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殺され屋  作者: うわの空
10/18

「…なんだ、あんたまた来てたのか」

 喫茶店に入ってくるなり、アクマは面倒くさそうな声を出した。

「悪い?」

「いや」

 私が睨むと、アクマはマスターの方を見ながら笑った。

「よかったなあ、爺さん。常連客ができて」

 そう言うと、いつものように一万円札をカウンターに置いた。今日は4枚だった。

「じゃあな」

「ちょっと待って」

 そのまま出て行こうとするアクマをひきとめたのは、私だった。

「なに」

「…コーヒーでも飲んでいったら?」

「要らねえよ」

 アクマはそのまま手をひらひらと振りながら、店を出て行った。


「…失敗しちゃった」

 私は苦笑いして、自分のコーヒーを飲んだ。

「何か話したいことでもあったんですか」

 マスターが不思議そうな顔でこちらを見る。私はカップをソーサーに戻すと、「うーん」と唸った。

「なんだかちょっと気になって。彼、私の弟と少し似てるところがあるような…」

「ほお…」

「あ、いや。弟はあんなふうにひねくれてなかったんですけど」

 私が笑うと、マスターもつられて笑った。

「まあ彼はなんだかんだ言って、もう60歳を超えてますからね」

「そうですね」

 そう言いながら、私は彼のことを思い出していた。


 何かを隠している暗い瞳。その色は悟の瞳と、よく似ていた。



「…追いかけたらどうですか」

 マスターに言われて、私は顔をあげた。マスターは壁にかかっている時計を確認すると、

「もう店じまいしているでしょうけど、あの中にいますよ」

 そう言って笑った。私はしばらく考えてから、マスターにお礼を言った。鞄から財布を取り出すと、コーヒー代よりも多い金額をカウンターに置いた。

「ここのクッキーって、包んでもらえたりしますか?」

 それを聞いて、マスターは嬉しそうに頷いた。


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