子供たちと顔合わせ
遅れてすみません
今、現実が忙しいので執筆が遅れております
オルト「いや、言い訳だろ。 自分に厳しくな?」
……ゴフッ(吐血)
時刻は正午過ぎあたり。
夏の残暑がまだ残る晴天の下、私はメレナさんに手を引かれながら教会の中庭にやってきた。
窓から見たように、広い。緑の芝生が何処までも続いていくような錯覚を感じる程だ。
その中をメレナさんと歩いて行く。どうやら彼女は私と話たかったものの上手くいかずにズルズルと月日を過ごしてしまったらしく、歩いている間はずっと話していた。
時間をかけてしまった理由は 、彼女は所謂「見習い」シスターらしく、初めての教育担当児で精神が成人している人、つまり私であったためにマニュアルとは大きく違ったからだそう。
……初担当者児が私ですまなかった。常識外れの超変化球だろうに。
「うふふ、オルトちゃんは考えて事をしているんですか?」
まあ、彼女が話せるようになったのは良い事だろう。
さて、歩き続けて中庭の外れまで来ると、一本の木が目立つ広場に到着した。
「見て、オルトちゃん。あれは」
少し目を凝らすと中庭にある木に黄色い果実が生っているのが見える。と、の木の下で手を振っている人がいるのが見えた。
そこには、メレナさんよりも少し年下くらいの茶髪シスターと4人の子供たちがいた。
あれ、4人なのね。同年代の子が二人と聞いていたんだが?
「いやー、急な呼び出しすまなかったっす。うちの五歳二人がオルトちゃんに会いたいって聞かなくて」
「いいえ、大丈夫ですよ。クララ先輩。ほらオルトちゃん、ご挨拶して」
クララ先輩……あ、メレナさんは見習いシスターだったな。
メレナさんの言葉に続いて、私は「はい」と言う。そして一呼吸置いて
「はじめまして、シスター・クララ。私はオルトと申します」そう言って頭を下げた。
……?返答がない。ふっと頭を上げるとクララさんの顔が驚愕の一色に染まっていた。
「あ……そっそうっすね。はじめまして、オルトちゃん。これからどうぞよろしゅうな……」
そこまで言うと、クララさんは後ろからメレナさんに抱きつくように羽交い締めにした。
「えっ!?ちょ、クララ先輩!?」
「悪いな。オルトちゃん、こいつ借りてくで」
そう言いながらクララさんはメレナさんを羽交い締めにしながら木から遠ざかっていった。
なんか「しゃーオラ、聞きたいこと山ほどあるからな〜」とか聞こえてくるんですけど。
……にしてもやばい。クララさんの行動が早すぎて何も反応出来なかった。と言うかシスターがいなかったら子供たちどうするんだよ。
遠ざかっていくシスター達から視線を外すと、予想通り何をすればいいかわからないというように子供たち4人が棒立ちで突っ立ていた。
……あーうん。私が仕切れと。
さーてどうしようか。目の前にいる棒立ちの少年達を見ながら考える……までもないよね。初対面の人には挨拶から入る。社会人として当たり前の事をしよう。
まあ相手社会人じゃないけど変わらないでしょう。
「こんにちは、はじめまして。私はオルトと言います」
笑顔で話しかけると彼らはちゃんと応じて挨拶を返してくれた。
「こんにちは!オ、オルトちゃん?だっけ?ええと、俺はガイア。よろしくな!」
おっおう。流石は五歳児だ、凄いハキハキ喋るな。ガイア君か、短く切ったオレンジ色の髪が特徴的な子だな。
「ほら、お前もオルトちゃんに挨拶しろよ!」
「ええ、ぼ、僕はいいよ」
ん?なんかガイア君とその後ろにいる子がじゃれあってる……わけではないよな。恥ずかしがり屋さんなのだろう。
そういう子へ私がする行動って一択なんだよね。
私はガイア君の後ろに隠れていた子へ歩いて近づいた。隠れようとした子の腕を掴み目線を合わせる。
そして「こんにちは」と声をかけた。
所謂ゴリ押しだ。でも事実一番手っ取り早いんだよね。うん、そんな方法だったから隠れてた子すっごい驚いてるわ。ごめんね。
それでもその子は腹を決めたのかしっかり目を向けてくれた。
……そんな覚悟しなくてもいいのになぁ。
「は、はじめまして。僕はサルフと言います。よ、よろしくおねがいしますっ」
サルフ君、ね。柔らかい目してて優しい子なんだろうね。少し長く伸ばした薄緑の髪と背中にある白い翼が特徴的で……翼?
