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DNAコンピュテーション

計算ってなんなんでしょう?細胞も計算しているのかもしれません。チューリングはもうほんとに神としか言えない天才です。

 本題に入るまえに、チューリング・マシンの説明をしておかないとなと思います。

 チューリング・マシンは、とくに基本となるチューリング・マシンは、まず左右に無限の長さを持つテープがあります。これは磁性体とかテープ自身が決して劣化することがない理想的な磁気テープと思ってもらえばかまいません。そしてそのテープは記号を書き込むことができる区画に分けられています。テープとは別にヘッドが存在します。このヘッドはテープに書かれた記号を読んだり、テープに記号を書いたり、またテープ上を左右に動けます。さて、ヘッドの中には、状態とルールがあります。状態とは何かを説明するのは難しいですが、これも一種の記号だと思ってください。あるいは極めて容量の小さいメモリと考えてもらってもかまいません。ルールは、今ヘッドがあるテープの区画の記号と、ヘッドの状態から、次の動作を決めるものです。テープの記号の書き換え、ヘッドのテープ上の移動、ヘッドの状態の変更が可能です。

 こんな説明でたぶん大丈夫かな。


 さて、本題です。

 いわゆるDNAコンピューティングはDNAの合成過程 or 結果による計算だったりするわけです。ここで書く「DNAコンピュテーション」とは別物です。「DNAコンピュテーション」は正式な名前というわけでもなく、「DNAコンピューティング」と区別するためにそう呼ぶこととします。さて、いわゆるDNAコンピューティングは「スパゲッティ・コンピューティング」、あるいは「パスタ・コンピューティング」と、ある意味同類です。


 スパゲッティ・コンピューティングの説明が必要ですね。

 スパゲッティの乾麺を想像してください。それと、数の集りも。その数の集まりをソートしたいとします。その時に、その個々の数に対応する長さにスパゲッティを切ります。まぁ、この作業は実際には手間ですが。さて、切り終ったら、スパゲッティをまとめて、手に持って、立てて、机の上にでもトントンとやってみましょう。はい。ソートが完了しています。これがスパゲッティ・コンピューティングです。


 ではDNAコンピュテーションの方はどういうものなのか。えーと、Google Scholar[*1]で、「DNA RNA Turing Machine」で検索してみてください[*2]。日本語の文献に絞ると、関係なさそうなのが数個表示されるだけみたいです。1973年とかの文献があったりします。サイトの会員でないと見れないものもありますが、そこは諦めてください。これはGoogle Booksだから読めるかな? "A DNA and restriction enzyme implementation of Turing machines", PWK Rothemund - DNA based computers, 1996.[*3]なんかは良いかも。 あるいは、こっちの方が良いかな? Brown大の図書館みたいなので、見れると思いますけど。"The fundamental physical limits of computation", C. H. Bennett, R. Landauer, Scientific American, 1985.[*4]。こっちはちょっと分かりにくいかもしれません。でも興味深い解説記事です。


 何となく思いついたのは、199x年ごろだったと思います。ゲームの設定(まぁこれがMethuselahなのですが)を考えている時だったと思いますが。「DNA、あるいは細胞とチューリング・マシンは似てるかもしれない」と思ったのです。

 DNAは無限長ではありませんが、ともかくDNAをテープに、DNAから情報を読み取るRNAをヘッドの一部に置き換えて考えてみます。RNAがDNAから読み出した情報は、化学物質として細胞内に散布されます。で、細胞内のそういう物質の濃度なりなんなりを、ヘッドの「状態」に置き換えてみます。「ルール」はどこに存在するのかは分かりませんが。チューリング・マシンでは、テープ上のデータの書き換えが行われますが、DNAでは損傷部分の修復の場合とコピーエラーを除き、書き換えはないだろうと思いますが。

 こういう対応付けが可能なのかどうかは分かりませんが、なんとなく対応付けができそうな気がします。そうすると、「細胞は計算している」なんてことが言えるのかもしれません。おまけに、生化学、あるいは生物物理化学的な見方よりも計算しているという見方を重視するなら、DNAの書き換えも問題無しです。書き換えを可能なように設計すればいいだけですから。


 うん。「やはりすごいな、チューリング!」という感じでしょうか。そう言えば、先日チューリングは英国で不名誉に対しての恩赦だったか赦免だったかがなされたようです。いやいや、計算機界隈の住人には、そんなのどうでもかまわないですよ。恩赦だとかを受けるレベルの人じゃないです。もう神レベル。人間が与える恩赦とか、どうでもいいレベルの人ですよ。


*1: Google Scholar https://scholar.google.co.jp/schhp?hl=ja

*2: 「DNA RNA Turing Machine」 https://scholar.google.co.jp/scholar?q=DNA+RNA+Turing+Machine&hl=ja&btnG=%E6%A4%9C%E7%B4%A2&lr=

*3: "A DNA and restriction enzyme implementation of Turing machines" http://books.google.co.jp/books?hl=ja&lr=&id=eV3-h3YMH3gC&oi=fnd&pg=PA75&dq=DNA+RNA+Turing+Machine&ots=fHQ-QBlGR9&sig=4n4wtQqVslFm9D7GcOMfuvrAxMQ#v=onepage&q=DNA%20RNA%20Turing%20Machine&f=false)

*4: "The fundamental physical limits of computation" http://scale.engin.brown.edu/classes/EN2912C/sci.pdf


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