも幾つもある無名だが、美味いパン屋に体が向いていた。
ほぼほぼ、習慣的な行動ゆえパン屋の目の前で止まり、ふと気がつく。
「あっ!?」
思わず驚いてしまった。
そして、ふと可笑しくなり笑っていた。
週間的行動とは時として、怖いな。とポジティブに思い笑っていた。
「いらっしゃいませ! 今日はどのようなものをお求めでしょうか?」
カランカラン! とベルの音を鳴らしながら、軽い足取りで生き生きした優しい瞳をした女性が微笑んでくる。
「や、やぁ・・・アリス、き、昨日ぶりだね?」
疲れた顔を上げ、声をかけられたほうを向くと、この無名だが美味いパン屋の看板娘アリスが、ニコニコとして俺に話しかけてくれていた。まあ、常連だから常連を大事にと言う観点から話かけてきたという点は否定出来ないが、それはちょっと、寂しい・・・・ゲフンゲフン、なんでもない忘れてくれ。
「そうね。カールド、昨日振りね。それで今日は如何する?」
彼女の頬は僅かに朱に染まり、優しい微笑が俺の心を癒してくれる。
彼女の微笑みは俺の癒しであり、生きる力といっても過言ではない。
「今日のお勧めは、何が・・・あるんだ?」
俺はいつの頃か彼女と話そうとするとぶっきら棒に成ってしまった。
彼女はそれを余り気にせず、クスクスと嬉しそうに笑い「待ってて!」と嬉しそうにお店に入っていく。
「ふぅー」と疲れとは別に溜息を吐いてしまった。
ふと空を見上げて気がつく、斑雲を夕日が染めて、「ほー」っと息を吐いた。
この時の俺は、ああ、いつの間にか今日も終わるのか・・・。そうして、いつもの現実に、普段の日常を取り戻してくれるような、ふとした感動を覚えたのだ。
「カールド!」
空を見上げていると、耳にベルの音が聞こえた。
ベルの方を見ると、笑顔の幼馴染が腕に袋を抱えて居た。
そして、袋を俺に渡しながら俺の後ろを見て、とんでもないことを口にしたのだ。
「今日はお客さんもいるみたいだから、少し多めに入れておいたよ、ハイ!」
そう、彼は疲れているのではない。憑かれているのだ。
*幽霊は人間に取り付くと、人の生気(精気)を吸収し力を得る。
初代大公は、図書館で利用者から利用料として魔力を貰ってます。
時として、人に着いて行くことや突然現れたりします。((^.^))
若学者事カールドは首がロボットのように、ギギギギギと動き後ろを向く。
そして、見る。
「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあああああああああああああああ!!!!!!!!」
子孫は目の前のパンを持った少女がいるのを覚えていないのか、俺から逃げるように足を前に進め、彼女を押し倒すように彼女を抱えて倒れた。しいて言おうここにラッキースケベは無かった。
勿論俺は、怪我の無いように魔法を無詠唱で唱え、倒れた先に空気のクッションを作り、怪我の防止をしてやる。が、思ったことをいう。
「失礼じゃね? 俺に!」
初代大公事、実態のあるリカルドさんは言ってみた。




