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変態の日常的生活  作者: 荒崎 藁
変態たちの新居!
7/66

お引越し!の4

「次は田仲よ、志多野よろしく」

「おうよ!」

 田仲の番、だけど俺も一緒に撮影する理由……それは、田仲は一人でやらせると自己紹介をしない、てゆーか喋らない。だからいつも俺がインタビューして田仲がそれに答える、という形式を執っている。

 田仲を先導してソファに座らせ、俺も一緒に座る。

ソファはマシュマロより柔らかかった。

前澤が録画ボタンを押すのが見えたので、インタビュー開始だ。

「……お嬢ちゃん、お名前なんて言うの?」

「田仲……クしゅんっ」

 なんか息遣いが荒くなってきた。

「飴あげるからお兄さんのお家行こうか」

 うへへ。

「待て前澤カットしろ。志多野落ち着け!」

 おもいっきり境に頭を叩かれた。

「いてえなおい。何事だよ竜巻か?」

 何が起きたか分からず境を見た。叩かれたことだけは分かっている。

「お前の違う人格が出てた」

「境、違うぞ。決して違う人格ではない。俺は俺だ」

 境の言葉を冷静過ぎるくらいに否定する。

「誰だお前! 後言っておく事といえば、田仲はまだ性別が判っていない。いくらかわいくて襲いたくなってもダメだ! それだけを胸にしまっとけよ?」

 こ、こいつ……何なん?

 いくら俺がアレでも田仲は……。

「それはね、分からんのだよミシェル君」

「ミシェル誰やねん!」

「俺の母さんの妹」

「まじか!」

「嘘」

「嘘かよ!!」

 俺から吹っかけたけど、実にくだらん!

「いい加減始めない?」

「うっす」

 前澤の一言で、境は退散していく。

「はい録画スタート」

「じゃあ名前から聞こうかな。お名前は?」

 田仲の顔を見て言う。身長が二十センチ程違うせいもあって、田仲を見下ろすような形になっている。

「田仲……クしゅんっ」

 小さな口元を雲のような白さの小さい手で覆い、小さくくしゃみ。

田仲は風邪でもひいてるんじゃないかと思うくらい、いつもくしゃみをする。

「趣味は?」

「植物を育てること……クしゅんっ」

 静かな水のせせらぎのような声が俺の耳を癒してくれる。

田仲と出会って四年くらい経つけど、みんな性別が判っていなかった。趣味はかなり女の子っぽいが……。

今回は理性を保てそうだ。

「どんな植物が好き?」

「ハス……」

 滅多に見せない『微笑の上』。

かわいいなあと思うが、男だったときのダメージが大きいのでその気持ちを抑える。

「じゃあ性別は?」

「クしゅんっ!」

 性別はくしゃみによって聞き出せなかった。いくら問い詰めてもくしゃみしかしないと、俺たちは知っている。今はわざと聞いてみた。

諦めよう……時期判る、多分ね。

「明日は何の日?」

「新山高等学校植物園芸科の入学式」

 いつの間に付けたか分からない扇風機の風で、深海のように青い田仲のセミロングの髪がなびいていた。この砂浜のようなリビングによく似合う。

てか寒いんだが。

「この家でしたいことは?」

「庭園でいろんな植物を育てたい」

 田仲は微笑こそしなかったが、期待に溢れた瞳をしていた。庭園は田仲のテリトリーになりそうだ。

「たとえば?」

「ハス」

 庭園の真ん中にあった噴水で育てるのだろうか。

ここで録画一時停止。

「田仲の性別がかなり気になるけど、最後は志多野だな」

 カメラマンが再び境に入れ代わった。


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