1章 二十三話 正体
続き読んで貰って本当に感謝です!
全員席に座り、それを確認した隊長が喋りだした。
「今から確認をするぞ、まず『セイヤ』が『ヒオリ』と叫んだのが始まりだ」
そう言いながら体の向きを僕の方に向ける。
「僕がですか?」
叫んだの? 恥ずかしい。
「ああ、それで部下達に『ヒオリ』を探させたんだ、そしたら『ヒオリ』を知っているってこの子が出てきてな、それで連れて来たんだ」
「そこでだ、カリム君よ。なぜ君が『ヒオリ』なんだ? 君は『ヒオリ』を知っているのでは無かったのか?」
そして日織が座っている方に向きを合わせと日織に聞き始める隊長、その言葉に疑問を抱いたので隊長に声を掛ける。
「ちょっと待ってください!」
「何だ?」
「なんでカリムって呼んでるんですか? その子は日織って言う名前の女の子ですよ!」
「……まずその子はトズ村に生まれ住んでいた子だ、そして女顔ではあるがれっきとした男子であり私はその子が子供の時からこの町に家族で来ているのを何度も見ている。私が知っているその子は『ヒオリ』などと言う名前では無く、その子の名前は『カリム』だ」
「まるでわかりません」
日織がカリムでカリムが日織? 一体どっちなんだ?
「私もわからん、だからこそこの場を設けているのだ」
お互いに考えて沈黙してしまったがそこで兵士2さんが「……あの一つ良いですか?」と隊長に聞いてきた。
「……何だ?」
「あの、関係無い話かも知れないですけどちょっと気になった事があるんです。カリム君とセイヤ君が会った時にしていた謎の行動はなんですか?」
「……確かに関係無いがそれは確かに気になるな」
「あ、それは住んでいた所のジョークです」
「……だとしたらなんでカリム君がそのジョークを知っていたんでしょうね?」
兵士2さんもカリム派のようだ。
「そのジョークを知っているからあの子は日織なんです! カリムでも無いし男でも無い!!」
僕は日織であると主張する。
「しかし私は確かにあの子がカリムなのを知っている! なぜだ、どうしてこうも矛盾がある!」
隊長が混乱しかけている。
「隊長、落ち着いてください。それに本人から話を聞くのが一番ですよ」
兵士2さんが至極真っ当な方法を提案してきた。
「……それもそうか」
隊長が混乱から立ち直ってお茶を飲む。
「なあ、日織だよな、そうだよな! 日織!」
僕は日織に詰め寄り聞く。
「私が日織で……」
その言葉を聞いた僕は『よし!』と、内心喜ぶが従妹が次に発した言葉が理解不能の言葉だった。
「僕がカリムです」
「「「……はい???」」」
……お前は何を言っているんだ? さっき自分で日織って事言ってたじゃないか!
「今から日織お姉ちゃんが話をします」
日織お姉ちゃん? もうまるで意味がわからんぞ!
「日織です、まずはお兄ちゃんに。お兄ちゃんと家の前で別れて学校に友達と歩いていたら何時の間にか知らない場所に居ました」
ちょっと待ってちょっと待って神様、説明して無いの!?
それと友達は隣歩いてた子がいきなり消えてくりびつてんぎょうするんじゃないかな?
「私は困惑しました、そして助けを求めました。周りに他にも人が何人か居たので近くにいた人に、ここはどこかと聞きました、帰ってきたのは怒鳴り声でした。私はその怒鳴り声で泣きました」
泣かした奴はっ倒す。
「泣き止むと男の人と女の人が私を抱えて走っていました、なんでこんな事をしているのかと聞くと緑の化け物が追ってきていると言われました。私に怒鳴った人が緑色に切られたと走っている最中に教えて貰いました。後ろを見ると緑色の人型の化け物が追ってきていました」
担いでくれた人ありがとう、泣かした奴はどうにも言えない。
「緑色がだんだん近づいてきて私と私を抱えていた2人は緑色に切られて多分死んだのでしょう、いえ、死にました。私は死んだのです」
……何死んでんの!? え、じゃあ何で生きてんの!? 幽霊!? いや触れてたよね!?
「そして何時の間にか赤ん坊になっていました」
お、おう、理解が追いつかん。
「そして私は何年か体の主導権を握っていたんですけど、気を抜いておくと勝手に体が動く事が多くなりました。勝手に体を動かしていたのはこの体の本来の持ち主、つまり『カリム』です。この体は私の物ではないので体の主導権を戻して私は一切干渉しない事にしました。しかしカリムは子供です、まだ危険な物などを知りません。なので明らかに危ない行動で怪我等をするのは嫌です、私も痛いのは絶対に嫌です。なので思いつきました『私がこの子を守ろう!』と。決意してからは危険時に体の主導権を握りカリムと会話が出来るまで危険から回避していました」
スゴイナー、守護霊ミタイダナー。
「そして本体が成長してある程度意思疎通ができるようになった頃に私は本体の体を使ってカリムに喋りかけました。結果的に体はカリムの物になって、私は基本カリムと会話するだけの存在になりました。まあ偶には体を貸して貰ったりします、つまりこの体には日織とカリムが存在しています。なので別に騙していたわけではありません、ただ誰にも信じて貰えないだけです。事実カリムが勝手に親に話をした時も夢でも見ていたのだろうと言う反応で帰ってきました」
そりゃ信じれないよ。
「やめてよお姉ちゃん、その話はもうしないって約束したでしょ」
こっちはカリムか。
「だまらっしゃい! 今はこの話をせざるをえないでしょう!」
日織……すっかりお姉ちゃんだな、約束を破る所とか。
後ろで隊長が兵士2さんに『今なんて喋ってたんだ?』と聞いて兵士2さんが『わかりません、違う言葉でも喋ってたんですかね?』と答えていたのが聞こえた。
……僕も日織が喋ってた事の意味が分かりたくない、分かりたくない。
分かってはいるんだが理解したくない。
だけど知らなければならない。
「つまり日織は……」
おそるおそる聞いてみる。
「死んでこの体に意識や記憶がなぜかあるって事です」
こぶとりじいさんみたいだな、呑気にそんな事を頭の片隅で考えてる僕もいた。
「…………やめてよ! 嘘だと言ってよ……言ってくれよ!」
叫ぶ僕。
「私だって信じたくないけど死んじゃったのは事実なんです」
日織……結構ドライになってるね。
言葉を理解した瞬間と同時に僕の体に吐き気が襲ってくる。
「……ごめんなさい、ちょっとトイレに行っていいですか? いいですよね?」
僕は口を覆って気持ち悪さを抑えながら隊長に聞いた。
「あ、ああ、分かった」
隊長が席を立ってドアを開けに行く。
「ついて行きましょうか?」と兵士2さんが近くに寄ってくる。
「すいません、お願いします」
僕は兵士2さんの肩に捕まる。
「分かりました」
そして僕は兵士2さんの肩を借りながらトイレに向かう。
次回はリバース表現出てきそうです




