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夢幻の瞳 現の涙  作者: 橘 伊津姫
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19章 仕組まれた戦い・叛乱の烽火

サマル・ビュイクの屋敷に招かれた貴族達。

そこで彼等に告げられた言葉は、耳を疑うものだった。

自分達が従おうとしているものの正体は?

逃れる事のできない戦いが始まろうとしている。


「閣下」

 長椅子にだらしなくもたれかかり、手にした杯を口に運ぶサマルは声の聞こえてきた方へ視線を流した。

「カーティか。何用だ?」

 酒で濁ったサマルの視線を受け止めたのは、灰色の簡素なドレスをまとった砂色の髪の薬師だ。

「まだこんなに日も高うございますのに、ご酒が過ぎるのではありませんか?」

 室内へ足を進めながら、カーティがサマルの姿に眉をひそめた。

「ふん。イルネアのような事を申すな。ようやく、こうるさいアレから解放されて、せいせいしておるのだから」

 口唇の端に憎憎しげな笑みを刻み、サマル・ビュイクは手の中の杯を干した。

「やれ、王族としての務めだの、領主としての心得だのと、まったくうるさい事を言う女であったよ」

「それでも、愛しておいでだったのでございましょう、奥方様の事を」

「愛して? ははっ、私がイルネアを? 私がこの地位に登りつめるために、あの女の持っていた『王族』の肩書きが必要だっただけだ。私が愛していたのは、イルネアの『前国王妹』という肩書きだけなのだよ」

 長椅子に寝そべったまま、サマルは杯を掲げて嘲笑った。

「また、そのような憎まれ口を申されて」

 カーティは薄く微笑み、サイドテーブルの上にある銀の酒瓶を手に取った。

「イルネア様が珠春宮に残られて、お寂しいのではございませんか? それにティルス様まで」

 カーティに酒を注がせながら、サマルは吐き捨てるように毒づいた。

「ティスルだと? ふん、あのように不甲斐無い奴。覇気というものが、まったく感じられんのだからな。まったく、一体誰に似たのやら」

 長椅子から起き上がり、テーブルに杯を叩き付けると、ガウンの裾をひるがえしながら室内を行きつ戻りつし始めた。

「何が治療院設立の責任者だ。どうせあの小賢しい王妃と宰相のリュフォンが、要らぬ知恵をつけたに違いないわ」

 親指の爪を噛み、頭上に振り上げ、体の前で両腕を振り回し、サマル・ビュイクは昂ぶった感情を吐き出し続けた。

「落ち着いて下さいませ、サマル閣下」

「落ち着けだと! これが落ち着いていられるかっ! あれから一体、何日が過ぎたと思うておる。まったく、最近ではコルウィンの奴まで、生意気に意見をして来おる。大人しく、珠春宮の奥でふせせっておれば良いのじゃ。ここに来て、偉そうに国王面などしおって」

「お言葉ですが、閣下。コルウィン陛下はまだ、至尊の御位みくらいから退かれた訳ではございませんもの。国政に口をお出しになるのは、当然の事かと」

 なだめるように言葉を紡ぐカーティに、サマルは噛み付かんばかりに怒鳴り声を投げ付けた。

「何が至尊の御位だ! 何が国政だ! 国を動かすべき国王が、あのような体たらくで何とする。国の先頭に立つ者は、もっと心強く、身健やかでなくてはならん。一日の大半を寝所にこもって過ごす彼奴あやつに、この瑰を導いて行く事など出来るものか!」

「いかにも。この国を率いて行くべきは、閣下のような聡明にして壮健な方。サマル・ビュイク・ノーヴィア閣下こそが、国王陛下に相応しいのです」

「黙れっ! そのような戯言、聞き飽きたわっ!!」

 テーブルの上の杯を鷲掴みにすると、サマルは壁に向かって投げ付けた。精緻な透かし彫りを施したガラス杯はカーティの頬を掠め飛び、その背後の壁にぶつかって砕けた。杯は満たされていた酒を撒き散らし、粉々に砕け散った破片と共に、毛足の流い絨毯を汚した。

