プロローグ
はじめまして。にょろたろと申します。
処女作です。生暖かい目でご覧ください。
「はあっ……はあっ……」
静寂に包まれた部屋の中、俺の激しい呼吸だけが反響していた。
某国の国家重要人物が匿われていたという廃墟、その地下最深部。
きらびやかな装飾品は無惨に破壊され、床や壁に刻まれた銃弾の後がここで起きた惨状を表していた。
そして、血によって真っ赤に染まった……
ーーーー国家重要人物及びその護衛の死体。
死体には無数の銃創があり、もはや生存は期待できないだろうと容易に想像できる。
そして俺も、その惨状にふさわしい状態だった。
細かい銃創と腿から消え失せた右足、そして脇腹から突き抜けていった銃弾。
脇腹から流れていく出血を無意識に手で抑えながら俺は一人で笑った。
その笑いが作戦成功からのものなのか、自分の死が近づいているからくるものなのか……
それは俺にも、わからなかった。
こんな状態の俺にできることと言えば走馬灯のように過去を思い出すことと、血塗れの腕に抱いた爆弾を起動させるくらいだった……
ーーーー
俺の両親は優秀な軍人だった。
上からの命令でよく世界各国に飛び回っていたことが多く、俺の傍にいた時間は短かった。
で、久々に帰ってきたと思えばーーー幼い子供にやるものではないほどのーーー軍事訓練を俺に施した。
同年代の子も同じような生活をしていると思っていたため、俺にとっては軍事訓練は普通のことであった。
また、軍隊駐屯地が家、たくさんの軍人が親代わりをしてくれたから、小さい頃はずっと訓練をさせられていたたな。
学校には行っていたものの、元々人付き合いがド下手だったために小中学校共に友達の一人もできなかった。
……まぁ、人付き合いについては元々生活環境が特殊だったし、学習については軍隊の人に教えてもらったりしたから問題はなかったんだよな。
中学卒業後には正式に軍に所属した。
高校以降の勉強も色々な人から学び、成人してからは親と同じ部隊に配属され、世界中を飛び回った。
その頃には銃器の扱いは勿論、近接格闘、ヘリや戦車の操縦、手榴弾の製造法などの幅広い知識と技術を得ていた。
そんな『軍にとって最も理想的な人材』となった俺を親や仲間は「誇らしい」と言ってくれたことが、何よりも嬉しくーーーー
ーーーーその言葉を言い訳に、沢山の人を殺していった。
それが理由で、俺は親しい人が死んでいくのを怖がった。
……だって自分のしている行為を「認めて」くれる人が減っていってしまうから。
結局、ある決死の作戦で両親や仲間が大勢死んだ時、俺の心は壊れた。
俺に残された方法は、心を捨てて、軍の傀儡人形になること……それだけだった。
だが、心を捨てることなど出来はしなかった。
そんなことをすればきっと、俺の中の「なにか」が壊れてしまうと思ったから。
世界中で活動を続けて数年、俺は仲間や助けた人達からは「英雄」と、敵からは「死神」と言われていった。
救ってきた子供たちの笑顔がなによりの励ましであり、「子供たちの笑顔を守るため」という言い分を勝手に作り出して任務にあたっていた。
そうやって少しずつ、軍部の無謀な作戦に参加していった…
子供たちの笑顔に繋がることを信じて……
ーーーー
記憶を思い出す度に、少しずつ視界が暗くなっていく。
無謀な作戦で生き残り続けたという「幸運」だったのか「不幸」だったのか、俺にはもうわからない。
ただ、最期に、子供たちの笑顔が、慰めになったな……
そして俺は、爆弾を起動させた。