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1章 二十八話 荷物の行方

お読みいただきありがとうございます

「これを買わせてください、お願いします」

 なんで?

「実はですね、こういった物を集めてるんです」

 そうなんだ。


「貴方達はお金に困ってるんですよね? なら貴方達がこの子の代わりに罰金を払ってその荷物を手に入れたら、私がこれをこの金額で買います!」

 そう言いながらどこからか出した紙に書きなぐり、三人に紙を見せた。

 その紙に書かれた金額を見ると三人は喋り合い、男性Bさんが代表して答えた。


「非常に魅力的な提案なのですが私達がこの方の罰金を払う事は現段階ではできません、いくらカリムの話の通りに『いい人』で魔物がいつまた来るか分からない村の荷物を持って来てくれたとしても罰金が科されるのは何かやらかしたからですよね。何やったんですか? それが分かれば考えます」


 村にいたのって結構危なかったんだ。


 それに答えようとした僕の言葉にお姉さんが言葉を被せてきた。

「彼は転移人なのでここの常識を知らないでやってしまった事なのでたいした事ではありません、額も同様に大した事ありません」

「そうですか、それならいいんです」

 僕の代わりに罰金を払ってくれるのか。


「……つまり僕は自由の身ですか?」

「そう言う事になりますね」


「でもお金無いしどうやって生活したらいいんでしょうかね?」

「ならギルドに入ってください、お願いします」


「それまたなんで?」


「ギルドで生活をサポートするためです。そのためにまずあなたにはギルドに登録してもらいます、本当は資格を持っていないといけないんですが貴方は転移人なので特別扱いします。ギルドで生活をサポートし、準備が出来たら本部に連れて行きます」


「え、なんで本部に連れて行かれないといけないんですか?」


「貴方がこの大陸に現れた最初の転移人だからです。この大陸には転移人は現れた事が無いのと合わせて転移人は特殊な強力な力を持っているのが判明しています。なので貴方には本部に連れて行って処遇を決めないといけません、なのであなたにはギルドが保護します。保護するに当たってギルドの者と示すためにギルドに入っていただくのです」


「……つまり他の転移人を知ってるって言う事ですよね?」

「分かりませんね、私はそこまで偉くないので」


 三人がなぜかジットリとした目でお姉さんを見ていた。

 お姉さんがその三人を見ると三人はあからさまに目線をお姉さんから離した。


「では改めて中身の確認をしたいと思います」

 そうお姉さんは言いながら金属と地図を荷物の中から取り除いた。


「言い忘れていましたがこの地図は発掘品と同等の物なのでこちらで預かっておきます、拒否権はありません」

 発掘品って何?


「ああ、それがあの地図なんですね、わかりました」

 この地図って有名なの?


 残ったのは服とタオルと紙、それを見ていた男性Cさんが声を上げた。


「思い出した! この服ってカリムが着てた服だ!」

 えっ!?


「本当だ、カリムちょっとこっち来て」

 男性Bさんがカリムを呼ぶ。


「なに?」

「この服ってカリムの?」

「あ、うん! お母さんに貰ったやつだ!」

 それを聞いた僕は驚いてしまう、そこに残っている荷物は全てその服があった家の物だから。


「あの、その残ってる荷物は全部同じ家から取ってきた物です……」

 僕はただ、声に出した。


「て事はこのタオルもカリムの家の物って事?」

 男性Aに聞かれた。


「はい、それとその紙も」

「これか、何々?」

 男性Aさんが紙を見ると表情が暗くなった。


「カリム、この紙に覚えは?」

 僕ががカリムに紙を指で示す。


「あ、これ……村出る日の朝にっ」

 カリムが紙を見ながら喋っていると急に言葉が止まり。


「お兄ちゃん、ごめん無理」

 日織が何故か出てきて男性Aさんが持っていた紙を僕に押し付けてくる。


「えっ、なんで? 日織がなんで出てくるの?」

「カリムの家族はもう居ないの」

 はい?


「言ってたでしょ、村が消えたって。それでこの町に村の人間が子供とお兄さんお姉さんぐらいしか居ないって聞いて何も思わないの? それにその紙はカリムのお父さんがあの魔物の調査に行くって書いた手紙なんだよ、それを見せてどうしようって言うの?」

 日織に静かに怒られる。


「ご、ごめん、ごめん! 知らなかったんだ!」

 日織って怒ると怖いんだな。


「……寝る」

「えっ?」

 声を上げた時には時すでに遅し、そこには倒れてもすやすやと寝ているカリムの姿が。

 どうしようかと周りを見ると口を開けながらこちらを見ているお姉さんと男性三人。


「……口開いてますよ?」

 そう呟くと四人の口が一斉に閉まった、ものすごくシュールな光景だった。


 そんな男性三人の後ろのドアが少し開いていて、そこから顔を半分出してこっちを兵士2さんが見ていたのに気がついた。


「……なぜ見てるんです?」

「いや、大きい声聞こえるので」


「大丈夫です、大丈夫なので何も心配ありませんよ」

「そうですか? それならいいんです」


 兵士2さんはそう言うとドアを閉めて見えなくなった。


「……今のがさっき話してた」

「日織ですね」


 男性Bさんが口を開いて聞いてきたので答える。


「あんな風になるのか」

「まあ僕も戸惑ってますから」


「……えー、私は人を結構待たせてるのでギルドに移動したいと思います。後でギルドに来てくださいね」


 そんな会話をしていたら我に返ったお姉さんがそう言いながら荷物を全て持ってドタバタと外に急いで出て行った。


「あー、じゃあギルドに行こうか。道は分からないだろうから後ろをついてきてね」


 残された僕は男性Aさんに言われるがままカリムを背負って男性三人の後に続いた。

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