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変態の日常的生活  作者: 荒崎 藁
変態たちの新居!
9/66

お引越し!の6

「境ー入るぞー」

 カチャ。

ゾわーーーー。

一瞬で背筋が凍りついた。気のせいなんてもんじゃない。本当に凍っているかのようにに寒かった。

「へ、ヘビがあああああああああ!」

 俺の右足から、這い登ってくる。

「さああかああああいいいいいい!!」

 ヘビへの恐怖心と、驚愕し過ぎで体の自由が利かない。

「おう志多野~スネーク逃がすなよ~」

「知るか! 今すぐ逃がしたいわ!」

 太くて重そうな体で、するすると俺の左腕まで登ってきた。

脅威な眼と目が合ってしまった……

「ひええええ」

ますます動けなくなった。カエルになった気分だ。

「ささささ境? この腕に絡まってる物体をどうすれば……」

 ヘビは二別れした舌を出したり閉まったりする。

「せめて噛まれないようにすることだな」

 え……? いや、まさかね…………

「スネークは、毒蛇だ」

 ――――――

「ぎゃああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ」

「大声はやめろよお。ほかの動物がびっくりするだろ?」

 今すぐにでも気絶しそう。なんなら気絶したい……でも世の中そんなに甘くない。

「俺……ここで死ぬのか!? 死ぬのか!? 死ぬんだな!?」

「はは――」

 乾いた苦笑いを、境はした。

「死にたくねえよ!? まだ俺したいこといっぱいあるよ!? 幽霊と会話したり、幼女と会話したり、ときに大人の階段上ったり……兎・に・角! 死ぬのは嫌なんだよ! しかも明日から新しいストーリーが始まるんだよ! 霊界と通信ができるようになるかも知れないんだよ!」

「そうか……残念だったな」

 境はキツネの頭を撫でながら言う。

「あきらめんなよ!!」

「そんなに元気なら、霊界でも楽しくやれるよな」

「やれねえよ! 死んでも未練たらたら過ぎてこの世から脱け出せねえよ! 無事に三途の川も逝けねえ!!」

「良かったじゃないか。死んでからの目標ができて」

「良かねえよ!!」

「そーなのかー」

「そーなんだよ! こちとら真剣だぞ!」

「むむ……そこまで言うなら……」

 境…………

「よろしくお願いしまああす!」

「べ、べつに志多野を助けたいとかじゃなくてスネークが志多野ばっかりとくっついてるから離すだけであって……勘違いすんなよ!」

 ――うん、お前いつの間にそんなキャラになったんだよ。

「ほら行けえ!」

 境がカゴからネズミを放った。瞬く間にネズミは部屋内を走り回る。

するする……どん! と音を立て、左腕でずっと俺を睨みつけていた茶色っぽい毒蛇は、床に落ちた。腕がかなり軽く感じた。

「今から弱肉強食の世界が見れるからな」

 俺と境はじっと、毒蛇を見据える。そして……

――っ。

 やりおった……まじでやりおった。

「ごめんな……」

 そう言って食事中の毒蛇へカゴを被せる。

「よし、一件落着!」

「俺の精神的体力が限界を超えたがな」

 ――

二、三回深呼吸をした。

「で、志多野は俺の部屋に何の用だ?」

 鹿の大きな角をタオルで磨きながら言う。

「宣言通りのことに、もうなっとるし!」

 よく部屋を見渡すと、十二畳の部屋の七割くらいがいろんな動物で埋め尽くされていた。

「普通だろ? ああついでに言っとくけどスネークはマムシだから」

 …………

「まじで死ぬから」

「噛まれなかったから幸いだな」

 にこっと笑う境。他人事だと思いやがって。

「まあそうだな、じゃあ部屋戻るわ」

 ため息を吐き、肩を落とす。

「おー! また後で」

 境はライオンの子どもに首元を舐められながら、俺を見て言った。

 ドアを閉め、たいして運動もしていないのに疲れた体を、早くベッドで休めたいと思い、早足で部屋に行った。

「はああぁぁ」

 ベッドへダーーイブ。ふかふかで気持ちいいなー。このまま寝たいなー。でもベッドと机と、数十個のダンボールがあるだけのだだっ広い部屋で寝るのは無理だなー。

幽霊が集まりやすい部屋にしなくては!

「よしっ」

 寝たい気持ちを強引に引っ込め、早速部屋の片付けをする。

 ベッドから一番近いダンボールを開ける。中は肝試しに使う道具類が入っていた。

 これはまだ必要ないので次のダンボールへ。

今度はお目当ての物が入っていた。

まず、青と白の縞模様のカーテン。

そして数十本もの木製の卒塔婆そとば。それには俺が適当に書いた文字が書かれている。『霊よ来い!』とか『冥界の入り口』とか。

そしてこれを部屋に無造作に立て掛けた。

あとはヘビのようなぐにゃぐにゃの、昔風の文字がびっしり書かれた古びた紙を壁一面に貼り付ける。幼稚園の頃から部屋に飾っていたが、いまだになんて書いてあるか解らなかった。

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