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青い半魚人  作者: 松下真奈
第二章
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手紙⑩――ユウキから侑子へ

ユーコちゃんへ


やっと手紙が読めた!

たくさん書いてくれていたんだね。手紙が届く度にジロウさんが知らせてくれていたんだ。封は開けないようにお願いしていたから、帰ってくるまで読むことはできなかったんだけど。

長いこと返事が出せなくてごめん。普通の手紙みたいにその辺のポストから届けられればいいのにって、何度思ったことだろう。


巡業はとても楽しかったよ。

正直最初は疑心暗鬼な気持ち半分、楽しみ半分って感じだったんだ。何より君と今までみたいにやりとりができなくなることが寂しくて。

でも帰ってきて思うのは、行ってきて本当に良かったってこと。

 

ユーコちゃんに伝えたいことがたくさんあるよ。そんな思いが得られただけでも、大きな収穫。

知らないお客さん達の前で歌うこと、そして新鮮な反応をもらうこと。「こんなに緊張するものだったか?」ってびっくりしたんだ。

「やった! 笑わせることができた!」っていう爽快感。「次の曲も凄いんだぞ」って、勢いづいてどんどん大きくなっていく気持ち。

初めてのステージで声を出す度に、新しい自分と出会っていく感覚なんだ。

不思議だね。ユーコちゃんと会って、噴水広場でマタナを封じた自分だけの声で歌えるようになった時。あの時でもう、自分の歌歌いとしての形は完成したように思っていた。

だけどそうじゃなくて、いくらでも変わっていく。成長の余地があるんだと分かった。


ユーコちゃんと歌いたい。


君が隣にいたら、そんな変革作業もどんなに楽しかっただろうって。それだけが今回の巡業中に感じた心残りだ。


……ごめん。とても独りよがりなことを書いた。


あまり王都の外に出たことはなかったから、一度に色々な土地を巡ることができて興味深かったよ。

バンドメンバーとハルカと一緒に、津々浦々旅行に行った感覚だね。


ヒノクニは美しい国だ。きれいな景色をたくさん見た。ステージから眺める風景もきれいだけど、それだけじゃない。

地図で見ると小さな国に思えたけど、そんなことはないんだと分かった。

ユーコちゃんにも見せてあげたい。写真を撮ったけど、そこに写る以上に美しいんだよ。

それと今回の巡業中に、新しい曲のアイディアがたくさん思いついたんだ。形にできたら、手紙に楽譜を書くよ。ユーコちゃんにも歌ってもらいたいから。


もう春休みは終わっているのかな。こちらの梅の花はすっかり終わってしまったよ。もうそろそろ桜が咲きそうだ。

ツムグくんは毎日スケッチしながら、蕾の様子を観察してる。ユーコちゃんにも一枚どうぞって、今朝描いた桜のスケッチを貰ったので入れておくね。あの大きなクマのあみぐるみも一緒に描いたんだって。


同好会の友達と楽しく過ごしているみたいで良かった。

新学期が始まったら、今度はユーコちゃんの後輩達が入ってくるんだね。たくさん仲間が増えることを祈ってるよ。


ユウキ

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