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ドッペルゲンガー

掲載日:2026/07/15

挿絵(By みてみん)

 

 夜中に創作をしている自分の分身を、背後から眺めることがある。


 すっさまじい勢いでキーボードに指を疾走らせ、なにかクスリでもヤッてるんじゃないかというような、充血した目でモニターを睨みつけている。

 白く輝く画面の中が、みるみる文字で埋まって行く。

 誰にも見られる事は無い。

 誰にも知られることは無い。

 まさに無駄の極み。時間と労力と人生の浪費そのもの。

 そうして書き上げた駄作を、嬉々としてインターネットの海に流し込んでいく。

 アクセス解析を見ては、はぁ、とため息をつき。

 たまに来るお叱りの言葉を読んでは、うげぇと嘆き。

 返信を読み返しては、ウンウンと頷き返したり。


 うん、コイツ、なにヤッてるんだろうね。

 そんな自分の分身の姿を、背後から眺める事がある。


     ~ D・G ~


 いつもは後ろから眺めるだけなので、たまには正面から覗いてやろうと思い立った。

 コイツのペンネームに、細工すれば良いだけの話。

 なぁに、偶然とは必然。思いも寄らない話というのは、何も小説に限った事じゃない。

 コイツら創作者だと威張っているような連中は、モノを知っているようで、実はなんにも知らないのだ。

 事実は小説より奇なり、という事を、な。


 全く同じペンネームだと、世界の管理者(なろう運営)に弾かれる。

 しかし、隙間からただ“覗く”だけなら、なんの問題もない。

 日本語の苗字と名前は、間を空けて表記するのが正しい在り方。

 その僅かな隙間、そう、半角程度でいい、その隙間があれば、コイツの顔を覗いてやれる。

 あとは、出逢うのをひたすら待つだけ。

 活動的(アクティブ)なコイツの事だ。

 偶然とは必然。

 思い描いた事というものは、思い通りに描くことのできるこの世界に於いて、間違いなく成し遂げられるものなのだよ。

 ほぉら、来た。


     ~ ・ ~


 おれは、感想欄に映った自分のペンネームを見て、一瞬だが、固まった。

 あれ? おれ、こんなの書いたっけ?

 まあ、たくさん書いてるしな。そういうこともあるよな。

 でも、文面はおれのものじゃない。絶対に違う。

 そもそも、おれの書く感想は、他の人はマネしないし、マネしようがないし、マネできない。

 AIになんて、まず絶対に無理。

 心の(アツク)無いヤツラの書く文章は、心の無(つめた)い文章にしかならない。

 定型文やビジネス文書であれば、便利な道具であるとも思うが。

 AIが、感想を書く?

 バカ言っちゃいけない。ヤツラが書けるのは、粗筋(クソ)だけだ。

 読んで、どう思ったか、どう感じたか、どう刺さったか、そんなものは書けない、書けるはずがない、書けたりなんかしない。

 白河夜舟が書くものは、唯一無二のオリジナルなのだ。

 おれの存在、おれの才能、おれの魂、そのものなのだ。

 ……などと考えながら、画面に見入ったまま、おれはもうしばらく、硬直し(かたまっ)ていた。

 で、これ、誰?

 おれ、こんなの、書いてないぞ?

 少しだけ、頭が回って来た。

 よぉくよく見ると。

 苗字と名前の間に、半角スペースがある。

 隙間があって、そこから、もう一人のおれが、おれの事を覗き込んでいた。

 ……ように、見えた。

 ……そう、見えたんだ。


 ドッペルゲンガー。


 もう一人の自分。


 そっくりさん。


 え? え??


