バカとバカはバカだ
入学式が始まって、何時間経ったのだろう。
空席だった俺たちの周りも満席になって、ただならぬ雰囲気を醸し出している。
今年の新入生は六百三十二人だと、校長の長ったらしい話の中で言われた。
「では続きまして、生徒会長から新入生へ祝福の言葉を頂きます」
どうせこれも長いんだろ。
この手の話は長いくせに面白みがないからなー。
しかも女か……。もう顔から礼儀正しさが伝わってくるぜ。
「新入生の皆さん、おはよぅーございます!」
・・・
明るく元気に、且つ丁寧に生徒会長は挨拶をした。
挨拶をするのは極々普通のことだ。が、この間は何だろう。なぜ、話を進めないのだろう。
まさかこんな重い空気の中、この生徒会長は俺たちに『おはようございます』を求めているのか?
みんな言う気配ゼロだな……。なんか生徒会長がかわいそうだ。
そんな状況なのに生徒会長は笑顔を保っている。いい加減話進めてくれ……。
心が痛む。
「おはよーーうございまあああああす!」
突然、重力よりも重いこの空気と静寂を破ったのは、左隣にいる境だった。
おまけに席を立っている。
境…………お前は一人で走りすぎだ。
俺だって一緒に走ってやるよ!
「おはよーーうございまあああああす!」
俺も席を立ち、隣の境に笑いかける。
境もそれに応え、そして俺たちは羞恥の半端ない重さによって席に着いたのだった。
ただ生徒会長がこちらに向けてくれた微笑みだけが救いだった。
しかし俺と境は入学式が終わるまで、ずっと俯いていた。