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変態の日常的生活  作者: 荒崎 藁
変態たちの新居!
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4/66

お引越し!の1

「ようやく完成したんだ……」

「そう、信じられないわ……」

「俺、もう我慢できないんだけど」

「これから、もの凄く楽しみ……」

「クしゅんっ……」

 俺、前澤《まえさわ》、境《さかい》、阿部《あべ》、田仲《たなか》の順に思いの丈を口にしていく。最後のは確実にくしゃみだけど。

 みんなで深呼吸……。

――

一瞬の静寂。

「俺たちだけの家が!!」

「俺たちだけの家がさあ!!」

「あたしたちだけの家が!!」

「私たちだけの家が!!」

 四人の言葉が重なった。

それに続いて

「クしゅんっ」

 俺は確実にベリー良い笑顔をしているはず。境もベリー良い笑顔を、前澤も、阿部も、田仲だってそうだ。

「表札は志多野《したの》、お前が掲げろよ」

 境から五人の名前が刻まれた札を渡される。

「あったりまえだぁ!」

 踊るような足取りで表札を掲げた。

そして

「五つの魂、今ここに移住す!」

 一言、俺は目の前の豪快に堂々と建つ『超豪邸』へもの申す。

「入るときはみんなでね」

 阿部の言葉に俺を含めみんな頷き、境から俺、田仲、前澤、阿部の順に二メートルほどの鉄柵の扉を両手で握る。

「準備オーケー?」

 俺は阿部を見る。

「いいよ」

 次に前澤。

「いつでも」

 そして田仲。

「クしゅんっ」

 最後に境。

「来い!」

 よしっ、と心の中で呟く。唾を飲み、鉄柵を握る両手に力を込める。

「世界の果てまで、さあ行くぞ!」

 カシャァァーーン。

ガン。

 鉄扉を開けるのは軽かった。

きっと五人の力があるから。

「さあて」

 前澤の合図で五人、手をつなぐ。俺の左手には境、右手には田仲。境の手は汗でベトベトだけど熱い、生きている証。

田仲の手は弱々しくて小さい、だが握る力は勇ましい。

「はーじめのいぃぃーっぽ!」

 田仲は言ったか分からないが、みんな一緒に一字一句全く同じことを言い、新しい我が家の敷地へと足を踏み入れた。

「あっーー!!!!!!」

「……境お前! 我が家の第一声をよくも!」

 怒っているのになぜか俺は片手でガッツポーズをしている。

「入る前に目ぇつぶるの忘れとったあぁぁぁ!」

 ――

「あああああぁぁぁあああ!」

 俺は膝から崩れ落ちて地面に手を着く。

「ふ、ふははははは! やったぞ! 我が家の砂を最初に触ったぞ!」

「なんという不覚! 志多野に先を超されるとは! くそっ」

 今度は境が崩れ落ち立場が入れ替わる。

「バカなことやってないで中、入るわよ」

 前澤が俺と境のやり取りを微笑ましく見ながら玄関を目指し歩き出した。田仲が中心にあった噴水を眺めている。

「中だとっ! 俺が一番だあぁぁぁ!」

 勢いよく俺は玄関に向かって噴水の周りを走り出した。

「志多野待てぇい!」

 境も負けじと走る。こうやって二人並んで走ると、中学校の体育祭の短距離走を思い出す。

「タッッッッチっ! よっしゃあぁぁ境に勝ったぁ!」

「また負けたあああああ!」

 俺が先にドアノブにタッチした。

「では、解禁!」

 ガチャ

「あれ?」

 ガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャ……。

「開かねええええええ!!」

「ざまあ!」

 境がげらげら笑っている。すると後ろから前澤が

「そりゃカギかかってるからに決まってるじゃない。ちなみにこれが我が家のカギ」

 五枚のゴールドカードをみんなが見えるようにお披露目した。

「おっ? それがカギ?」

 いち早く俺は、カギとは思えないカギを好奇心オーラをばんばん放出しながら見つめる。 一秒遅れて境も好奇心オーラを放出してカギを見つめた。

「当たり前だけど一人ひとつ。じゃあ田仲から渡しましょうか」

 前澤は、後ろを無言で歩いていた田仲に渡す。田仲はゴールドカードを太陽にかざしながら不思議そうに見ていた。

「次に阿部」

 さっきからずっとよだれを垂らし俺たちを見ていた阿部にゴールドカードを渡したが、なんたることかほんとにカギかもしれないカードに大量のよだれが付いた。

「阿部えええええ! よだれを拭け! 拭くんだ!」

 俺が大声で注意した。

「はっ!? いけない、てゆうかこのゴールドカードなに? 私大金持ちにでもなったの?」

 慌ててカードをハンカチで拭く。どうやら前澤の話を聞いてなかったらしい。

まあいつものことだ。

「大切に使いなさいよ」

「前澤! 誤解を招くような言い方をするんじゃない! 阿部、これは我が家のカギらしい。こんなカギでどうやって挿し込んで回して開けるか分からんけど」

 シャッ

――認証登録のため、画面に手を置いてください。

 ――――

――登録完了、登録名を入力してください。

 ――

――認証登録完了、登録番号『零零一』田仲様。

シャッ

機械的な何かから出てきたゴールドカードを取った田仲がこちらを振り向き、少し微笑み小さくピースをする。

 やばい、かわいい!

「うおおおおおおお!! 田仲ああああ!」

「田仲あああああああああ!!」

 俺と境が田仲に群がる。

「第一声や砂よりもランクが高い、最初の認証登録を先超されたああ! しかもこれ声が凄い機械的だ!」

「くそっ! 前澤! 俺にゴールドカードを!」

「境に先を超されるのはもっといかん! だめだ! 境より先に俺にゴールドカードを!」

「そこで待ってなさい。あたしたちの認証登録が完了するまで」

「ああ…………」

 俺は意気消沈する。

「消沈する必要なんてないじゃないか! 最後の大勝負、ラストを飾ろうぜ。まっ、飾るのは俺だけどな」

「そうだよな。イッツ前向きスペシャルってことか! その勝負、勝つ!」

 自分で言ってて、意味が解らない。

――認証登録完了、登録番号『零零二』阿部様。

 シャッ

阿部は出てきたゴールドカードを取り、大はしゃぎしていた。

「早く認証登録してえ」

「堪えるんだ志多野」

――認証登録完了、登録番号『零零三』前澤様。

 シャッ

出てきたゴールドカードを前澤が取る。


読んでいただきありがとうございます!

彼たちの新生活を、余すことなく出し切っていきたいと思います。

なにより、『変態』ということを。


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