第二ラウンド!
この、中二的なセリフしりとり我慢比べを始めてから二時間くらい経つ。
これでは決着が着かないと気付いた俺たちは、新ステージで第二ラウンドを無言で繰り広げていた。
ルールは至極単純。我慢比べだ。
ステージ環境はさっきの風呂場とは比べ物にならない程、暑い。
砂漠、いや熱帯雨林に水着でいる感じだ。湿度が半端ない。
無心で挑まないと体が火照って負けてしまう。ましてや幼女などを考えていたら興奮して熱中症になりそうだ。
そのステージの名は『サウナ』。
もちろん設定温度は百度だ。
今回は俺と境だけでなく、前澤、阿部、田仲と参加者が増えた。
みんな一ミリも動かず、七人は座れそうな長いすに一列で座っている。
誰一人として口を開こうとする者はいなかった。
「みんなでしりとりでもやらねえか?」
この戦いが始まって十分後、無言に堪えられなかったのだろう。境がついに口を開いた。
てかしりとり好きだなお前。
「普通のしりとりはつまらんな」
ここでしりとりなんかやって、無駄に喉を使うのは得策ではないだろう。
「じゃぁ、小説リレーでどうだ?」
しりとり関係なくなったし。小説リレーの方が喉使うし。そもそも風呂場にノートないし。
「ノートねえだろ」
「俺らまだ高校生だぞ。ノートなくても脳があるだろ。記憶しろ」
境はどういうつもりなのだろうか。相手を一刻も早く脱落させたいのか?
だとしてもこれじゃ自虐的な作戦だ。
それとも、ただ暇なだけなのか。
「俺の記憶力なめんなよ。じゃぁやってやろうじゃねえか。みんなもいいよな?」
俺は三人の顔を順番に、頷くのを確認する。
「よし。境からでいいよ」
そう言うと、さっきまでの枯れた笑顔が、少々ではあったが咲いた。
「ある時、老人は叫んだ。(たたりじゃああああ)」
……出だし急だな!
多分順番は座っている順だろう。右から、境、俺、前澤、阿部、田仲と座っているので、次は俺だ。
…………えー。くそ難しいんですけど? どう繋げりゃいいんだよ。
二分程考えた後、
「老人は見てしまったのです」
見てしまったモノは前澤に託すとしよう。
「彼女の浮気現場を」
急展開すぎる! この場にいた前澤以外の人不覚にも笑っちゃったよ!
我慢比べ中でいつ脱落するか分からんのに!
「老人はショックで死んでしまいました」
勝手に殺すなよ! この物語の主人公じゃないの!?
「そんな時です。老人の魂が天へ昇っていると……」
珍しく田仲がまともに喋ったぞ!
そして境か……。
「やっぱり彼女が浮気していました」
もうそんな彼女のこと忘れちまえ!
「しかも今度は違う男でした」
「老人はあることに気付きました。(あ……あの若造、かわいい体つきしとるのう)」
やめてあげて!
「老人は知らぬ間に、特殊な性癖に目覚めていました」
もうダメだ……。
「すると、突然生命エネルギーがみなぎってきたのです」
すげえな!
「ふと目が覚めると、そこは」
変なとこで区切るなよ!
「秋葉原でした」
「…………」
なぜか突然途絶えてしまった。
まさか!
「前澤、脱落!」
ついに脱落者が……。前澤は虚ろな目をしていて、本格的にやばそうだ。
「水風呂行ってくるわ……」
一人で歩けるなら大丈夫か。前澤がサウナ室から、出て行った。
これで後四人。
まだ戦いは続きそうだ。
読んでくださってありがとうございます。
やっと勝負に決着が着きそうです。
評価、感想等を書いてくれると、とっても嬉しいです。
では次の話で。