「落ち着かれませ、閣下。そのように気を乱されては、大いなる野望へ続く途への障りとなりましょう」

 サマルの様子を楽しむように、カーティは艶やかな声で告げた。

「閣下には、長い時間をお待たせしてしまい、大変心苦しく思っております。お喜び下さい。とうとう時が到来いたしましたわ」

「何っ!? それは本当か! それでは──?」

「はい。ウィルカより、叛乱の火が挙がりました。いよいよでございます」

「待ち侘びたぞ、その報せを! 確かなのだろうな?」

 カーティに詰め寄るサマル・ビュイクの瞳には、凶悪な光が灯り始めている。それをいなすかのように、女薬師は微笑を浮かべて身をひるがえした。

「ウィルカに残しておきました、イーギムから昨日連絡が参りました。ターニヤ殿が、王家の密命を受けた神殿の巫女に──」

「ふん、こしゃくな事を。己の手を汚さぬつもりらしいの。いかにも王族連中の使いそうな方法よ」

「あれ程、街の人々のために慈悲深くあられた方です。そのターニヤ殿が亡くなられ、しかも、それが王家よりの命令であったとなれば、ウィルカの者達も黙ってはおりませぬ。これまでの不満も相まって、一気に爆発したのでございましょう」

 カーティが冷たい印象を与える笑みで告げた言葉に、ノーヴィア公爵も酷薄な笑いを浮かべて答えた。

「すべては、お前の書いた筋書き通りと言う訳か。そのためにウィルカの領主・ターニヤの命、そして何も知らぬ街の者達の命を使うとは。つくづく恐ろしい女よの」

 先程までの激昂した様子は嘘のように鳴りを潜め、サマルは長椅子に身を沈めて、満足そうに息を吐いた。まるで満腹になって喉を鳴らす猫のようだ。

「何を申されます、閣下。すべては、あなた様のためでございましょうに。サマル・ビュイク閣下が、この瑰と言う国を手に入れられるため。その野望を果たさんがため、瑰の人間達の命をお使いになられる閣下こそが、まさに王者に相応しいのですわ」

 長椅子に深く腰かけ、脚を組んでふんぞり返るサマルの背後に、不吉な兆しを告げる天使のようにカーティが位置を移す。

 平穏な時代、戦歴の乏しい貴族諸侯は怠惰な生活に慣れ切り、美食と享楽によってたるんだ精神と、それに見合った体付きになっている。

 だがサマル・ビュイクは、ガッチリとした壮健な体付きをしていた。まさかこの謀叛を想定していたわけではあるまいが、多くの高位貴族の中では珍しく鍛錬を欠かしたことがない。いかに享楽にふけようと、日々剣を振る腕に衰えはない。

 その鍛えられた腕に白い手をかけながら、燃え上がる陰火に甘言と言う名の油を注ぎ続けるのは、砂色の髪をした美女だ。

「閣下は瑰の国主となられるお方。民草は主の持ち物でございますもの。閣下が民をいかにお使いになろうと、誰はばかる事のありましょうや」

「いかにも。王座の礎となるのだ。無血で手に入れられる栄華など、この世にありはせぬ。我が至尊の位への踏み台となるのだからな。大局のために流される多くの血が、我が王座をより輝かしいものにしてくれるだろう」

「では閣下。同志の方々にお集まり頂き、輝かしき栄光への第一歩を」

「うむ」

 熱にうかされたように紅潮した顔で、サマルは獰猛な笑みを浮かべた。

「早速、各地に布令を出し、同志の方々をお屋敷にお呼び致しますわ」

「そなたに任せる」

「御意に」

 カーティは恭しく頭を下げると、静かに部屋を出た。閉じられた扉の向こう側から聞こえてくるのは、サマル・ビュイクの高らかに笑う声。その凶夢の中では、至尊の御位に就き、栄光の宝冠を戴いた己の姿に酔いしれているのだろう。

