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太陽系内の航行

 宇宙で「加速」するためには、いくつか方法があります。加速と言っても、「速くする」という意味ではなく、「速くする」、「遅くする」、「方向を変える」という意味での「加速」です。


 まず一つには推進剤を使う方法があります。これが単純な方法ではありますが、残念ながら「推進剤」を積み込まなければいけません。推進剤が切れたら、この方法での加速はできなくなります。そこで問題になるのが、「どれだけの推進剤を積めるのか」と、「推進剤の強力さ」のようなものになります。積み込める量に制限がなければ便利でいいのですが、そういうわけにもいきません。まぁ、これは単純に、「地上から打ち上げる」という条件による制約でもあるのですが。

 積み込める量に制限があるとすると、その制限下でどれほどのことができるのかという話になります。

 ここで、2つの方法が現在存在します。

 一つは化学ロケット。

 もう一つはイオン・エンジン。

 これは、作用反作用を考えると大量の質量を放り出してその反作用を使うか、あるいは少量なものでも勢いよく放り出してその反作用を使うかという違いがあります。

 化学ロケットの場合、推進剤を大量に反応させて強力な加速を得ます。そのため、一時的に強力な加速は得られますが、長続きはできません。

 それに対しイオン・エンジンはイオンを勢いよく出すことで、「燃料を長く噴射し続ける」という方法によって、結果としては化学ロケットよりも速くできます。その結果到達する速さは化学ロケットよりも速くできます。ただし、化学ロケットほど一時的に強力な加速はできませんし、打ち出すのがイオンなので「機体が軽い方がいい」ということになります。このあたり、イオンをほとんど光速とういような無茶苦茶な速さで打ち出したらどうなるんだろ?

 どちらも実用化されています。探査衛星でイオンエンジン搭載のものは「はやぶさ」なんかが有名でしょう。もうイオン・エンジンが故障したのに、チート的な方法で使ってたり。設計の柔軟さとも、「こんなこともあろうかと」とも言えるのかもしれません。

 実用化はされていませんが、核パルス推進というのもあります。丈夫な反射板の近くで核爆弾、あるいは核融合爆弾を爆発させる方法です。強力だろうし、化学ロケットより積み込む量は少なくて済むのかもしれませんが、まだちょっと先の話です。ダイダロス計画では核融合を使った核パルスを使うという計画ではあるようです。


 さて、推進剤を使わずとも加速する方法があります。その一つが「(惑星)スイング・バイ」です。スイング・バイは推進剤を使いませんが、魔法によって加速しているわけではありません。惑星の運動エネルギーをもらっています。特に速さを上げる場合。減速の場合はどうなんだろ? 惑星の進行方向に対して後を探査機が通ると速さが上がります。これ、惑星の公転の運動エネルギーをもらって、つまり公転にそって惑星の重力にひっぱられて、公転のエネルギーをもらうことで探査機の速さが上がります。ちなみに、惑星の前を通ると探査機は減速されます。

 推進剤がいらないので便利ではあります。ですが、基本的に「惑星」を使うので、探査機がそばを通るタイミングに依存します。あるいは逆に惑星の位置に依存します。スイング・バイを使う場合には、何年先に惑星がここにくるから、そのタイミングで探査機を近くにやるという計算をしないといけません。

 推進剤を使うなら、制限はあるにしても好き勝手に加速できますが、スイング・バイだとそれは無理です。でも推進剤を積まなくていいというのは利点でもあります。


 あるいは、加速だけでよければ太陽帆船、セイラー・ヨットなんてのもあります。これは太陽からの荷電粒子や光を受けて加速するものです。地球から出発して、たとえば木星に行くとして、減速はどうするのか知りません。木星から地球に来るには、普通のヨットでも風上に進めますから、太陽帆船でも方法はあるんだろうと思います。こっちの方向だと減速は普通にできます。

 でも、イオン・エンジンと同じく、大きな加速は得られません。得られないわけでもないですけど帆がどんだけという話になります。


 スイング・バイや太陽帆船は便利だけど不便。やっぱり推進剤が欲しいとなると、「バサード・ラムジェット」という方法があります。これは宇宙空間に存在する水素を磁場あたりで捕獲して使うというものです。まぁ、これ、磁場ネットが無茶苦茶大きくなりますが。地球の直径くらいは少なくとも欲しいとかだったかな。


 そこで「揺籃の星」では発想の転換がありました。作内では「固有物質推進」だったかと呼ばれていますが。要はそれなりの質量を持ったものをそれなりの速さで打ち出せれば、それなりの反作用が得られるというアイディアです。それを実現するには原子力を使うのが楽。熱して体積を膨張させて噴射させればいいというアイディアです。どこまで熱する必要があるのか、あるいは可能なのかによりますが、「物質の塊」があれば、どこでも推進剤の補給が可能です。塊というか気体でも構いませんが。


 ですが、どの方法でも太陽系内の移動くらいにしか使えません。推進剤を使う場合、どの方法でも系外だと確保が難しいでしょうし。スイング・バイだと、使える惑星大のものがないでしょうし。まぁ、あったとしても今のところその軌道なんか計算できないでしょう。太陽帆船は、太陽から遠ざかるほど、受ける力が弱くなるばっかりですし。ヘリオスフィアのあたりとか外だとどうなるのかわからないし。ダイダロス計画は片道だし。バサード・ラムジェットはどうなんだろう?


 系内すら行き来できない現状では、まだ先の話ではあります。ですが、系内で行き来するヒントはどこかにあるのかもしれません。まぁだいたい「太陽系は狭く、宇宙は広い」に書いたように、系内と系外は一緒に考えるのが無理があるのかもしれません。


 なお推進方法ではありませんが、リアクション・ホイールというものも存在します。これはホイールを回した時の反作用を使って姿勢制御を行なうものです。普通に人工衛星や探査機で使われています。なお「はやぶさ」の子機はイトカワに着陸ののち、リアクション・ホイールとバネを使って飛び跳ねながらイトカワ上を移動するという計画だったようです。子機がコケたのでできませんでしたけど。


 書き忘れてました。ElectoroMagnetic Driveが宇宙でも機能するというニュースがありました。原理は不明。どれくらいの出力(?)が得られるのかもちょっとまだ分かりません。

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