宿命
『物心つく前から、なにか他の人とは違うってわかってたんだ』
彼は急にこんな事を言い出した。
バイト先で出会った彼は、とても素敵だった。そして私も、何か変だと気付いてた。爽やかで朗らかな彼の笑顔、でもその瞳の奥になにかとてつもないものが、暗い影を落としている感じ。
『ボクには、キットなにか取り憑いているんだ』
そんな突拍子もない言葉も、どこか信憑性を帯びて私の心に響いた。
どこかためらいを感じたけど、彼の笑顔、仕草、話し方、すべてに引き込まれていった。
そして私達は付き合い始めた。一ヶ月が経ち、半年が経ち何事もなく、彼の暗い影はだんだんと薄くなっていくように思えた。
付き合い始めて一年、記念日の今日、彼の家に初めて泊まりに行くことになった。彼と食事をして、DVDを観て楽しい時間が過ぎていった。
そこで彼は悲惨な体験を語ってくれた。
「子供の頃、こんなことがあったんだ。ボクには友達なんて一人もいなかった。その日も公園でいつものように一人ぼっちで遊んでいた。砂場でお城を作っては壊し、山を作ってトンネルを掘っては壊していた。十七時きっかりにチャイムが鳴り、そのチャイムと同時に家に帰るのが習慣だったんだけど、その日は何故かチャイムが鳴らず、気が付けば辺りは真っ暗だった。誰もいない公園の砂場で一人佇んでいた。ボクは恐ろしくてすぐにでも家に帰りたかったが、まだ小さく暗闇に慣れていないボクには無理な話だった。そんな時、気配を感じて振り向くと、そいつはゆっくりと近づいてきた。ただ無言で、歩き方もどこかおかしかった。ボクは凍ったように動けなかった。街灯がそいつの顔を照らし始めると、口角だけを吊り上げた気味の悪い笑顔が見えた。そいつは立ち止まると、ポケットをまさぐり何か光る物を取り出した。たぶん、ナイフか何かだったと思う。そいつは急に素早く動きボクに襲い掛かってきた。もうダメだと思って目を瞑った瞬間、その時何かが起きた。何本もの木の枝を、すごい力でへし折るような音が響いた。少し気を失っていたんだと思う。目が覚めた時にはもう、外は明るくなっていた。そして何があったか思い出したボクは、その男が立っていた方を見た。そこにあったのはもちろん、そいつの死体だった。一生トラウマになるような凄惨さだったよ……」
彼には辛いことがいっぱいあって、更に追い討ちをかけるようにそんなことがあったなんて夢にも思ってなかった。自然に涙が溢れ出した。いろんな物がこみ上げてきた私は、彼を抱き締めた。
「イタイ!!」
ゴリリリリリ
「ユミ! ユミ! しっかりしろ!」
「ダ、ダズゲ……」
ゴリュ
「何故だ!? 何故ユミまでこんなことに……」
『あの男の死体、異常ですよ……あの子供が……やったんですか……?』
『わからん、だが子供が大人の首を真逆に向けて、なおかつ、両手両足の骨を折り螺旋状に巻きつけるなど到底不可能だろう……』
2008/7