「御主様」

 背後から若い声がかけられる。振り返ったカーティの表情は、先程までの女薬師のそれではない。倣岸ごうがんな嘲笑を張り付けた、冷酷な支配者の顔をした砂色の髪の美女は、声の主を従えて廊下を進む。

「首尾はどのようになっておる? ウィルカの様子は?」

「はい。御主様の御命令通りに。ターニヤはバフォナとしての本性を顕現けんげんする事無く、あくまでも『ウィルカの領主』として討たれました。街の人間には、孤児院の者達が報せております」

「そうか。手抜かりはないようだな」

「巫女は逃げおおせたようですが、ウィルカの人間共は、王家とそれに関わりの深い各神殿から送り込まれた、密命を受けた刺客ではないかと疑っております。ここでサマル・ビュイクが声を挙げれば、くすぶっていた民衆の不満に一気に火が点くかと」

「ご苦労だったな、イーギム」

 肩越しに流して寄越した視線の先で、無表情で頭を下げている若者。それはウィルカの街で、アイヒナを案内していた青年だ。

「ターニヤも、見事に役目を果たしたな。後は、ほんの少し背中を押してやるだけだ。いよいよ幕が開く。血塗られた宴の幕が、な」

 冷え冷えとした気配をまといながら、衣擦きぬずれの音をさせてカーティが歩む。

「さて。サマル・ビュイク・ノーヴィア公爵閣下のための舞台を整えてやるとしようか。我等にとって大切な、操り人形のための大舞台を」

「心得まして」

 廊下の先の凝った闇の中に、人にあらざる者二名の不吉な足音が溶けて行く。


**


「今宵お集まりの同憂どうゆうの士よ。各々方に問いたい。今、真実この国を憂えているのは、誰なのかと言う事を!」

 月のない夜。領地を見渡す、小高い丘の上に建つ堅牢な館。コルウィンの父親である前国王より公爵位を拝命し、前国王妹の夫として王家と姻戚関係を結んだ男の声が、静かな夜を貫く。

「この国は現在、未曾有の危機を迎えている。民は死と眠りにおびえ、人心を安らげるはずの現王陛下は、ご病床の身であられる。ならば、王弟殿下が陛下をお助けし、国を治められるのが筋と言うもの。だがトウージュ王弟殿下は珠春宮を空けられたまま、未だお戻りではない」

 現国王コルウィンの叔父という肩書きを持つ、サマル・ビュイク・ノーヴィア公爵は、大広間に設えた席に集った面々を見回した。

 テーブルに置かれた、繊細な飾りを施した銀の燭台がろうそくの柔らかな光を反射し、大広間を仄明るく照らしている。

 妙にギラついた視線で熱弁をふるうサマルを見つめるのは、いずれも目許を仮面で隠した男達だ。揺れるろうそくの灯りに照らされて、どの顔もいびつに歪んで見える。

「今、我々がこうしている間にも、この国を己の思うがままに牛耳ろうとする宰相リュフォンや、身の程もわきまえぬ佞臣ねいしん達が、主を裏切り瑰を傾けようとしておる。王妃とは名ばかりの妖婦、アイナセリョースがリュフォンと結託し、瑰を乗っ取ろうとしているのだ」

 拳を固め、自分に集まる熱をさらに高いものへと変えていく。サマル・ビュイクは自分のその姿を想像し、酔いしれた。これまで夢に見ながら、口外する事をはばかられた望み。王位継承権第三位という、近いようでいて遠い玉座への道。

 当代国王のコルウィンが病に臥してからは、本当に悔しい思いをしてきた。国王の叔父として、国政に思うさま腕をふるおうと、密かに熱意を抱いていたのだ。だがコルウィンは、己の妃アイナセリョースと宰相であるリュフォンに国政を任せ、サマルの口出しを許さなかった。

