ヒノクニ――隣
畳の上にゴロリと横になる。
ちゃぶ台の上には、沢山の紙の束。どれもユウキが留守にしている間に届いた、侑子からの手紙だった。
手紙には度々写真が入っていた。ユウキはその束を手に取ると、仰向けのまま一枚一枚を時間をかけて眺めていった。
――ユーコちゃん、笑ってる
浴衣姿で友人と並んだ写真。いとこたちとスイカを囲む写真。兄の婚約者と写った写真。どの写真に写る侑子も笑顔だった。
最後の数枚は、ライブハウスのステージの上で歌う侑子の姿だった。以前手紙で説明されていた、学生向けイベントに出場した時のものだろう。この写真の侑子だけは笑顔ではなく、真剣な表情で前を見据えていた。その写真には付箋がついていて、そこには『ユウキちゃんの作った曲歌ってるとこ!』と説明が加えられていた。
「あの曲、歌ってくれたんだね」
写真に向かって語りかけた。あの曲は前回の巡業の間に書き上がった物だった。
「俺も同じの歌ったよ。今日も歌った」
言いながら目を閉じた。浮かぶのは妄想――――さっきまで立っていたステージの上で、あの歌を歌う。隣には侑子が立っていて、彼女の声でメロディが繰り出されていく……しかし現実には、その曲を歌う侑子の声を、ユウキは聞いたことがなかった。
「顧問のサトウ先生」
もう一度写真に目をやれば、侑子の隣で彼女と同じ形に口を開ける、中年男が目に入った。手紙には、彼が侑子とあの曲を歌うことになった経緯も書いてあった。
「羨ましいよ。俺がそこに立ちたい」
呟き声は誰に聞かれることもなく、夏の夜の空気中に溶けて消えていった。




