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1章 二十九話 登録完了

お読みいただきありがとうございます

 僕がカリムを背負って男性三人と一緒に歩いていると、ギルドの入口に辿り着いた。


 その道中で、『町の中って結構しっかりした家が並んでいるな』と口からこぼしたのを男性Bさんに聞かれてたらいろいろ教えてくれた。


 教えてくれたのを(まと)めると、この町は他の町と比べていい物が国から運ばれるけど数が少ないから門の小屋が木造なのはそれが理由らしい(門自体はそれなりの強度はあるらしい)。


 入口からギルドの中に入ると右の方に掲示板と思わしき物とその近くにベンチがありギルドのお姉さんが座っている。


 左の方には列に並んでいる人がいてその列の先はカウンターの様な物の所で列の一番前の人が何かカードのような物を渡すとその紙と一緒にコインのような物が列の一番前の人に渡されている。


 そして入り口に突っ立ってる僕達にお姉さんが声をかけてきた。


「三人は列に並んで報酬を受け取ってください、セイヤさんはその列の横の所に来てください、背負ってる子はこのベンチに寝かして置いてください」


 三人は言われた通りに列に並んで僕もカリムをベンチに寝かせて列の横の受付に近づくとお姉さんはカウンターの横からカウンター内に入ると僕に紙と鉛筆のような物を渡してくる。


「はい、ではこの紙に必要事項を書く欄がありますので書いてください」

「あっ、はい、わかりました」


 渡された紙を見ると名前や出身地、誕生日などを書く欄があった。

 そして記入しようと鉛筆を紙につけて少し動かした所でふと思う、『文字知らない』と。


「僕ってここの字書けないんですけど……」

 翻訳はあるけどそれって喋るだけだよね? と思っていると。


「転移人は知らない文字でも普通に書けると聞いてますが?」


 お姉さんが言うと同時にステータスのように目の前に【翻訳対象・ムー大陸語】と文字が現れた。


 ボタンを押すように弄ってみると【ムー大陸語を書けるようにしますか】となり、それに【はい】と返すと【ムー大陸語を書けるようにしました】と表示されて消えた。


 ……物は試しだ、書いてみよう。


―――


 書いてみたのだが普通になんの違和感も無く書けた。

 書いた文字がすぐ翻訳されたから分からないのかもしれないが、書く手の動きも違和感が無かった。

 知らない字を書いたと思うのに使い慣れた字を書くかのように筆が止まる事が無かった。


「書けましたか?」

 お姉さんが声をかけてきた。


「ちゃんと書けてますかね?」

 僕はそう言いながら紙をお姉さんに差し出した。


「……はい、書けてますね、では少しお待ちください」

 お姉さんはそう言うとカウンターの奥に入って行ってしばらくするとカードのような手に乗るサイズの紙を手に持って戻ってきた。


「これは言うならギルドの関係者であると証明する物です、これに顔写真を貼り付けて少し加工したら完成します」

 写真あるんだ、神様この世界文明レベル低いって言ってたよな。写真あるってそれなりに発達してないか?


「なのでそのための写真を撮りたいのでこちらからカウンター内に入ってください」

 お姉さんが僕から見て右のカウンターの入口に手を向けた。


「はい、わかりました」

 言われた通りにカウンターの中に入るとドアの中に入るように指示されたのでドアの中に入った。


「これからカメラがある場所に行くので付いてきてくださいね、くれぐれも勝手な行動はしないように」

 そうお姉さんが僕に告げるとお姉さんは歩き出した。僕は置いていかれないように後ろを付いていった。


―――


 何回か廊下を曲がったり階段を上ったり降りたりしてあるドアの前に辿り着いた。


「ここに来てください」

 お姉さんがすでに部屋の中に入って手招きをしてくる。

 部屋の中に入ると何かが布をかけられていてその布が届いていない下の部分を見ると三脚が覗いていた。


「……これなんですか?」

「カメラと言う物の再現した物です、もっともあなたがいた所ではこれより遥かに高性能な物があるらしいですね」


「あーはい、手持ちサイズで綺麗に撮れます」

「そうですか、しかしそれでは手が震えて上手く撮れないのでは?」


「大丈夫です、その手が震えるのも自動で直してくれるんですよ、なので風景とか生き物を綺麗に撮れるんですよ」

「生き物……ですか、しかしこのカメラもどきは撮れるまで時間がかかるんです、なので早めに終わらしましょう、そこの壁に立って動かないようにしてくださいね」


 言われた通り壁に立って動かないようにしているとお姉さんがカメラもどきを弄りだした。

「では撮ります、これからいいと言うまで動かないでくださいね」


 そうお姉さんが言ったと同時にカチッと音が鳴った。

 僕は体を動かさないようにしたまま考えていた『働こう』と、ずっと考えていた、お金を返したい。

 罰金を代わりに払ってくれたのだ、返さないのは気分が悪い。

 これでギルドとやらに入れるのだ。ギルドの仕事はおそらく魔物退治だろう。

 魔物を消すと言っていたから日織がやっていた『ドラゴンの問題9』とか言うゲームと同じように倒しているのだろう。

 魔物とか言うのがなんで存在しているか気になるがお金を返せるなら何でもいい。


「……終わりました、動いて大丈夫ですよ」


「どんな風に撮れましたか? 見せてください」

「まだです、少し待っててください、すぐ戻りますから」


 僕がカメラに近づくとお姉さんはそう言うと入ってきた時に使った物とは別のドアから部屋の外に出て行った。

 しばらく待っているとお姉さんが戻ってきて僕にカードのような物を渡してきた。


「それで完成です、無くさないようにしてくださいね」

 渡されたカードのような物には僕の名前と顔写真が付けられていた。


「それはギルドの関係者って事を示す身分証明証で、さらにギルド内の施設を自由に使えるようになる物です」


「……ありがとうございます、けど写真まであるなんてすごいですね、今まで僕がいた所よりも文明下だと思ってましたよ」


「……今より遥かに文明は発達していました、ですがはるか昔一度この大陸上の全ての国の戦争でこのムー大陸上の殆どの文明が消えたんですよ」


 えぇ……。


「まれにその時消えた文明の遺物が発掘されるのです」

 それが発掘品なの?


「さらにその戦争では人体改造もしていてですね」

 人体改造!?


「人体改造はこの大陸にいた全ての人間に施されました。人体改造は戦争を過激にしました、さらにその人体改造の影響は遺伝するのです」

 ほえー。


「まあ、戦争で全ての国は消えてその戦争の生き残りが今の国の元となる集落を作ったと言われています」

 つまり旧国が消えて新国ができたと。


「このギルドに登録できる資格はその人体改造で得た能力の内の怪我が早く治ると言う物を持つ者だけです」

 ……それって体力回復じゃないか?


「って事はお姉さんもそうなんですか?」

「いいえ、私は職員なので違います。私のは簡単に言うなら思考が聞こえるって感じですね」

 え、それって心読んでるんじゃないの!?

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