 領地にくすぶっているのではなく、中央で存分に力を発揮したいと考えていたサマルの望みは、あえなくついえたのだった。

(私を所領へ押し込め、中央から遠ざけようと言うのか。若輩者の分際で、ノーヴィア公爵であるこの私を)

「もはやパーティルローサには、国を憂える者はいないのだ。瑰を導いて行く事の出来ぬ王は必要ない。当代陛下には玉座より退いて頂こう。瑰の玉座には、真実、国を支えるに相応しい人間が就くべきと考えるが、各々方いかに!?」

 長広舌(ちょうこうぜつ)をふるい終わったサマルは、満足気に大広間を見渡し、己の言葉の浸透していくのを待った。

「それで、新王には御自分が起たれると? 要するに、我等に王座簒奪さんだつの手伝いをせよと、こう申される訳だな?」

 サマルの位置から中程の席に座った男が声を挙げた。白髪混じりの男性は、鳥を象ったシルクの仮面。

「そのように理解して頂いて結構。何か不満な点でもございますかな?」

 傲慢に頭をそらし、仮面の男を見下しながらサマルが問うた。

「この実情を憂う我々同志が立ち上がり、新たな国を造り出す絶好の機会ではありませぬか。そして、お集まりの諸侯の中で、私程に国を思っている者はおらぬと自負しております。私はただ、不安と恐怖におののく民を救いたい。瑰という国を安らかにしたいだけなのだ。私よりも王となるに相応しい者がいるというのであれば、喜んで従おう」

 両手を広げて熱く語ったノーヴィア公爵に向かって、仮面の男が冷たく言葉を投げ付けた。

「それは詭弁きべんというものではございませんかな、ノーヴィア公。確かにワシも、当代陛下のなさり様には不満もある。国の進み行く先が、このままで良いとも思うてはおらぬ。だが陛下は、正統なる継承者である事に間違いはないのだ」

「なる程。ではけいは、正統であれば政をないがしろにしても構わぬと、こう仰る訳か」

「そのような事を申上げる気は、毛頭ござらん。だが、公が仰るほどに、リュフォンや妃殿下が国を欲しいままにしておるとも思えんのだ」

「ならば卿は陛下の側に立たれると、こう申されるわけですな」

「いや。ワシは陛下の側にも、あなたの側にもつきはしませんぞ。陛下の御味方をする程、ワシはあの方を認めてはおらん。じゃがノーヴィア公。ワシは一族の命運とこの身を賭ける程、あなたを信用もしておらん」

