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災厄少女は何を思ふ

思いのほかエグくなりました……


あ、でも出番あげたよ(ニッコリ)


災厄少女「」


オルト「あと数話で助けるから……」



 いつからだろう、こんなことになったのは。


 目を開けても閉じても変わらない程暗く、ボロボロのワンルームで何度も同じ事を考える。


 私にあるのはお母さんの記憶と温もり。その二つのことを失いたくないがために生きている。




 私の生きる意味は、ただ、それだけ。



「私はどうしてここにいるの?」


 その問いに答える者はおらず、ただ彼女の一室の空気を震えさせただけだった。



 部屋の隅で両手で膝を抱えながら座り込んで考える。自分にかけられた言葉の意味を。


「忌み子」「不幸を呼ぶ子供」「災厄少女」



 幾ら考えても言葉の意味なんてわかるわけがない。たとえ忌み嫌われているとしても、救いが欲しい……


「誰か……誰か助けて…………」


 その小さな呟きは誰にも届くことはなかった。









 私にはお母さんがいた。たった一人の肉親であり、私をいつも守ってくれる。優しくてかっこいいお母さんだった。




 いつも一緒にいてくれた、傍にいてくれたお母さん。


 私が泣いた時も、我が儘を言った時も優しく抱きしめてくれたお母さん。



 ……もう会えなくなってしまった私のお母さん。






 私の種族は「ディザストロ」というらしい。お母さんが言っていた。


 人間に分類されるけど、色々な種族から嫌われていると教わった。



 ディザストロの特徴は白髪赤目。だからお母さんはいつも大きなコートを着て外に出ていた。



 お母さんの顔や身体が青くなってしまっていることも少なくなかった。ーーー暴力を振るわれた。つまり、種族が周囲に知られてしまったら 、それが『引越し』の合図だった。



 色々な所に行って、色々な罵倒を受けた。

 幼い私にはわからなかったけど、ひどい言葉がかけられて、暴力を振るわれたこともあった。



 お母さんはいつも私に言っていたことがある。


 その多くは「謝罪」だった。



「ごめんなさい」と何度も聞いた。「私が親でごめんね」と何度も涙を見た。


「私のせいで迫害を受けさせてごめんね」なんて言わないで欲しかった。


 私は、お母さんが大好きだから。








 私が最後にお母さんと話したのは私が五つの時だった。


 やせ細ったお母さんが「ご飯、買ってくるわ。いい子で待っててね」という言葉と共に、頭を優しく撫でられた。


 立っているだけでも辛いであっただろうけど、私には止めることなんてできなかった。


 お腹が減っていたから。生きたいから。また無事でお母さんが帰ってくると思っていたから。


 でも、お母さんは帰ってこなかった。


 待っても待っても、帰ってこなかった。



 日が昇り、昼になって、夕方に差し掛かった時、私達が暮らしていた小屋に人が来て、ドアを蹴破られた。


「誰!?」なんていう前に、私は強く地面に押し付けられた。


 来た人達は見知らぬガラの悪い男達で、唾を吐き捨てながらこう言っていた。


「なんで俺がこんな糞ガキを保護しなきゃなんねぇんだよ」


「仕方がないだろう。村の評判のためだ」


「そうなんだけどよ。あんなディザストロの年増の口約束とこんな端金で、ディザストロの子供を引き取るとか馬鹿みてぇじゃん」


「だからこそ、だ。我々は『お優しい』からな。たとえディザストロの子供であっても、たとえ端金であっても、力になってやるんだよ」


「全ては評判のために……か。さっすがだぜ!アニキ!」


 評判?村のため?わけがわからない。それよりお母さんがどこにいるのかを知っているのなら教えて下さい!


 そう言おうとしても押し付けられ、衰弱仕切った私には力なく「カヒュー……カヒュー」と息が漏れるだけだった。


「で、こいつはどうするんで?アニキ」


 急に胸ぐらを掴まれる。息が苦しくなって咳き込むと顔を殴られた。


「つったくうるせえよ。おい、目隠しと縛るための縄もってこいよ。あと麻袋だ」


「わかりました!アニキ!」


 一方の男が外に走り去っていく。アニキと言われた男が近づいてきて、私の髪を掴んで持ち上げた。髪がぶちぶちと痛みと共に抜けていく。


「……お前らって本当に面倒でウザったい種族だよな。存在してるだけで周囲を不幸にしていく。おまけに自覚なしってとこもな」


 周囲を不幸に……?


「ほら、周囲を不幸にする能力はディザストロ同士では機能しない、だから自覚がない。よく出来た種族だな。」


「…………」


「そうやって他種族を不幸にして満足か?」


「…………」


「……はっ、哀れだな。精々村の評判を上げるために鳥籠の中の少女となってくれ」


 そう男が言ったと同時にもう一人の男が帰ってきた。


 目隠しをつけられ、縄で縛られた直後、私の首筋に鋭い痛みが走り……


 私はそこで意識を失った。







 私はこの日、お母さんと自由を奪われたのだ 。




次回はオルト視点に戻ります



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