王子と姫と僕の話
じれじれらぶを見守る僕の話
うちの学校には王子様がいる。それはもう名実ともに王子様である。この帝国アルクレルにおける最も優秀な高等学校で生徒会長を務め、優秀な頭脳で学年主席、美しい容姿と穏やかな物腰で微笑めば生徒のみならず教師さえも懐柔した。外面は完璧である。しかし実は国の裏側とかいろいろ見ちゃってややグレ気味である。そしてこの帝国アルクレルの正真正銘の第二王子様である。名前はアルフォンス君だ。
ちなみに俺は侯爵家のしがない三男であり、アルフォンス様とはいわゆる幼なじみである。俺を含めたった2人の幼なじみの前でしか王子様の仮面を脱げないこのガンバリヤサンのために日々虐げられる日々を甘受しているのである。名前はトールです。かわいい年下婚約者がいます。いろいろあって周囲にはナイショなんだけど。
そして仮面を脱いで接することができるというもう1人がー
「殿下!昼食をお持ちいたしましたわ!遅れて申し訳ありませ」
「遅いぞ駄犬、いや貴様のその足は犬ではなく豚か?」
「殿下...!わたくしの失態でございます。犬とでも豚とでもおよびくださいまし」
「よかろう、豚。さっさと昼食を食わせろ」
「了解ですわ!」
この国の公爵家の令嬢、リーゼロッテである。
お母さん、ぼくはこの2人の育て方をまちがえてしまったのでしょうか。
おそらくこの高校においてアルフォンスとリーゼロッテは男子生徒と女子生徒の憧れと尊敬を一身にうける存在である。なにせ2人とも高い身分、美しい容姿に加え頭脳も明晰ときている。2人に違いがあるとすればアルが柔らかい物腰で身分隔てなく接する一方、リーゼは貴族らしい誇り高い振る舞いをしているということだろうか。ぶっちゃけ平民層にはちょっと高飛車な女だなと思われてるらしい。別に本人に貴賎の意識は無いんだけどね。身分にふさわしい振る舞いを小さい頃から求められてきたってだけの話。
そんなこんなで彼女は学園の薔薇姫とかなんとか呼ばれている。そして俺は王子と姫の幼なじみのちょっとちゃらいイケメン生徒会副会長という肩書きがある。親しみやすいだけなんだけどなー、ちゃらいって誰が言いはじめたちょっと出てきなさい。王子と姫と俺は幼なじみであるため三角関係だ!とか噂されることが多い。一部では王子と俺という謎カップリングも期待されているらしいが。期待したやつちょっと出てきなさい。僕には可愛い可愛い婚約者がいるんですよ。
王太子は他国とのあれやこれやで隣国の姫を娶ったため、第二王子であるアルは自国の貴族と結婚し地盤を固めるべしとの流れがある。リーゼとの結婚も可能性は大いにあるんだな、本人達の関係はアレだけど。
「トール?ちょっと次の定例会議の件で話があるんだ。放課後、生徒会室にいいかな?」
「ああ、アル、いいとも。教室ではできない話なのか?」
「予算に関わることもあるからね?いいかな?」
「わかった、あとでな」
わざわざ生徒会室に呼び出しということは....うーん....
「遅いぞ、トール。貴様の放課後と違って俺の放課後は有限なんだ」
「モウシワケアリマセンーホームルームガナガビイテオリマシテー」
「お前も俺と同じクラスだろう、全く...そして駄犬もまだか?」
「申し訳ありません!先生に呼ばれて遅れましたわ」
「教師を言い訳に使うな駄犬」
「はうっ...申し訳ありませんっ」
「僕はー思春期のお嬢さんを犬呼ばわりするのは良くないと思います」
「さっそく会議を始めるぞ」
「無視?」
「議題は、ーーーーー我が国の王太子暗殺計画だ」