 仮面の男の発言に、大広間にざわめきが広がった。

「お集まりになられた諸侯等も、今一度、よくお考えになるべきだ。自分が足を踏み込もうとしている沼が、どれ程深いものなのかと言う事をな」

 そう言うと、目の前に置かれていた杯を手に取り、満たされていた酒を飲み干した。テーブルに杯を戻すと、仮面の男は立ち上がり決別の言葉を口にする。

「それでは、ワシは下がらせて頂くとしよう。ノーヴィア公。あなたの計画を、中央に報告する気はございませんので、どうぞご安心を」

 サマル・ビュイクに向かって一礼し、部屋を出て行こうと身をひるがえした瞬間──。

「む……?」

 いぶかしそうな声を挙げて、仮面の男は硬直した。

「うっ……がっ……。がはっ! ぐ……あ……」

 酸素を求める魚のように、口をパクパクと開閉させて、男はあえぎながら喉をかきむしる。

「ぐあぁ……あ……ノーヴィ……ア…公──。あな……たと言う……人は……」

 もがいた拍子に、鳥の仮面が外れた。その下にあったのは、驚愕と恐怖と苦痛に見開かれ、醜く歪んだ眼。

「がっ!はっ……ぁ──」

 右手を喉に、左手をサマルに向かって伸ばした男は、血の混じった泡を吐きながら崩れ落ちた。

「これはこれは。ガウンディ伯ではありませんか」

 口唇に冷たい笑みを張り付けて、サマルは事切れた男に近寄り、妙に冷めた瞳でその亡骸を見下ろした。

「あまりにも偉そうな口をおききになるので、どこのどなたかと思いましたぞ」

「ノーヴィア公爵! これは一体、いかなる所業でございますか!?」

「まさか、そなた──。酒の中に毒を!?」

 大広間に集った仮面の群れから、怒声と悲鳴があふれた。立ち上がって叫ぶ者。サマルを指差して糾弾する者。彼から少しでも遠ざかろうと、大広間の隅へ逃げる者。自分の目の前にある杯が、まるで蛇にでも変じたかのように恐れおののく者。

「ご安心召されよ。各々方の杯に、毒など仕込んではおりませぬよ」

 サマルはそう言うと、自分の手近な所にあった杯を持ち上げ、やおら中身を飲み干した。周囲に立つ者達が固唾を飲んで見守る中、ノーヴィア公爵は大きく息を吐き、杯をテーブルに戻した。

「これ、この通り」

 おどけた仕種で肩をすくめ、サマル・ビュイクが人々を見回す。

「だ、だが現に、ガウンディ伯爵がこうして……」

 震える声で告げた人物の方へ、笑える公爵はゆっくりと向きを変えた。

「私が……このノーヴィア公爵である私が、何の保険もかけずに、このような重大事を諸侯等に打ち明けるとでも? 今の話を聞いて、私に賛同せずにおる者が、無事にこの館から戻れるとでも? それは少々、考えが足らんのではないかな」

「閣下に従い、裏切らず、共に瑰の玉座を目指す限り、皆様方には何の障りもございませんわ。ですが──」

 いつの間に現れたのか、砂色の髪をしたカーティがサマル・ビュイクの傍らに寄り添いながら、怯える面々を睥睨へいげいする。

「ですが閣下を裏切り、正義の在処を判じえず、我等に背を向けると言われるのであれば、必ずやその者の上に不幸の翼が広がる事でございましょう」

「く、薬師殿! そなた、一体何を申しておるのだ!?」

「あら、お判りになりませんかしら? わたくしは、どこまでも閣下にご一緒致します。ですから、閣下やわたくしの邪魔をなさろうという方々は、いかなる理由があろうとも、敵と見なします。そしてわたくしは、敵に対して容赦いたしませんわ。先程のガウンディ伯爵のように、特定の方の杯に毒を仕掛けるなど容易い事です」

 ザワリ、と空気が動いた。

「あなたは、我々を恐喝なさろうと言うのだな、ノーヴィア公」

「恐喝? これは異な事を申される。私はこの国の行く末を見据え、共に道を歩もうと申上げているのですよ。そしてそのために、わずかばかりの保険を掛けさせて頂いたまで」

「なる程。当代陛下をしいし奉り、貴公が王冠を戴くための道を──と言う訳ですか。貴公と共に行く限り、我等に害はないと──」

「その通り。我が栄達の暁には、卿等には相応の地位をお約束しよう」

 黒いドレスを身にまとったカーティに寄り添われ、サマル・ビュイクはハイエナのような笑みを浮かべた。

「さあ、皆様方。新たな瑰国のために、我等が力を一つにしようではありませんか」

 カーティが合図をすると、新しい杯を載せたワゴンを押して小姓達が入ってくる。

「どうぞ、杯をお取下さいませ。もちろん、この杯には何も入ってはおりませんので、ご安心下さいませ」

 人間を悪事に誘い込む悪魔は、きっとこんな笑顔をしているのだろう。艶めく微笑に促され、仮面の群れは杯に手を伸ばした。

 後戻りの出来ない道を、命がけで進むために──。


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