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聖剣の勇者8


 翌日、また集まり話そうと思ったが、エリオットとミアはデートだと言って町に繰り出してしまった。こちらが魔族という事はバレた時点で伝えてはいるが、最早二人には人間と魔族の確執など取るに足らない事のようだった。


 その時に少し話をしたが、エリオット的には勇者になったからといって魔王城へ攻め入る事は考えていないとの言質をとった。愛する人を悲しませたくない、と言ってまたミアが感動していた。砂糖を吐きそうだ。


 そうなると必然的に三人で集まることになる。あまり泊まっている部屋に異性を呼びたくは無いなーとは思いつつ、内密な話をできる場所が限られているから仕方がない。私自身もラルフに関して気になることがあったので、他の二人がいないのも都合が良いか、と思うことにした。


 ノエルは我関せずといった様子で相変わらずベッドでまるっこい形になってくつろいでいる。緊張しているのは私だけだ。ラルフも最初は部屋に入ることに戸惑ってはいたが、内容が内容なので仕方ないでしょ!と押し切る形で部屋へ押し込んだ。


 部屋には簡易な椅子はあれど一脚しか無く、そちらにラルフに座ってもらい、私はベッドに腰掛けた。


 暫く沈黙が続く。しかしこの気まずい状態のまま膠着してもらちが明かない。私は重い口を開いた。


「それで、その。私達の種族の事なんですけれど」

「……魔族って事だろ?」

「や、やっぱり気がついていたんですね。どうして?私、人間に擬態するのヘタだったのでしょうか」

「敬語」

「へ?」

「敬語やめて欲しいな。そうしたら話すよ」


 にこにことした笑顔が怖い。距離の詰め方おかしくないかとも思ったが仕方がなく、わかったわと返事をした


「ありがとう。なんか敬語だと違和感があって……」

「違和感?」

「うーん。まぁこっちの話」

「はぁ……」

「君の事、なんで魔族だとわかったか、だったよね?」

「えぇ」


 ラルフは逡巡した後、ちらりとノエルの方を見やる。


「ノエルから聞いていない?」

「ノエルから、ですか?」


 私もノエルの方を見やると、つーんという音がつきそうなくらい顔を逸らしていた。この状況でよくそんな事ができるなと思った。無理矢理こちらを向かせて片手でほっぺをむにっと掴む。ふさふさのもちもちだ。


「僕しらな〜い」

「白状なさい」

「…………しらないもん」

「ごめん、ノエルのせいにしたいわけじゃなかったんだ。怒らないであげて。そうだなぁ、知ってたからじゃだめかな」

「そんなの納得いかないわ」


 魔王城に引きこもりぎみの私が外に出るなんて数える程しかない。あと考えられるのは勇者一行の仲間だったから等だが、ラルフの顔に見覚えはなかった。でも時々起こるフラッシュバックの様ななにか。あれはなんなのだろう。ラルフと会話する時に起こる既視感。霞がかった思考。


 その時、手をぎゅっと握られて顔の前に持っていかれた。振り払おうと思ったが、真剣な目でこちらを見ていたからか、気圧されて振り払えなかった。


 いや、いくら気圧されていたとしても、普段はこうではない。不思議とラルフは敵にはならない存在だと心の奥底では思ってしまっていたからこそ手を振り払えなかったとわかってしまった。それが何かわからなくて歯がゆい。


 手から熱が伝わる。


「思い出して」

「え」


 懇願する様に吐き出された言葉。握られた手に当たっている金属の感触。ラルフが魔法の媒体に使っている指輪が目に入る。ペリドットの指輪だ。──お互いの瞳の色に近いね、とお揃いにした。貴方は指輪、私はピアス。それから──


「っ」


 激しい頭痛がして、思わずラルフの手を振り払い頭を抱える。


「「ルルカ!」」


 ノエルとラルフの声が聞こえたが私はそこで気を失った。



──────────




 目を覚ますとベッドの中だった。天井を見やったあと顔を少し横にずらすと、心配そうに見つめているラルフの顔があった。あの後からずっと看病してくれていたようだ。ノエルは頭の横で髪の毛を一本引っ張っては離し引っ張っては離しと遊んでいる。地味に痛いからやめてほしい。


「ごめん……倒れるだなんて。いきなり手を握ったのも……俺、最低だ」

「そうだそうだー」

「ノエルは黙ってなさい。今回の事は仕方が無かったと思うわ。何故か急に頭痛があったのだし。……とりあえず私と貴方は会った事がある。それは理解したわ」

「!本当!?」

「でも」


 期待しているような目で見られるが、思い出したことなど殆どなかった。正確には、頭痛に気を取られて記憶が飛んでいる。記憶の輪郭がぼんやりと存在している程度だった。


「何処で会ったとか、どんな会話をしたかとか全く覚えて無いの。ごめんなさい」

「いいんだ。……いいんだ。それで」


 それでも彼は明るい、しかし少し寂しそうな笑顔で、こう言った。


「また仲良くしてくれると嬉しい」


 私は曖昧に微笑むしかなかった。



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