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破棄系

勝手に殺しちゃ嫌よ

作者:アロエ


雲一つない青空、というのを私達は一体どれくらい見ていないだろうか。


どんよりと立ち込める黒い雲は今にも雷を天から地へ落とすのではないかというように不穏に光り、ゴロゴロと腹の奥に響く嫌な音を轟かせる。


こんな天候が続くなんて今までなかった。


普段であれば外で元気よく遊ぶ市井の子らも怯えて家に引きこもり、その家族らもいつ戻るとも知れぬ日の光に不安な日々を送っている。


老いたものはなんらかの事が神の怒りを買い、それにより大いなる災禍が目前に迫っているのではと地に膝をつき、各々が信仰する神に祈りを捧げた。


そんな中、この国に古くから携わってきたある名家のご令嬢の処刑が行われた。


曰く、公爵家の名を振りかざし無辜の民を迫害し、死に追いやらんとしたのだと。


それが本当ならば許されぬ事だ。しかしその令嬢の生家は清く正しく曲がった事が大嫌いという清廉なる当主が納めてきた家である。


件の令嬢もまた国一番の淑女、才媛なる女性として名を馳せていた。


当然疑問を抱くものも多かった。がしかしそれは恋愛の内に起こった嫉妬や妬みなどが原因であるとどこからともなく流れだした。


懐疑の念は晴れず、また何者かに令嬢は嵌められたのだとの暗い噂が貴族、民の間にも流れたが何の力も持たない私達に何ができようか。


結局、令嬢の罪は罪として処理をなされ、処刑の日は変わる事もなく滞りなく行われた。


その直後だ。


天から稲光が落ち、バチバチと光を纏いながら言葉には言い表せないほど美しい女が、さも今稲妻とともに舞い降りたというように処刑場に現れたのは。


女は驚きに固まる一同に視線をやらず絞首刑となって宙にぶらり吊された元令嬢に一心に視線を向け口を開いた。


『あらぁ……私のお気に入りの娘が死んでしまっているわ。何故かしら、何故かしら?護りの術は腹に宿る前にかけたのに。私の寵愛の印も臍の下につけておいたのに。何故かしら?何故かしら』


頻りに首を傾げながら何故を繰り返す彼女はやがてゆらりと王族、貴族達へとその眼差しを向けた。


その太陽と同じ色の煌めく虹彩に映った者ら、王子に宰相の子息に次期騎士団長候補の男に魔術師の卵。そして彼女を何か恐ろしいものでも見るようにして見る、平々凡々とした特に特徴といったものもないような少女。


ただただその瞳で見ただけで彼女はそれらのもの達が処刑された令嬢を嵌めた謂わば元凶達だと感じ取った。


そして感嘆の声をあげるように溜め息混じりに言う。


『……ああ、そう。そうなのね。貴方達が私のお気に入りの娘の加護を妨害し、この娘を死に追いやった。いやだわ、いやだわ。私ったらこんな卑しい奴らにまで恩恵を与えていただなんて。気分が悪いわ、気分が悪いわ』


全て返して貰いましょう、と女が右の手をあげ人差し指を天に向け振るとひゅるりと音がし、風が巻き起こり、一瞬にして霧散した。


次の瞬間、処刑場より遠い位置にあるはずの王城が轟音と共にガラガラと崩れ潰えた。



そして城下にも恐ろしい事象が起きた。


ぐらぐらと大地が揺れ収穫を目前にした作物が次々枯れていった。漸く芽を出し始めたものもまだ発育不足の作物も同様に。


作物だけではない。森に生えた木ですら次々に枯れていき、獣が何かに怯え逃げ出すように国から離れていく。


檻に入れられた家畜や柵の中の家畜も一斉に騒ぎ立てた。


街では大地に亀裂が走り、幾人かの人々がそのどの位深いかもわからぬ奈落の底へと落ちていった。



国中、騒然となる中王や王妃が女に向かって声をあげた。


貴様は何者なのか、一体何をしたというのか。


その問いとけしかけられた兵に彼女は眉を顰めたが素直に口を開いた。


『いやだわいやだわ、私が誰かもわからないなんて。なんて無礼で無知で恥知らずなんでしょう。私はセテラネーデ。この世界を司る神々の内の一人にして創造神様の十六番目の娘。貴方達が殺した娘は私の気に入りでしたのよ、それをこんな風にしてしまうなんて。全くもって不愉快極まりないでしょう。だからこの国にあった私の加護と繁栄の印、全て取り払いましてよ。ただそれだけ、それだけよ』


そう言うだけ言って彼女は、いや女神はそれじゃあご機嫌よう、と残して消えた。


一瞬のうちに。瞬きの時程の時間もかけず、跡形もなく消え去ったのだ。


人々が我に帰り慌てだした時にはもう遅すぎた。


せめて神の気に入りの令嬢の遺体を恭しく弔えば怒りは収まらないだろうかと思うものもいないではなかったが、令嬢の遺体もいつの間にか消えて首を括っていた縄だけが虚しく風に煽られていた。




そうしてその国はひと月と保たずに滅びの道を歩んだ。


どんなに崩れた神殿に人々が祈りを捧げようが、令嬢を害した者達の首を連ね贄として捧げようが神は再びその地に降りる事はなかったし、失われたものなどが戻る事もまたなかった。



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