 うわぁ、まさかまさかの、ペンネームかぶりかぁ……

 どうしたらいいのか分からず、途方に暮れるというか、悩みに悩んだ。

 動転して、とりあえずトイレに行って、ついでに水を飲んで、再びモニターの前に戻って来た。

 全く関係のない作品主様に、感想を書いた最後の方に、ペンネーム被りをご報告した。(多分、勘違いされてると思うんで)

 で、どうしよう。


 悶々としたまま、時間を空けて。

 感想を書いた作品主者様から、爆笑と共に、親身になって頂けたのは、ありがたかった。

 それで、固まった頭が、解れてきた。


 なろうのシステム的に、ペンネームは簡単に変更できる。

 なんなら、作品ごとに変える事だって出来る。

 ただ、IDは代えられないし、複数持つことも禁じられている。

 なので、自分か、先方か、どちらかがペンネームを変更すれば良い、だけの話。

 恐る恐る、先方にメッセージ。

 いや、これは偶然。なんだコイツ、おかしなメールを寄こしやがってと思われないか、実は少し震えた。

 いやいや待て待て、被害者はお互いさま。まさかこんな奇特なペンネームが被るだなんて、思いも寄らなかったってば。

 確かに『白河夜船』は四字熟語として認識されてはいる。

 吉本バナナ先生の作品として、世に知られてもいる。

 でもなぁ、ちゃんと一字もじって、そんな大きな船にはなれない、ただの一層の小舟なんです、この世界の片隅でチョロチョロと書かせて下さいませ、と。

 そう、決意を胸に定めたペンネームなのだよ。

 なのだよ、なのだよーなんだけど。

 おなじ感性か。そうだよな。まさかなぁ。

 なので、多分大丈夫。怒ったりしないと思うし、きちんと現実を受け止めて貰えるはず。

 なんだけど、おれ、なんか、変なこと書いてるよなあ。

「これ、(作品の)ネタにしてもいいですか?」

 おれ、どんだけだよ。失礼だろ。普通やらんだろ。

 おれ、どんだけ書きたいんだよ。自分さえ良ければいいのかよ。いやでも、こんなネタめったにというか、書かないでどうするんだよ、こんな極上の、天から降ってきたようなネタを、よ。


 快く、許可(おゆるし)を戴き、たった今、こうして書いております。いい人で良かった。


     ~ ・ ~


 で。

 ドッペルゲンガーに出逢うと、命が失われるのだそうです。

 そう、まさに死ぬんです。

 おれが出会ったのは、ペンネーム「白河 夜舟」というドッペルゲンガー(死を告げるもの)

 なので、おれの「白河夜舟(ぶんしん)」は、お亡くなりになられるのです。

 だってそうでしょ。こんな似たようなペンネーム、混乱(カオス)しか起こさないでしょ。

 なので、誰もが分かるようにすれば良いんですよ。

 で。ドイツ語のドッペルゲンガー「Doppelgänger」から、DGを抜き取って、真ん中に入れちゃえばいいかな?

 白河・DG・夜舟は「シラカワ・ドッペルゲンガー・ヨフネ」とお読みください。

 創作している自分って、つまるところ「もう一人の自分」でもありますし。

 それってつまり、ドッペルゲンガーみたいなもんだし。

 うん、これからは、これで行きましょう。


 そういうことで、現実にこんなことがあったんだよ、というご報告でした。



                         白河・DG・夜舟



 あ、似たような響きでも「ドッペルギャンガー」じゃないよ。あの自転車やアウトドアブランドのメーカーの名前は、単なる綴り間違い。創業者が自分の間違いを認めなくって、そのまま登録したんだってさ。



                         (おしまい)


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― 新着の感想 ―
ドッペルゲンガー…… 調べてみました。輝夜様、うわぁ、たくさん居られた……びっくりです。 名付けたのは10年近い前……大丈夫だ……って、もっと古い方もたくさん!! ……気にしないようにしましょう(汗…
なるほど! ペンネームが重複した人が居たと! その出会いから作品が生まれたと! 今後のコラボ作品に期待します!(無茶ぶり)
すき間から感想を書きにきました2号でございます。なんだか現実と虚構の狭間にいるような気分でとても楽しく読ませていただきました! 余波まで生んでいたようで…。申し訳ないです。これからも応援しています。
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