レッツ夜這い……!?
ただ今絶賛幽霊営業中。驚かしたら怨まれるぞ。
「ねえ、ガチで行かなきゃダメなのか?」
「当たり前じゃん罰ゲームだからな!」
「静かにしろ。何時だと思ってんだよ。それにヤツが起きる」
相変わらずいつでもうるさいなこいつ。
「すまん。まあとりあえず逝ってこい」
「ああ、逝ってくる」
このノリ、修学旅行で夜に男子が女子の部屋に入るテンションみたいだ。
俺たちは今、前澤の部屋の前でたむろっていた所だ。
そして俺は昼間の罰ゲームを受けるため、あんまり行きたくなかった前澤の部屋に行く。
静かに扉を開け、前澤を起こさないようにする。
扉が閉まる前に、
「幸運を祈る。グッドラック」
境が親指を立てて俺に向けた。
てか両方同じ意味だと思うが……。
ひとまず部屋を見渡した。奥にはなぜかバーのような棚とカウンターとイスが置いてある。手前の辺りにベッドがあった。
後はタンスやら全身鏡やらしかなかった。
どうしよう……。夜這いとは言ってもベッドには断じて潜りたくないからな。
そういえば前澤って寝てる時どうなんだろうな。ニューハーフだから色々困ることだってあるだろう。
そう思うと勝手にベッドまで忍び足で近寄っていた。
前澤の顔は、反対側を向いていて分からなかった。
「志多野どうしたのよこんな夜中に」
「ふおっ! ……なんだ起きとったのか。てか何で俺って分かったんだよ」
不意打ちすぎて変な声出しちゃったじゃねえか。急に喋るなよ……。
「志多野の足音がしたから分かったに決まってるわ」
「お前、足音だけで誰か分かるのかよ」
「分かるのは志多野だけよ」
心を射抜かれた感じがしたが、きっと気のせいだ。気のせいなんだ。
「あたしと一緒に寝る?」
前澤の瞳は、からかっているとか冗談とかではなく、真剣さが伝わってきた。伝わってきても困るけど。
「今日は多分そうなっちゃうかもしれんが」
罰ゲームだし。
最後は心の中で言った。言ったらめんどくさいことになりそうだからな。
「そう」
素っ気なく答えた前澤はベッドから出ると、奥のカウンターに向かう。
いつもならここはもっと喜ぶのにな。
読んでくださってありがとうございます。
感想など書いてもらえると嬉しすぎて幼女発見した志多野みたいにニヤけます。
次で2章終わりの予定です。