私の視線に気づいたようで、彼は翼を小さく動かしながら
「気になりますよね。これ。僕、実は天翼族らしい……そうなんですよ」
天翼族、珍しいな。高山などで暮らしているため人間が住むような場所にはいないと思っていたのだが違ったようだ。
いや、らしい?
「ねえ、『らしい』って?」
「……僕は両親を知りません。小さい時に引き取られて、気がつけばここで生活していた。それに、僕はこの翼を使って空を飛べません。だから、僕には天翼族って自覚はないんです。」
そう言ってサルフ君は自分の白い翼に手を当てた。私を含む子供たちにはその仕草の意味はわからなかった。ただ、彼の翼が彼自身を示す印であるというように、翼は日の光を受けて白く、輝いていた。
「っとまあ!サルフはこんな奴だなんだ。」
しんみりとした空気を打ち切ったのはガイア君だった。彼の性格に助けられてしまったな。
「あっ……ごめん……なさい。変な事を喋ってしまって」
「大丈夫よ。サルフ君のこと、知れてよかったわ」
そう言ってにこりと笑うと、サルフ君とガイア君は私につられて笑った。やっぱり笑顔は子供を相手にする時には大切だな。
「……あっ」
ガイア君が気の抜けた声を出した。
彼の視線に合わせるように私とサルフ君は顔を向けるとそこには
「…………」
棒立ちをやめて地面に座り込んで土いじりしている二人の子供がいた。
「ご、ごめんね。ソール君、アクラ君」
サルフ君が二人を慰めに行ってくれた。ありがとう、サルフ君。
そしてごめん、ソール君とアクラ君。悪いけど完全に放置してた。
「サルフお兄ちゃん、遅い」
不機嫌な様子の子に対してサルフ君は頭を下げながら謝っている。
「本当にごめんね。えーっと、紹介するね。耳が長い方……つまりエルフの子がアクラ君」
エルフ……確かに耳長族と言われるだけあって耳が長い。それに、丸めの三角形のようにとんがっている。
にしても終始むすっとしてる。放置は悪かったよ。謝る。だから機嫌を直してくれ。
続くようにして、ガイア君がもう一人の子の肩に手を乗せつつ話した。
「もう一人の方は、俺の弟のグランだ」
「…………」
兄のガイア君と同じオレンジの髪。いや、グラン君の方が少し暗めかな。にしてもあー、目が合わないな。人見知りなのかね。
どうにかコンタクトが取りたいな、なんて考えをかき消すように、ガイア君が大声を出した。
「グラン!オルトちゃんに挨拶しろ!」
「……っ!…………グラン……ですっ」
ガイア君が急に呼びかけたせいだろう。グラン君は驚きと恐怖を隠すように小さな声を出した。
「もー!いつもグランは声が小さいんだよね!そんなんじゃ聞こえないよ!」
「………………」
……おいおいお兄ちゃんや、それはダメだろうに。なんでもお前中心じゃないんだよ。
元気旺盛すぎるお兄ちゃんに過去が重い天翼族の子。
兄に左右されている弟に不機嫌エルフ。
大丈夫なのかね?これ。
…………あっれ?二歳児、全然しゃべらないんだけど。
私の喋り方、超不自然なんじゃないか?
あーーやってしまったよ。今生涯中一番のミスな気がする。
ーーーー
[クララ視点]
さーて、うちの可愛い後輩ちゃんを羽交い締めにしつつ質問タイムに入るで。
子供たちからは結構距離とったから多分聞かれんやろ。
「ぐうぅ、何ですかクララ先輩?」
苦しそうにしとるけど無視や。
「メレナ、あんたが担当してる子、いくつやったっけ?」
「二歳です」
「マジでか?」
その言葉の返答はなくあったのは……
(なんでこいつこんなあっけらかんとしとるん?)
まるで「何をそんな思い詰める事があるんですか」と言わんばかりのメレナの顔であった。
呆れながら
「あのさあ、オルトちゃんになんか教えたか?例えば、先輩に自分の努力を認めて貰いたいから挨拶を教えたとか」
と尋ねると
「いえ?特に何も。」
と帰ってきた。
……神父様が言っていた天才児とかも眉唾物だったけどあながち本当かもしれんな。
曰く、「礼儀作法が完璧」「学習意欲があり、すぐに様々な事を吸収していく」などなど……
幼くして天才、か。おとぎ話の「黒髪の英雄」の生まれ変わりみたいやな。彼女は。
「先輩……そろそろ離してくださ「ダメやで」
今はいじろう、うちの後輩ちゃんを。天才の相手ができないという少しの嫉妬と後輩への親しみを込めて
次回 災厄少女の話をちょっとやります
タイトル詐欺を早く返上せねば……
災厄少女「自覚あるんじゃないですか……投稿はよ」