変態と混浴なんて不本意だ!
「え~。じゃぁもういぃよ~だ! 私はたなかと入るから!」
と、聞き捨てならんことを言いながら阿部は後ろから田仲を抱く。
くそぉ、俺も抱きてえよ! いろんな意味で。
じゃなくて、阿部と田仲が一緒に風呂だと?
そんなん世界が認めても俺は認めんぞ。どうやらそれは俺だけではなく、境と女モドキも同じ考えだった。
しかし今まで性別を隠してきた田仲がこんな易々と性別が判ってしまうような、一緒に風呂に入るなんて行為をするとは思えない。
「まじで?」
俺と前澤の代弁者は境だった。
「まじだよ! ね~たなか」
田仲は物凄く歩きづらそうになっているが、表情は笑っているように見えた。
まさか! 一緒に入ることを喜んでいるのか!?
「クしゅんっ」
清楚な左手で口元を軽く抑える田仲は、彼女(彼)の幼さを引き立てていた。
俺はいつの間にか田仲に見とれていたことに気づき、反射的に反対側に顔を向けると、たくましい女性のような左手で、口元を抑えてくしゃみをする前澤がいた。
そのくしゃみには全く幼さは感じ取れなかった。
「今の田仲のくしゃみは『イエス』という意味なのか?」
境は恐るおそる田仲に聞いた。
俺は田仲のくしゃみの意味より前澤のくしゃみの意味の方が知りたいんだが……。
めっちゃウインクしてくるし。
俺は完全無視を続けると、前澤らしくないしょんぼりとした顔をするので、無性に申し訳ない気持ちになった。
「そぉだよねぇーたなかぁ」
未だに田仲の後ろに張り付いている阿部の確かめるような口調に、田仲は微笑の上ではっきりと頷いた。
――――――。
「まじで!!」
「まじで!!」
「まじで!!」
男二人、いや男三人は驚きを隠せないでいた。さすがの前澤も男が出てしまっている。
それほど衝撃的だった。
まさか本当に一緒に入る気だったとは……。
こうなってくると田仲は女という線が高くなるぞ。
次の俺の一言で、決着を着けてやる!
「しょうがない阿部、特別に俺たちと一緒に風呂入ろうぜ」
傍から聞けばこれはただのセクハラにしかならないだろうな。
阿部なら絶対この話に食い付く! そして阿部が俺たちと一緒に入ることで田仲が『一人で入る』なんてことを言えば、もうほとんど田仲の性別は女だと思っていい。
「ほんと!? 入る入るぅ~!」
阿部はやっと田仲から離れ、俺たちに満面の笑みをした。
さっきより大きくジャンプすんな。パンツ見えとるから。遠目でこっち見とる男子いるから。
喜びが隠せないのかずっとジャンプをしている。